快楽の持続性とは何か?現存する快楽の時間的な効力の範囲と周期性と永続性の概念への拡張、快楽計算とは何か?④

前回書いたように、

快楽計算を構成する基礎的な四要素の内でも、最も根本的な基礎値となる快楽の強度については、

物々交換の原理などに基づいて、それぞれの物品や行為がもたらす快楽の強さの比を求めることによって、客観的な数値化が可能となると考えられることになります。

そして、

快楽の性質を決定づける快楽の強度持続性確実性遠近性という基礎的な四要素の内、はじめの快楽の強度という要素は、個々の快楽そのものの具体的な内容に関わる性質であるのに対して、

残りの、持続性確実性遠近性という三つの要素は、そのすべてが時間関係の内に位置づけられる要素であると考えられることになります。

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現在存在する快楽の時間的な効力の範囲としての持続性の概念

まず、

時間関係の内で捉えられる快楽の三つの性質の内、そのはじめの要素である持続性の要素についてですが、

それは、以下のような性質を持った快楽の評価に関わる要素であると考えられることになります。

例えば、

通常、アメチョコレートでは、チョコレートの方が甘さや味の深みが大分強く、快楽の強さが大きいと考えられることになりますが、

それでも、時に、アメ玉の方がチョコレートよりも好まれることがあるのはなぜか?というと、それは、アメ玉の方が甘い味が長く口の中にとどまり続けるからだと考えられることになります。

つまり、

その物品や行為がもたらす快楽が強度としては弱いものであったとしても、その快楽を享受できる状態が長く続くものであるとするならば、それなりに価値の高い快楽であるとみなされるというように、

持続性とは、すなわち、現在存在する快楽がどの程度先まで効力を保ち続けるかを示す指標ということになるのです。

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快楽の持続性の概念の周期性と永続性への拡張

また、

こうした快楽の持続性の概念は、その快楽が繰り返し経験できる性質のものである場合、快楽の頻度や周期性、さらには永続性の概念へと拡張して捉えることもできると考えられることになります。

例えば、

さるかに合戦」の話ではありませんが、スーパーで柿の実を買ってきて、家に帰ってそれをパクリと食べてしまえば、その柿の実から得られる効用と快楽はその一回限りで終わりということになりますが、

畑に柿の種の植えて柿の木を育て上げることができたとするならば、その柿の木から毎年数多くの柿の実を収穫することによって、繰り返し周期的に同様の効用と快楽を享受し続けることができると考えられることになります。

さらに、

こうした快楽の持続性の概念を食べ物などからもたらされる身体的快楽だけではなく、書物や芸術作品などから得られる知識や教養といった知的快楽などの精神的快楽へも拡張していくことができるとするならば、

例えば、

良質な本を熟読した上で得られる知識は、事故や病気などで当人の思考能力が著しく損なわれてしまうことがない限り、その人の人生の中で折に触れて役立ち、その効力を一生にわたって保ち続けると考えられるように、

ある種の快楽は、その人の人生全体を通じて効力を及ぼし続ける永続的な性質を持つ快楽であると考えられることになるのです。

・・・

以上のように、

快楽計算を構成する第二の要素である持続性の概念とは、現存する快楽時間的な効力の範囲のことを示す概念であり、

それは、繰り返し享受することができる周期的な快楽や、知識や教養などから得られる精神的快楽に見られるような永続的な快楽へも結びついていく概念であると考えられることになります。

そして、詳しくは次回述べるように、

こうした永続性の概念へと拡張された快楽の持続性の概念に基づくことによって、

例えば、子供の「なぜ勉強する必要があるのか?」という問いについての一つの答え方が得られるとも考えられることになるのです。

・・・

次回記事なぜ勉強する必要があるのか?という問いへの知的快楽の永続性の観点からの答え、快楽計算とは何か?⑤

前回記事:快楽の強さを客観的に数値化する方法とは?その2、物々交換の原理に基づく快楽の強さの比、快楽計算とは何か?③

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