言葉の最小単位とは何か?文節と単語と形態素(モルフィム)の関係
前回書いたように、
現代の日本においても使われている漢字は、
広義における表意文字(ideogram)、
さらに、その中でも表語文字(logogram)に分類され、
特定の言語体系の内の一つの言葉と直接結びつく文字
ということになります。
そして、
表語文字は、狭義における表意文字のように
漠然としたイメージを表すのではなく、
特定の言語における単語や形態素といった
一つの言葉の単位に対応することになるのですが、
こうした言葉の最小単位というものは
言語学的にはどのような概念になるのでしょうか?
文節と単語の大きさ比べ
通常、言葉を構成する単位といういうと、
文節や単語といった概念が思い浮かべられることになりますが、
まず、文節とは、日本語の文法において、
言語として不自然ではない最小の意味上のまとまりのことを指す概念であり、
それは、厳密には、
1個の自立語(名詞や動詞、形容詞など)と0個以上の付属語(助詞や助動詞)
から構成されることになります。
例えば、
「神は不滅性を有する。」
という一つの文について考えるならば、
「神」は名詞なので自立語で、「は」は主題を提示する助詞なので付属語、
「不滅性」は名詞で自立語、「を」は対象を表す助詞で付属語、
そして、「有する」は動詞なので自立語となるので、
「神」(自立語)+「は」(付属語)で
1個の自立語と1個の付属語からなる一つの文節、
「不滅性」(自立語)+「を」(付属語)で
1個の自立語と1個の付属語からなる一つの文節、
「有する」で
1個の自立語と0個の付属語からなる一つの文節
がそれぞれ構成されることになります。
つまり、
この文は、「神は」、「不滅性を」、「有する」という
三つの文節から構成されているということです。
そして、これに対して、
単語とは、文を構成する言語の形式的な基本単位を指す概念であり、
日本語では、自立語と付属語に大別されます。
上記の文で言うならば、
「神」、「は」、「不滅性」、「を」、「有する」という
五つの自立語と付属語の一つ一つが単語に該当することになり、
先の文は、単語としては、
五つの単語から構成されることになります。
以上のように、
先の「神は不滅性を有する。」という一つの文は、
文節としては三つに分けられますが、
単語としては五つに分けられるので、
文節よりも単語の方が
より小さな言葉の単位を表す概念ということになるのです。
単語の形態素(モルフィム)への分解
しかし、
言語学的には、一定の意味を持つ存在としての言葉の最小単位は、
単語よりもさらに細分化していくことが可能と考えられ、
そこで、形態素(モルフィム)
という概念が登場することになります。
形態素(morpheme、モルフィム)とは、
概念と意味の観点から見た言語の最小の単位のことを指す概念であり、
単語としては一つに数えられる言葉も、
それが合成語などのように、
より基礎的な単純語から構成されていると捉えることがが可能な場合には、
さらに小さな意味上の単位へと分解されていくことになります。
形態素においては、言葉は、
接頭語や接尾語といった単語内の構成要素も含め、
とにかく意味を成す最小単位のまとまりにまで分解されることになるのです。
例えば、日本語で、
「不滅性」という言葉は一つの名詞であり、
一つの単語にあたることになりますが、
この言葉は、さらに、
否定を意味する接頭辞の「不」と、
消滅を意味する単純語の名詞である「滅」、
そして、名詞の下に付いて物事の性質や傾向を示す接尾辞の「性」
という三つの形態素に分解することができます。
これは、英語においても同様で、
“immortality“という英単語は、
否定を意味する接頭辞の”in-“の異形態である”im-“と、
「死を免れない」「死すべき」という意味の形容詞である”mortal“、
そして、形容詞の下に付いて状態や性質を表す抽象名詞を作る接尾辞の”-ity”
という三つの形態素から構成されていて、
全体としてimmortality(不滅性)という意味を表すことになるのです。
・・・
以上のように、
意味と概念の観点から見た言葉の最小単位は、
文節から単語、そして、最終的には、
形態素(モルフィム)という概念へと行き着くことになるのですが、
こうした言語学における
文節と単語と形態素の関係は、
ちょうど、
物理学における
分子と原子と素粒子の関係のようなイメージで
捉えればよいと考えられます。
つまり、
物理学において、
素粒子の集まりが一つの原子を構成し、
原子が集まって一つの分子を構成し、
多くの分子の集合が、物質や人体、そして世界全体を構成しているように、
言語においては、
形態素の集まりが一つの単語を構成し、
単語が集まって一つの文節を構成し、さらに、
文節が集まることによって一つの文が構成されている
ということになるのです。
・・・
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