戦車と自走砲の違いとは?攻撃能力と防護性能と機動力という三つの要素のバランスの違いと砲塔の回転における方向射角の差
前回の記事で書いたように、火砲や装甲などを備えた戦闘車両のことを意味する言葉としては戦車や装甲車といった言葉が広く用いられることになりますが、
現代の戦争において用いられている威力の大きい火砲を搭載した高い移動力を持つ兵器のことを意味する言葉としては、戦車のほかにも自走砲といった言葉が用いられることもあります。
それでは、こうした戦車と自走砲と呼ばれる二つの兵器の種類の間には、具体的にどのような点において特徴や性質の違いを見いだしていくことができると考えられることになるのでしょうか?
自走砲における火砲の形態の特徴と戦車の砲塔との回転射角の差
そうすると、まず、詳しくは前回の記事で書いたように、
戦車とは、強力な火砲と装甲板に覆われた車体を持ち、キャタピラによって複雑な地形を自由に走行できる戦闘車両のことを意味することになるのに対して、
自走砲とは、車両に搭載されることによって自力で走行できるようになった比較的大型の火砲のことを意味することになります。
そして、そういった意味で言うと、
広い意味では、軍用トラックの荷台部分に搭載された榴弾砲や迫撃砲などのことも指してこうした自走砲という言葉が用いられることもあると考えられることになるのですが、
一般的には、そうした様々な形態の自走式の火砲のなかでも、
特に、不整地での車両の自由な移動を可能とするキャタピラという呼び名で知られている無限軌道の機構を備えた車両のことを意味する装軌車に搭載されることによって自力で走行できるようになった155mm以上の大口径の火砲のことを指して、
こうした自走砲と呼ばれる現代の戦争における兵器の名称が用いられることが多いと考えられることになります。
また、
前者の戦車の場合には、移動する目標への砲撃や、自分自身が移動しながら砲撃を行うといった戦闘時におけるより機動力の高い攻撃能力が求められることになるため、戦車の砲塔は360度回転させることが可能であることが多いのに対して、
後者の自走砲の場合には、移動後の短時間での多数の砲弾の投射能力や砲撃の射程の長さなどの直接的な攻撃能力の方がより重視されることになるため、自走砲の砲塔はそもそもまったく回転しないか、回転してもその方向射角が小さいといった場合が多いといった点にも、
こうした戦車と自走砲と呼ばれる二つの兵器における主要な特徴の違いを見いだしていくことができると考えられることになるのです。
戦車と自走砲における攻撃能力と防護性能と機動力という三つの要素のバランスの違い
そして、以上のように、
こうした戦車と自走砲と呼ばれる強力な火砲と自力での走行能力とを兼ね備えた二つの兵器の種類における具体的な特徴の違いについて、
一言でまとめると、
戦車の場合は、強力な火砲と装甲板に覆われた車体を持つと同時に、キャタピラによって複雑な地形を自由に走行することができ、攻撃の際には砲塔も360度回転させることができるというように、
砲撃による直接的な攻撃能力と、車体自体の防護性能、そして戦闘時における機動力の高さという三つの要素がバランスよく重視された兵器となっていると考えられるのに対して、
自走砲の場合は、大型の火砲が車両に搭載されることによって自力で走行できるようになってはいるものの砲塔の方向射角自体は小さいというように、
戦車の場合と比べて、車体自体の防護性能や戦闘時における機動力の高い運用はそこまでは重視されておらず、むしろ、砲弾の射程や連射速度などといったより直接的な攻撃能力に特化した兵器であるといった点に、
こうした二つの種類の兵器における主要な特徴の違いを見いだしていくことができると考えられることになるのです。
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