ペロポネソス半島の名前の由来とは?ギリシア神話の英雄ペロプスの死からの復活とエリスの地から半島全土への支配の拡大
古代ギリシアの世界は、以下の図において示したように、
地理的な面においては、マケドニアやトラキアといった北方地域とテッサリア、そして、現在のギリシャの首都にあたるアテネが位置するアッティカなどを含むギリシア本土と、
そうしたギリシア本土とコリントス地峡と呼ばれる狭い地形によって結ばれているペロポネソス半島、そして、そこから東南の方角に位置するクレタ島を中心とするエーゲ海の島々によって構成されていたと考えられることになるのですが、
このうち、ペロポネソス半島と呼ばれるギリシア南部に広がる大きな半島の名前の由来は、ギリシア神話に登場するエリスの英雄であったペロプスの復活と王女ヒッポダメイアへの求婚の物語のうちに求められることになると考えられることになります。
シピュロスの王タンタロスと息子ペロプスの死からの復活
そうすると、まず、
こうした古代ギリシア神話に登場する英雄の一人であるペロプスは、
もともとは、現在のトルコの内に位置するリュディア地方の古代都市にあたるシピュロスの王であったタンタロスの息子として生まれることになるのですが、
人間の身でありながら、ギリシア神話の主神にあたるゼウスの親しい友として神々との交流を深めていたタンタロスは、
ある時、神々の宴のために最高の貢ぎ物を捧げようとして、自らの息子であったペロプスを殺したのち、その身体を切り刻んで饗宴の糧として捧げるというおぞましい行為へと手を染めてしまうことになります。
そして、
こうしたタンタロスの残酷な所業に激怒したゼウスは、彼のことを地獄の奈落の底にあたるタルタロスへと落としてしまうことになり、
その後、そうした父親の残酷な所業によって命を落とすことになってしまったペロプスは、彼のことを不憫に思った神々の手によって再び命を引き込まれ、完璧な美を備えた輝くばかりの美少年としてこの世に復活することになるのです。
英雄ペロプスのヒッポダメイアへの求婚とエリスの地から半島全土への支配の拡大
そして、その後、
海の神ポセイドンから授けられた翼の生えた不死の馬が引く黄金の戦車に乗って、のちにペロポネソス半島と呼ばれることになるギリシア南部へと赴いていくことになったペロプスは、
この半島に位置する中心地の一つであったエリスの地を支配するピーサの王であったオイノマオス王の娘である王女ヒッポダメイアに恋をして彼女に結婚を申し込むことになります。
そして、
ヒッポダメイアとの結婚が認められるための条件として、オイノマオス王との戦車競走へと挑んでいくことになったペロプスは、
見事この勝負に勝利をおさめたのちに、王女ヒッポダメイアと結婚してエリスの地を治める王の座を継ぐことになり、
その後、彼は、エリスの地だけではなく、この都市が位置する半島全土を支配する王として君臨していくことになったため、
こうしてエリスの地において偉大な業績を残していくことになったと語り伝えられているギリシア神話における英雄ペロプスの名をとって、
こうしたギリシアの南部に位置する大きな島のような形をした半島の名前が、「ペロプスの島」という意味で、ペロポネソスと呼ばれていくことになっていったと考えられることになるのです。
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