ヘラクレスの三人の妻とは?メガラとデイアネイラとヘーベーという王女と女神たちとの結婚生活とその後の壮絶な人生
ネメアの獅子やクレタの牡牛、アマゾンの女王や地獄の番犬ケルベロスとの戦いなどとして知られている十二の功業などで有名なギリシア神話の英雄ヘラクレスは、
テーバイの隣国であったテスピアイを支配する王であったテスピオスの五十人の娘たちや、リュディアの女王であったオムパレー、アテナを祀る神殿の女神官であったアウゲーといった様々な女性たちとの間に数多くの子供を残した恋多き英雄としても有名ですが、
こうした恋多き英雄であったヘラクレスの正式な妻となった人物としては、ギリシア神話の物語のなかでは、メガラとデイアネイラとヘーベーという三人の女性の名前が挙げられることになります。
ヘラクレスの最初の妻となったテーバイの王女メガラと三人の息子たちの死
まず、こうした三人の人物のうち、
ヘラクレスの最初の妻となった女性としては、テーバイの王女であったメガラの名が挙げられることになります。
現在のギリシアの首都にあたるアテネの北西に位置するテーバイの町に住む人々は、長い間、隣国のオルコメノスとの争いに巻き込まれて苦しんでいたのですが、
この戦いに一軍の将として参戦した若き日のヘラクレスが、オルコメノス軍の本陣を突破して敵軍の将の首を取ることによって、この戦争を勝利へと導いていくことになったため、
このことに深く感謝したテーバイの王であったクレオンは、戦争への勝利に大きく貢献したヘラクレスのことを讃えて、彼を自分の娘であったメガラと結婚させることになります。
そして、その後、
ヘラクレスとテーバイの王女メガラとの間には三人の息子たちが生まれていくことになるのですが、
その後、女神ヘラに狂気を吹き込まれることによって錯乱状態へと陥ってしまったヘラクレスは、自分でもわけも分からぬまま、
王女メガラとの間に生まれた三人の息子たちを自らの手で次々に火の中へと投げ込んでしまうことによって、子供たちのことを炎で焼き殺してしまうことになるのです。
ヘラクレスの二番目の妻となったカリュドンの王女デイアネイラと夫婦の壮絶な死
そして、その後、
失意のうちにテーバイの都を追放され、放浪の旅へと赴いていくことになったヘラクレスは、
ミケーネの王であったエウリュステウスのもとに仕えて、のちにヘラクレスの十二の功業と呼ばれることになる難行を成し遂げたのち、ギリシア各地をめぐる進軍の旅へと赴いていくことになるのですが、
そうした進軍の旅の途上でヘラクレスの一行は、ギリシア西部に位置するアイトリア地方にあった古代都市であったカリュドンを訪れることになります。
そして、
ヘラクレスは、この地を治めるオイネウス王の娘であった王女デイアネイラに恋をして、彼女に求婚することになり、
もう一人の求婚者であったアケロース川を司る河の神であったアケローオスを格闘の末に退けることによって、カリュドンの王女であったデイアネイラと結婚することになります。
そして、その後、
ヘラクレスとカリュドンの王女デイアネイラとの間には、長男ヒュロスを筆頭とする四人の息子と一人の娘が生まれていくことになり、
のちにヘラクレスの後裔という意味でヘラクレイダイと呼ばれることになる彼らの子孫たちからは、ペロポネソス半島の有力な都市国家の源流となるアルゴス王家とスパルタ王家とメッセニア王家という三つの王家が分かれ出でていくことになります。
そして、その一方で、
ヘラクレス自身は、彼の二番目の妻となったデイアネイラとの間でも平穏な結婚生活を全うすることはできず、
彼が戦場において、かつて自分の許嫁とされたこともあったオイカリアの王女であったイオレーのことを見つけて、彼女のことを捕虜として引き連れていった時に、
このことを知って夫であるヘラクレスの心が自分のもとから離れて行ってしまうことを恐れたデイアネイラは、
誤って彼の服にヒュドラの猛毒が含まれていた偽りの媚薬を塗り込んでしまうことになり、ヒュドラの毒に冒されて地獄の苦しみを味わい続けることになります。
そして、
このことを伝え聞いて自分が取り返しのつかないことをしでかしてしまったことを知ったデイアネイラは、深く心を痛めて自分のことを強く責めると、そのまま首をくくって死んでしまうことになり、
彼女の夫であったヘラクレスもまた、自らの死の苦しみを終わらせるために、炎が燃え盛る祭壇の前へと進み出て、火炎の中でその身を焼き尽くすことによって壮絶な死を遂げることになるのです。
ヘラクレスの三番目の妻となった女神ヘーベーと二人の間に生まれた二柱の神々
そして、
こうした地上の世界における壮絶な死ののちに、彼の父であったゼウスの計らいによって、雷鳴と共に天空へと運び上げていくことになったヘラクレスは、
天上の世界においてゼウスから神々が持つ不死の力を与えられることによって、神の座へと昇っていくことになります。
そして、この時、
それまで彼の人生に長くつきまとって彼のことを苦しめ続けてきた女神ヘラもついに彼のことを許すことになり、両者の和解の証として、
彼女の娘であった女神ヘーベーが神となったヘラクレスのもとへと遣わされることになったとも語られていくことになります。
そして、
こうしてヘラクレスと彼の三番目の妻となった女神ヘーベーとの間には、それぞれに「戦いを退ける者」と「征服されざる者」という意味を表す名前を持つ、
アレクシアレスとアニケトスという名の二柱の神々が生まれていくことになるのです。
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