二匹の蛇を殺した赤子のヘラクレスとアムピトリュオンの心に芽生えた恐怖の念、古代ギリシア神話の英雄ヘラクレスの物語③

英雄ペルセウスゼウスの血をひく神の子として、アルゴスの全土を支配するミケーネの王となることを予言されていたヘラクレスは、

その出生の時に際して、ゼウスの妻であった女神ヘラの策略によって、もう一人のペルセウスの後裔となる赤子であったエウリュステウスの方が先に生まれてしまったことにより、

生まれながらにして、本来は自分がつくべきミケーネの王位の座エウリュステウスに奪われてしまうことになるのですが、

その後も、

自分の夫であるゼウスの浮気のことを深く根に持ち続けていた嫉妬深い女神であるヘラは、彼女にとって夫の浮気相手の女の息子にあたるヘラクレスの人生につきまとい、彼に対する理不尽な復讐を企て続けていくことになります。

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ヘラクレスとイピクレスの双子の赤子の成長と女神ヘラによる第二の復讐

そして、

こうした女神ヘラによる妨害を受けながらも、ヘラクレスの母であったアルクメネは、ゼウスとの間の子であるヘラクレスと、自分の本当の夫であるアムピトリュオンとの間の子であるイピクレス双子の兄弟をなんとか無事に出産することになり、

まだ、彼女にとっても、夫であったアムピトリュオンにとっても、どちらの子供がゼウスとの間に生まれた神の子であるのかは分からなかったものの、二人の赤子は、両親の深い愛情を受けながら、そのまますくすくと元気に育っていくことになります。

しかし、

ヘラクレスイピクレス双子の兄弟が生まれてから、ちょうど八か月ほどの時が経ったとき、

そうした二人の赤子の成長をまざまざと見せつけられていた女神ヘラの心の中で、再び復讐の炎が燃え上がることになり、

女神ヘラは、自分の心を苛立たせる元凶となっているこの忌々しい赤子をいっそのこと一思いに殺してしまおうと考えて、赤子たちが寝ているゆりかごの中に、二匹の蛇を投げ込んでしまうことになるのです。

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二匹の蛇を絞め殺す赤子のヘラクレスとアムピトリュオンの心の内に芽生えた恐怖の念

そして、

自分の大切な子供たちが眠っているゆりかごの中に、突如として現れた恐ろしい蛇の姿を目にした母アルクメネは、すぐに大声を上げて、夫であるアムピトリュオンに向かって必死に助けを求めることになるのですが、

蛇たちが牙を向いて赤子たちへと襲いかかろうとするなか、そうした蛇の恐ろしい姿を目にしたイピクレスは、すぐに泣き出して籠の中から逃げ出そうとしたのに対して、

まだ赤子であったヘラクレスは、平然とその場で両足で立ち上がり、左手と右手で一匹ずつ蛇の胴体を力強く握りしめると、そのまま両手で二匹の蛇を絞め殺してしまうことになります。

そして、この時、

こうしたヘラクレスイピクレス双子の兄弟が突然現れた蛇に対応する際の対照的な姿を目の当たりにしたアムピトリュオンは、

蛇から逃げようとして泣き出してしまったイピクレス自分の息子であり、蛇に対して悠然と立ち向かったヘラクレスの方がゼウスから生まれた神の子であるということを確信するに至ることになるのですが、

この時、

ヘラクレスの育ての父にあたるアムピトリュオンの心の内には、赤子の身でありながら平然とした顔蛇に立ち向かい絞め殺してしまった神の子ヘラクレスに対する驚きと畏敬の念と共に、

こうした怪物のような力を持った子供に対する恐れの心も芽生えていくことになったと考えられることになるのです。

・・・

次回記事:テーバイの法廷でのヘラクレスの弁明とアムピトリュオンによる牛飼場への追放、古代ギリシア神話の英雄ヘラクレスの物語④

前回記事:女神ヘラによるヘラクレスの出生の妨害と奪われたミケーネの王位の座、古代ギリシア神話の英雄ヘラクレスの物語②

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