オリンピック憲章における平和へと貢献するスポーツの祭典としてのオリンピックの位置づけと五輪のマークの意味
オリンピックのことを説明する言葉としては、平和の祭典といった言葉が一般的に広く用いられていると考えられることになりますが、
このように、現在の時代における世界最大のスポーツの祭典にあたるオリンピックが平和の祭典としても位置づけられていくことになっていった具体的な理由としては、
まずは、オリンピック憲章などにおいて示されている近代オリンピックにおけるオリンピック精神を中心とする基本理念の存在が挙げられることになると考えられることになります。
オリンピック憲章における平和へと貢献するスポーツの祭典としてのオリンピックの位置づけ
そうすると、まず、
フランスのクーベルタン男爵の提唱によって創始され、1896年のアテネオリンピックからはじまった現在の時代にまで続く近代オリンピックにおけるオリンピック精神の基本となる理念や原則を定めているオリンピック憲章においては、
その冒頭部分にあたる前文に続く「オリンピズムの根本原則」と題される箇所の第二項において、具体的には以下のような形でオリンピックの精神と平和な社会との関係のあり方が語られていくことになります。
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オリンピズムの目的は、人間の尊厳の保持に重きを置く平和な社会の推進を目指すために、人類の調和のとれた発展にスポーツを役立てることである。
(『2019年度版オリンピック憲章』「オリンピズムの根本原則」第二項)
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そしてさらに、そのすぐ後に続くオリンピック憲章の本文のはじめの箇所にあたる第一章の第一項は、以下のような文言からはじまっていくことになります。
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オリンピック・ムーブメントは、国際オリンピック委員会の最高権限と指導のもと、オリンピック憲章に導かれることに同意する組織、選手、その他の個人を包含する。
オリンピック・ムーブメントの目的は、オリンピズムとオリンピズムの価値に則って実践されるスポーツを通じ、若者を教育することにより、平和でより良い世界の構築に貢献することである。
(『2019年度版オリンピック憲章』第一章 第一項)
つまり、
こうしたオリンピック憲章の記述においては、スポーツを通じて心身の健全さと人間としての成長と豊かさを追求していく善き若者たちを育んでいき、
そうしたオリンピック運動を中心とするスポーツ活動を通じて平和の社会の構築へと大きく貢献していくという意味での平和へと貢献するスポーツの祭典としてのオリンピックの位置づけのあり方が明確な形で示されていると考えられることになるのです。
すべての国々の普遍的な連帯と調和を示す五輪のマークと平和の祭典としてのオリンピックとの関係
また、
こうした平和へと貢献するスポーツの祭典としての近代オリンピックの理念は、近代オリンピックの創立者にあたるフランスのクーベルタン男爵によって発案されたオリンピックのシンボルにあたる五輪のデザインのうちにも示されていると考えられ、
クーベルタン自身の言葉によれは、
こうしたオリンピックのシンボルとして描かれている青・黄・黒・緑・赤の互いに連結された五つの輪は、オリンピック精神によって統一された世界の五つの大陸を象徴するデザインとして位置づけられることになります。
そして、以上のように、
こうしたオリンピック憲章やオリンピックのシンボルとなる五輪のマークのデザインにおいては、
オリンピック運動を中心とする国際的なスポーツ活動を通じて、世界中のすべての国々の普遍的な連帯と調和を図っていくことによって平和な世界を実現していくという近代オリンピックにおけるオリンピック精神の基本となる理念が示されていると考えられることになるのです。
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