ニュージーランドの国旗の南十字星が赤い理由とは?マオリ族やイギリス商船旗との関係と十字架の北の部分に位置する赤い星
オーストラリアとニュージーランドの国旗を区別する際の最も大きな特徴の違いとしては、
オーストラリアの国旗においては南十字星が白い星として描かれているのに対して、ニュージーランドの国旗においては南十字星が赤い星として描かれているという点が挙げられることになりますが、
例えば、
アメリカの国旗にあたる星条旗や、ヨーロッパ連合のシンボルにあたる欧州旗などに見られるように、通常の場合、国旗などに描かれていくことになる星のデザインにおいては、白や黄色といった色が用いられるのが一般的であると考えられることになります。
それでは、このように、
ニュージーランドの国旗において南十字星を表す星のデザインが白や黄色ではなく赤で描かれている理由としては、具体的にどのような点が挙げられることになると考えられることになるのでしょうか?
南十字星の十字架の北の部分に位置する赤い星
そうすると、まず、
そもそも、南十字星あるいは南十字座と呼ばれる星座は、天の南極の近くの天の川沿いの南天において夜空に十字架の形を描いていくことになる四つの星を中心とする星座にあたり、
こうした南十字星と呼ばれる星々は、北極星が見えなくなる南半球においては、航海の際の方位を知る目印としても位置づけられることになります。
そして、そうした南十字星のなかでも、
十字架の南の部分に位置する青白い星であるアクルックスと共に、南天の指極星にあたる星として位置づけられることになる十字架の北の部分に位置する星であるガクルックスは、二等星の明るさもつ赤い光を放つ星として位置づけられることになります。
つまり、そういった意味では、
こうした南十字星のなかでもひときわ目を引く星の一つにあたる十字架の北の部分に位置するガクルックスと呼ばれる星の赤い光に着目して、
そうした南十字星と呼ばれる星々全体を赤い色で描いていくことも、そこまで不自然な描き方であるとは言えないとも考えられることになるのです。
イギリスの商船旗とマオリ族を象徴する色として赤
また、その一方で、
こうしたニュージーランドの国旗において赤という色が特に好まれる色として用いられていくことになっていった理由については、この国が成立していった歴史的な背景のうちにもその具体的な理由を求めていくことができると考えられることになります。
ヨーロッパにおける大航海時代のまっただなかの時代にあたる1642年、オランダの探検家であったアベル・タスマンがヨーロッパ人としてはじめて、のちにニュージーランドと呼ばれることになる二つの島へと到達することになったのち、
この地域は、当初は主に、この地の先住民にあたるマオリ族と、イギリス商船を中心とするヨーロッパ人の渡航者や入植者たちとの間の貿易活動によって発展していくことになるのですが、
そうしたニュージーランドにおける貿易活動の主な担い手となったイギリス商船を象徴する旗、すなわち、イギリス商船旗には、
レッド・エンサイン(Red Ensign)と呼ばれる赤を基調とする旗が広く用いられていたと考えられることになります。
また、もともとこの地に住んでいた先住民にあたるマオリ族においても、赤という色は黒や白といった色と共に、マオリ族自身を象徴する色としても位置づけられていたと考えられていて、
1834年に、イギリス人とマオリ族の首長との合意によって制定されたニュージーランド連合部族の旗においても、旗全体に描かれた赤い聖十字を基調とするデザインが用いられていたと考えられることになるのです。
・・・
以上のように、
ニュージーランドの国旗において南十字星を表す星のデザインが白や黄色ではなく赤で描かれている具体的な理由としては、
①南十字星を構成する四つの星のなかでも十字架の北の部分に位置するガクルックスと呼ばれる星は実際に赤い光を放っているという点、
②初期のニュージーランドの発展の中心となった貿易活動の主な担い手となったイギリスの商船旗がレッド・エンサインと呼ばれる赤を基調とするデザインとなっているという点、
③ニュージーランドの先住民にあたるマオリ族においても赤はマオリ族自身を象徴する色の一つとして位置づけられていたという点、
といった全部で三つの理由を挙げていくことができると考えられることになるのです。
・・・
次回記事:ニュージーランドの国旗の由来とは?四つの赤い星と青い背景の由来と現在の国旗のデザインが定着した歴史的な経緯
前回記事:南十字星および南十字座の星の名前と由来とは?南天の指極星としてのアクルックスとガクルックスという青と赤の二つの星
「世界の国々」のカテゴリーへ
「天文学」のカテゴリーへ