お盆の語源と由来は?お盆の時期は地域によってなぜ違うの?
7月15日を中心にしておこなわれる祖先の霊を供養する行事をお盆といいますが、
現在では、7月におこなう地域と8月におこなう地域とがあります。
そもそもお盆の行事は、どのようにしておこなわれるようになったのでしょうか?
また、お盆は、いつ始まっていつ終わるのでしょうか?
お盆の語源は?
「お盆」の語源は、サンスクリット語(古代インドの言語で、梵語(ぼんご)ともいいます)の「avalambana(アヴァラムバナ)」がなまって変化した「ullambana(ウラムバナ)」です。
これを中国で「盂蘭盆(うらぼん)」と漢字に訳し、その省略形が「盆」となり、
一般には、これに丁寧表現の接頭辞「お」をつけて「お盆」と言うようになったといわれています。
※ サンスクリット語の「avalambana」は、「頭を下にしてつりさげる」という意味で、飢えと乾きに苦しみ続ける非常に苦痛な状態を表すそうです。
これに対して、「盂蘭盆」の語源は、イラン語系の「死者の霊魂」を意味する「urvan(ウルヴァン)」であり、
霊魂を祀り同時に収穫を祝うウルヴァンという行事が中国に伝わって、
今日の「盂蘭盆」の原型が成立したとする説もあります。
さらに、「盆」とは文字どおり、物をのせて運ぶときに用いる縁の浅い平たい形状の容器のことで、
祖先の霊を供養するための供物を置くのに使用したことから、
祖先の霊をもてなすことをも「盆」と呼ぶようになった、という説もあります。
お盆の行事の由来は?
日本ならではの「お盆」の習慣は、中国から伝わってきた「盂蘭盆会(うらぼんえ)」という行事と、日本古来の祖先信仰とが融合してつくられてきたといわれています。
中国の『盂蘭盆経』(中国でつくられた偽経といわれています)という経本によると、
釈迦の十大弟子の1人であった目連(もくれん、正しくは目犍連(もくけんれん)といい、神通第一といわれました)が、死んだ自分の母親が餓鬼道(飢えと喉の乾きに苦しみ続ける世界)で苦しんでいるのを知り、
「どうしたら救うことができるでしょうか」と釈迦に教えを請うたところ、
釈迦が、「すべての比丘(びく、正式な男性出家修行者)に食べ物を施せば、母親の口にも入るだろう」と答えたので、その通りに実行すると、
母親は救われて極楽浄土に行くことができた、というお話があります。
さらに、目連は、釈迦に「自分の母親だけでなく、すべての人々が救われるようにするにはどうしたら良いでしょうか」とたずねると、
釈迦は、「毎年、自恣日(じしにち、僧たちの夏の修行期間の最後の日で修業期間中の反省をしあう日)に、人々が比丘たちに供養するようにするようにしなさい」と言いました。
これが「盂蘭盆会」の始まりと言われています。
お盆をおこなう時期は地域によってなぜ違うの?
日本には、古来、1年を前半と後半の2つに分け、
前半の初春の満月の日と、後半の初秋の満月の日の、年に2度、
祖先の霊が子孫のもとに訪れて交流する、という行事がありました。
初春の方は、祖先の霊の「年神様」として神格が強調され、神社にお参りするなどの「お正月」の行事となり、
初秋の方は、「盂蘭盆会」として祖先をお寺で供養するという、仏教の行事としておこなわれるようになったといわれています。
ところで、お盆の行事は、地域によっておこなわれる時期が違いますが、なぜそうなったのでしょうか?
本来は、釈迦が比丘たちに供養をするようにと言った日、すなわち、「自恣日」が「盂蘭盆会」の日となります。それは、旧暦の7月15日です。
したがって、日本でも、お盆の行事は旧暦の7月15日におこなっていたのですが、
1873年(明治6年)1月1日から新暦(太陽暦)が採用されると、
地域によって、お盆の行事をおこなう時期が違ってきてしまいました。
新暦の7月15日を中心にしてお盆の行事をおこなうと、農作業の繁忙期と重なってしまうため、
8月の中旬(新暦の8月15日)に、もしくは8月の下旬(旧暦の7月15日)に、ずらしてお盆の行事をおこなう地域がでてきたのです。
8月1日や8月20日という地域もあるようですが、たいていは、次の3つのうちのいずれかにお盆の行事をおこなっています。
① 新暦の7月15日 ・・・ 東京、横浜、東北地方の一部
② 新暦の8月15日 ・・・ ほぼ全国
③ 旧暦の7月15日 ・・・ 中国、四国、九州、沖縄など南西諸島
お盆はいつ始まっていつ終わるの?
7月15日または8月15日におこなわれるお盆の行事は、実際は13日に始まり、16日に終わるのが一般的です。
13日の夕方になると、「精霊迎え(しょうりょうむかえ)」といって、祖先の霊が迷わずに戻ってこられるように、家や寺の門前で「迎え火(むかえび)」を燃やします。
そして、仏壇の前に精霊棚(しょうりょうだな、盆棚(ぼんだな)ともいいます)と呼ばれる臨時の棚を設けます。
精霊棚には、仏壇から位牌を取りだして置き、故人へいろいろなお供え物をします。
16日の夕方には、家や寺の門前で「送り火(おくりび)」を燃やして、祖先の霊が帰る道を明るく照らして送りだします。
大々的な送り火で有名なのは、京都の五山送り火で、東山如意ヶ嶽(浄土寺・大文字山)の大文字(だいもんじ)がもっともよく知られていますね。
最後に
「盆と正月が一緒に来たよう」という言葉があります。うれしいことが重なること、または、非常に忙しいことのたとえとして使われますが、
本来の「盆」と「正月」は、どちらも祖先の霊を迎える期間です。
年に2度、「盆」と「正月」には、
心を落ち着かせて、自分のこれまでの生き方を振り返り、
自分につながる多くの祖先たちに思いをはせ、
静かにこれからの人生を考えてみる、
という時間を持ちたいものです。