新月の時に月の姿を地球から見ることができない二重の理由とは?
前回の記事で書いたように、満月の時における月の姿は、日没後から日の出までの長期間にわたって一晩中見ることができるのに対して、
それとは反対に、新月の時における月の姿は、地球上からの観測においては、ほとんどまったくと言っていいほど見ることができないと考えられることになるのですが、
こうした新月の日に月の姿が一日中見えなくなってしまう理由については、天文学的な観点に基づく厳密な意味においては、以下で述べるような二つの理由から説明していくことができると考えられることになります。
新月の時期における天球上の月と太陽の位置関係
そうすると、まず、
地球からの観測において、月の姿がまったく見えない状態になる新月の瞬間においては、
上記の図において示したように、
太陽と月が地球から見て同じ方向に位置づけられることになるため、月の表面に当たって反射した太陽の光が月自身の存在によって遮られてしまうことによって、月の姿が地球上からの観測することができない状態になってしまうと考えられることになります。
しかし、その一方で、
こうした新月が訪れることになる日においても、その一日のなかでも、少しずつ太陽と月の位置関係がずれていくことによって、
そうした新月の瞬間の前後には、ほんのわずかな分だけずれた極めて細い三日月のような姿をした月が理論上は観測することができるとも考えられることになるのですが、
実際には、以下で述べるような理由から、新月の日においては、そのような極めて細い三日月のような姿をした月の姿を観測することすらも極めて困難であると考えられることになるのです。
新月の日に月の姿が一日中見えなくなってしまう理由
そして、
こうした太陽と新月の一日の動きのあり方についてより詳しく考えていくと、
上記の図において示したように、
まず、①の日の出の時点での太陽と新月の位置関係においては、
東の空が徐々に白んできて太陽が顔を出しはじめていくのとほぼ同じ時に、そのちょうどそれと同じ側にあたる東の空から新月の状態にある月も昇っていく月の出の時を迎えていくことになり、
その次に、②の月が南中した時点における太陽と新月の位置関係においては、
満月が夜空の最も高い位置に来ることになる瞬間に、それとほぼ同じ天球上の位置にある太陽も最も高い高度へと南中する真っ昼間の時間を迎えていくことになります。
そして、その後、③の日没の時点での太陽と新月の位置関係においては、
太陽が西の地平線へと沈んでいくと同時に、そのちょうど同じ側にあたる西の空において新月の状態にある月も沈んでいく月の入りの時を迎えていくことになると考えられることになります。
そして、以上のように、
こうした太陽と新月の一日の動きのあり方においても新月の状態にある月と太陽は、地球から見て常に、日の出の時刻から日の入りの時刻に至るまで一日中にわたって互いに寄り添いながら天球上を移動していくことになるため、
新月の日には、たとえその日の期間のなかで太陽と月の位置関係がわずかにずれていくことによって極めて細い三日月のような姿をした月の姿が理論上は見えていくはずの時間帯が訪れていたとしても、
そうした極めて弱い月の光は、日中における極めて強い太陽の光によってかき消されてしまうことによって、地球からの実際の観測においてはほとんど見ることができないと考えられることになるのです。
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つまり、そういった意味では、
新月の日に月の姿が一日中見えなくなってしまう理由については、
①太陽と月が地球から見て同じ方向に位置することによって、月の表面に当たって反射した太陽の光が月自身の存在によって遮られてしまい地球上にはほとんど届かなくなってしまう。
②太陽と新月は一日の動きにおいても日の出から日没まで一日中にわたって互いに寄り添いながら天球上を移動していくことになるため、地球上に届くわずかな月の光も日中における極めて強い太陽の光によってかき消されてしまう。
という二重の意味においてそうした新月の日における月の姿は地球からは見ることができなくなってしまうと考えられることになるのです。
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次回記事:上弦の月の一日の動きのあり方の解説と上弦の月が夕暮れ時から真夜中にかけて観測されることが多い理由
前回記事:満月の時に月の姿を日没から日の出頃まで一晩中見ることができる理由とは?
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