相利共生の具体的な仕組みとは?アリとアブラムシやヤドカリとイソギンチャクそして人間と腸内細菌における相利共生の具体例
相利共生(そうりきょうせい)とは、一言でいうと、
共生関係にある二つの種類の生物同士が相互に何らかの利益を得ていて、互いに有益な関係を結んでいる状態のことを意味する言葉として定義することができると考えられることになります。
そして、
こうした相利共生と呼ばれる共生関係のうちに位置づけられる生態系における生物同士の具体的な共生関係の例としては、
アリとアブラムシ、ヤドカリとイソギンチャクといった生物同士の関係性や、虫媒花と昆虫、さらには、人間と腸内細菌といった関係性の例などが挙げられることになると考えられることになります。
アリとアブラムシにおける相利共生の具体的な仕組み
まず、はじめに挙げた
アリとアブラムシとの関係においては、
アブラムシと呼ばれる外殻が非常に柔らかい構造をした小型の虫は、果樹や草木の汁を吸って消化していく際に、尾部からアリの好物となる糖分を多く含む甘い分泌液を分泌していくことになるのですが、
アリは、そうした自分にとっての好物を供給してくれる相手であるアブラムシを保護するために、アブラムシの天敵であるテントウムシなどの外敵を追い払うといった行動をとっていくことになります。
このように、アリとアブラムシは、
アリの側がアブラムシの天敵となるテントウムシを追い払ってあげるのに対して、その代わりに、アブラムシの側もそうした自らの用心棒であるアリのために甘い分泌物を供給するという相利共生の関係のうちにある生物同士の組み合わせとして位置づけられることになると考えられることになるのです。
ヤドカリとイソギンチャクにおける相利共生の具体的な仕組み
そして、その次に挙げた
ヤドカリとイソギンチャクとの関係においては、
空になった巻貝の貝殻に入って身を守り、その貝殻を自ら背負って移動しながら生活する甲殻類の一種であるヤドカリは、しばしば、自分の住みかとなっている貝殻にイソギンチャクが付着した状態で海底を移動していくことがあり、
その際、
ヤドカリの側は自分の貝殻に付着したイソギンチャクが持つ毒針によってタコなどの天敵の襲来を避けることができる一方で、自分自身ではあまり速く移動することができないイソギンチャクの側も、ヤドカリの殻の上に乗せてもらって運んでいってもらうことによって、より栄養が豊富な海域へと速やかに移動していくことができるという利益を得ていると考えられることになります。
このように、ヤドカリとイソギンチャクは、
ヤドカリの側がイソギンチャクの移動を手伝って栄養が豊富な海域へと速く運んでいってあげるのに対して、その代わりに、イソギンチャクの側もそうした自分をより生活しやすい場所へと運んで行ってくれるタクシーの運転手にあたるヤドカリを天敵となるタコの襲撃から保護するという相利共生の関係のうちにある生物同士の組み合わせとして位置づけられることになると考えられることになるのです。
虫媒花と昆虫そして人間と腸内細菌における相利共生の関係
また、その他にも、
こうした相利共生と呼ばれる関係性の例は、自然の生態系や日常生活の様々な場面において幅広く見いだしていくことができるができると考えられ、
例えば、
サクラやアブラナなどに代表されるような被子植物に分類される多くの花は、美しい花びらや甘い蜜の香りなどによって昆虫を引きつけ、
そうした花の甘い蜜を吸わせてあげる代わりに、昆虫に花粉の運び手となってもらうことによって、受粉を行って繁殖していくことになります。
そして、
人間の腸内などにおいて生息して腸内細菌叢や腸内フローラなどと呼ばれるコロニーを形成している乳酸菌やビフィズス菌といった腸内細菌たちと宿主である人間との関係においても、
腸内細菌の側が腸内において人間が食べた食物の一部を栄養源として利用することによって生活している一方で、
人間の側もそうした乳酸菌やビフィズス菌といった自らの腸内に常在する腸内細菌たちの働きによって、外部から侵入してくる病原性の強い細菌の種族が増殖するのを防いでいて、腸内環境を適切な状態に保つことに貢献してもらっていると考えられることになります。
・・・
以上のように、
前述したアリとアブラムシの関係や、ヤドカリとイソギンチャクの関係、さらには、こうした虫媒花と昆虫の関係や、人間と腸内細菌などの関係などについても、
広い意味における相利共生と呼ばれる共生関係のうちの一例として位置づけることができると考えられることになるのです。
・・・
次回記事:片利共生の具体的な仕組みとは?コバンザメとクジラにおける片利共生と同じテーブルで食事をとる小人と巨人との関係
前回記事:コケ植物と地衣類の具体的な特徴の違いとは?両方とも同じように「~ゴケ」という名称で呼ばれる理由
「生物学」のカテゴリーへ