混合栄養生物とは何か?環境条件の変化に応じて栄養形式を切り替える植物と動物の中間に位置づけられる生物のグループ
詳しくは以前に「独立栄養生物と従属栄養生物の違い」の記事で書いたように、地球上に存在する大部分の生物は、基本的には、
光合成を行うことなどによって他の生物の存在に依存せずに自らの体を構成している有機物を無機物から合成することができる独立栄養生物と、
光合成を行わず自らの力では有機物を合成することができないため捕食や寄生生活を通じて他の生物がつくった有機物を体内に取り入れることによって生命活動を営んでいる従属栄養生物と呼ばれる二つの生物のグループの内のいずれかに分類されることになるのですが、
それに対して、
今回の記事で取り上げる混合栄養生物と呼ばれる生物のグループは、一言でいうと、
そうした独立栄養生物と従属栄養生物という二つの生物のグループの両方の特徴をあわせ持った性質を持つ両者の中間に位置づけられる生物のグループとして定義することができると考えられることになります。
環境条件の変化に柔軟に対応して栄養形式を切り替えていく生物の種族
冒頭でも述べたように、
混合栄養生物とは、光合成を行うことなどによって有機物を合成することができる独立栄養生物と、光合成を行わずに他の生物がつくった有機物を体内に取り入れて代謝することによって生きている従属栄養生物という
二つの生物のグループの両者の特徴をあわせ持った生物として位置づけられることになるのですが、
このように、混合栄養生物と呼ばれる生物が、
光合成を行うという性質と同時に光合成を行わないという性質もあわせ持つということは、より具体的にはどのようなことを意味していると考えられることになるのでしょうか?
そうすると、
こうした混合栄養生物に分類される生物は、光合成を行うことなどによって自分自身で有機物を合成する能力を持っているという点においては独立栄養生物と同じ性質を持っているものの、
光合成を行うために必要な太陽の光が差し込まないような光エネルギーが乏しい環境にある場合や、自分の周囲にすでに利用可能な有機物が十分に存在する場合などには、
そうした光合成などの自分自身が持つ有機物を合成する能力を用いずに、従属栄養生物と同じように自分の周囲の環境中に存在する有機物を自らの体内に取り入れて代謝していくことによって生命活動を営んでいくことになると考えられることになります。
つまり、より正確に言えば、
こうした混合栄養生物と呼ばれる生物は、自分が生命活動を営んでいる環境条件の変化に柔軟に対応して、
独立栄養生物としての栄養形式のあり方と、従属栄養生物としての栄養形式のあり方を器用に切り替えていくことができる生物として定義することができると考えられることになるのです。
植物と動物の中間に位置づけられる生物のグループとしての混合栄養生物
そして、
こうした混合栄養生物に分類することができる代表的な生物の種類としては、
ユーグレナ植物と呼ばれる単細胞性の藻類の一種として分類されることになるミドリムシ(緑虫)と呼ばれる生物の種類の名が挙げられることになりますが、
こうしたミドリムシと呼ばれる生物は、細胞体の内部に葉緑素を持っていて、光合成を行うことができるという一般的な植物としての特徴を持つと同時に、
鞭毛(べんもう)と呼ばれる運動性を持った器官を備えていることによって、光エネルギーが乏しい環境下などにおいては、活発に動き回って他の微生物を捕食することによって栄養摂取を行うこともできるというように、一般的な動物としての特徴を持つ生物としても位置づけられることになります。
そして、
こうしたミドリムシなどの生物の種類に代表されるように、一般的に、混合栄養生物に分類される生物は、
種子植物やシダ植物、コケ植物、藻類などといった一般的な植物と同じように光合成を行うことなどによって自前でも有機物の合成を行う能力を持つと同時に、
人間を含む哺乳類や鳥類、爬虫類、両生類、魚類、昆虫などといった一般的な動物やカビやキノコといった菌類などのように、捕食や寄生生活を営むことによって生きていくこともできるというように、
二つの栄養形式あるいは生物としての二つの生活様式を柔軟に使い分けていくことができる生物として位置づけられることになります。
つまり、そういった意味では、
こうした混合栄養生物と呼ばれる生物のグループは、
独立栄養生物と従属栄養生物という二つの生物のグループの両方の特徴をあわせ持った生物のグループであると同時に、
植物と動物の中間に位置づけられる生物のグループとしても定義することができると考えられることになるのです。
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次回記事:混合栄養生物に分類される具体的な生物の種類とは?食虫植物と寄生植物とミドリムシそして光合成を行わない化学合成細菌
前回記事:冬虫夏草とは何か?虫に寄生するキノコに分類される代表的な菌類の種類と色や形の具体的な特徴と漢方薬や生薬としての効能
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