グラム陰性菌の具体的な特徴と分類されることになる代表的な細菌の種類
前回までの一連の記事で書いてきたように、細菌学の分野における細菌の分類のあり方においては、一般的に、細菌の種類は、
グラム染色と呼ばれる細胞染色法において、紫色に染色されることになるグラム陽性菌と、アルコール脱色を受けた後の再染色の段階において主に赤色に染色されることになるグラム陰性菌と呼ばれる二つのグループへと大きく分けられることになります。
そこで、今回の記事では、
こうしたグラム陽性菌とグラム陰性菌と呼ばれる二つの細菌のグループのうちの後者にあたるグラム陰性菌と呼ばれる細菌のグループの具体的な特徴について改めて整理して記述していったうえで、
そうしたグラム陰性菌と呼ばれる細菌のグループに分類されることになる代表的な細菌の種類について詳しく考察していきたいと思います。
グラム陰性菌と呼ばれる細菌のグループの具体的な特徴のまとめ
そうすると、まず、
こうしたグラム陰性菌と呼ばれる細菌のグループの具体的な特徴についてまとめると、以下で述べるような三つの具体的な特徴を挙げていくことができると考えられることになります。
①グラム染色の過程において細胞体はいったん紫色に染色されるものの、その後のアルコール脱色の段階によって紫色の色素は定着せずにすぐに抜け落ちてしまい、その次の対比染色の段階において赤色に再染色されることになる。
②細胞の外殻が外膜と内膜と呼ばれる二重膜構造からなる二つの細胞膜と、そうした二重膜構造の間に存在する薄い細胞壁の層によって構成されている。
③グラム陰性菌に分類される細菌が持つ外膜の主成分となるリポ多糖は、細菌の細胞内に含まれる毒素にあたる内毒素としての働きを持つことによって、細菌の細胞体が破壊された際に人体に対して毒性を示すことがある。
つまり、一言でまとめると、
こうしたグラム陰性菌と呼ばれる細菌のグループは、
①グラム染色と対比染色の過程で赤色に染色される、②細胞の外殻が外膜と内膜と呼ばれる二重膜構造とその間に存在する薄い細胞壁の層によって構成されている、③外膜の主成分となるリポ多糖が人体に対して毒性を示す内毒素としての働きを示す
といった三つの主要な特徴を持つ細菌のグループとして位置づけられることになると考えられることになるのです。
グラム陰性菌に分類される代表的な細菌の種類の区分
そして、次に、
こうしたグラム陰性菌に分類される細菌のなかでも、人間に対して細菌感染症を引き起こす病原菌や、皮膚や腸内において生息する常在菌として位置づけられることになる代表的な細菌の種類としては、例えば、
上記の図において示したような全部で36種類におよぶ代表的なグラム陰性菌の種類の名を挙げていくことができると考えられることになるのですが、
こうしたグラム陰性菌に分類されることになる様々な細菌の種類は、
それぞれの細菌が酸素が存在する環境と酸素が存在しない環境のどちらを好んで増殖していくことになるのかという好気性菌と嫌気性菌の区分、
さらには、
以前に「球菌・桿菌・らせん菌に分類される代表的な細菌の種類」の記事などにおいて詳しく考察してきた球菌・桿菌・らせん菌といった細菌の形態的な特徴の違いを基準とする区分のあり方に基づいて、
以下で挙げるようなグラム陰性好気性球菌とグラム陰性好気性桿菌とグラム陰性好気性らせん菌、そして、グラム陰性嫌気性桿菌とグラム陰性嫌気性らせん菌という全部で五つの細菌のグループへと細分化されていくことになると考えられることになるのです。
グラム陰性好気性細菌に分類される代表的な細菌の種類
そして、このうち、はじめに挙げた
グラム陰性好気性球菌、すなわち、グラム陰性で酸素が存在する環境を好む球形の形状をした細菌のグループに分類される代表的な細菌の種類としては、
細菌性の髄膜炎の原因となることになる髄膜炎菌や、淋病と呼ばれる性感染症などの原因となる淋菌、人間や動物の口腔や気道に生息する常在菌の一種であるカタル球菌といった細菌の種類の名が挙げられることになるのに対して、
その次に挙げた
グラム陰性好気性桿菌、すなわち、グラム陰性で酸素が存在する環境を好む棒状の形状をした細菌のグループに分類される代表的な細菌の種類としては、
百日咳と呼ばれる細菌性の呼吸器疾患の原因となる百日咳菌や、緑膿菌、レジオネラ菌、ブルセラ菌、皮膚の表面に生息する常在菌の一種であるアシネトバクターといった細菌の種類の名が挙げられることになり、
その次に挙げた
グラム陰性好気性らせん菌、すなわち、グラム陰性で酸素が存在する環境を好むらせん状の形状をした細菌のグループに分類される代表的な細菌の種類としては、
細菌性の急性胃腸炎の原因菌となるカンピロバクターや、ヘリコバクター属に分類されるピロリ菌やハイルマニ菌といった細菌の種類の名が挙げられることになると考えられることになるのです。
グラム陰性嫌気性細菌に分類される代表的な細菌の種類
そして、それに対して、
グラム陰性嫌気性桿菌、すなわち、グラム陰性で酸素が存在しない環境を好む棒状の形状をした細菌のグループに分類される代表的な細菌の種類としては、
人間や動物の腸内などに生息する常在菌の一種であると同時に細菌性の胃腸炎や食中毒などの原因ともなる大腸菌やサルモネラ菌や腸炎ビブリオ、
そして、肺炎などの呼吸器系の疾患の原因となる肺炎桿菌や、ヘモフィルス属に分類されるインフルエンザ菌と軟性下疳菌、さらには、ペスト菌、赤痢菌、チフス菌、パラチフス菌といった細菌の種類の名が挙げられることになるほか、
その他にも、人間の腸内に生息する腸内細菌の一種として分類されることになるセラチア菌、エンテロバクター、バクテロイデス、フゾバクテリウム、プレボテラ、プロテウス菌や、人食いバクテリアという呼び名で有名なビブリオ・バルニフィカスといった細菌の種類の名も挙げられることになるのに対して、
最後に挙げた
グラム陰性嫌気性らせん菌、すなわち、グラム陰性で酸素が存在しない環境を好むらせん状の形状をした細菌のグループに分類される代表的な細菌の種類としては、
コレラ菌とナグビブリオ、その他にも、スピロヘータに分類されることになる梅毒トレポネーマやボレリアやレプトスピラといった細菌の種類の名が挙げられることになると考えられることになるのです。
また、
こうした球菌や桿菌やらせん菌といった一般的な細菌のグループには含まれない特殊な細菌の種族にあたるリケッチアとマイコプラズマとクラミジアと呼ばれる細菌の種族についても、細胞壁の構造からグラム陰性菌として位置づけられることになるのですが、
このうち、リケッチアとクラミジアについては偏性細胞内寄生菌と呼ばれる宿主となる生物の細胞の外部においては生存することができない特殊な細菌のグループに位置づけられることになるのに対して、マイコプラズマについてはグラム陰性の多形性の嫌気性菌の一種として分類されることになると考えられることになるのです。
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次回記事:グラム陽性菌とグラム陰性菌に分類される代表的な60種類の細菌のまとめ、一番多くの細菌が分類される細菌のグループとは?
前回記事:グラム陰性菌という名称の具体的な由来と、細菌の細胞がアルコールで脱色された後で赤色に再染色される理由とは?
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