人間原理とコペルニクス的転回の関係とは?宇宙原理と人間原理に基づく宇宙全体の構造の双方向的な探求

これまでの一連の記事においては、現代の宇宙物理学における主流派の宇宙論の根本にある宇宙原理と呼ばれる基本原理のあり方と、それに対立する宇宙論の議論である人間原理と呼ばれる宇宙の捉え方について考察してきましたが、

こうした二つの宇宙に関する基本原理のあり方のうちの前者である宇宙原理については、それが16世紀のヨーロッパの天文学者であったコペルニクスによる天動説から地動説への転回に基づくコペルニクスの原理と呼ばれる原理の宇宙論への適用によって形成されていった原理であったのと同様に、

後者の人間原理と呼ばれる宇宙の捉え方についても、それはコペルニクスと関わりの深い概念として捉えることができると考えられることになります。

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人間原理の提唱とポーランドの天文学者コペルニクスとの関係

まず、こうした人間原理と呼ばれる宇宙の捉え方は、

 1973オーストラリアの理論物理学者であったブランドン・カーターBrandon Carter、1942年~)よって、ポーランドの南部の都市であるクラクフで開催された討論会の際に新たな提唱された宇宙論であるということになるのですが、

そもそも、

こうした人間原理と呼ばれる基本原理がはじめて提唱された舞台は、

この地のクラクフ大学の出身者でもあった16世紀のポーランドの天文学者であるニコラウス・コペルニクスNicolaus Copernicus、1473年~1543年)の500回目の誕生日を記念して開催されたシンポジウムであり、

ブランドン・カーターは、こうしたコペルニクスの原理に由来する宇宙原理に基づく宇宙観に対して新たな転回をもたらす原理を提示するために、

あえて、このようなコペルニクスと関わりの深い場所を選んで、自らが提示する新たな宇宙論に関する学説の発表を行ったと考えられることになるのです。

コペルニクス的転回と人間原理における宇宙論的転回との関係

そして、

こうした人間原理と呼ばれる宇宙論においては、

天動説から地動説への転回に基づいて宇宙における人間の特権的地位を否定するコペルニクスの原理に基づく現在の主流派の宇宙論における宇宙の捉え方の否定と、宇宙の側から人間の側への原理の再転回が試みられていると考えられることになるのですが、

こうした人間原理における宇宙の客観的な構造の原理の側から宇宙の観測者としての人間の主観的な原理への転回のあり方は、

コペルニクスにおける天動説から地動説への転回のあり方そのものというよりは、むしろ、そうしたコペルニクスの天文学の分野における理論の大転換に触発される形で生み出されていった

18世紀のドイツの哲学者であったインマヌエル・カントImmanuel Kant、1724年~1804年)によって唱えられた認識論における対象の側の原理から主観の側の原理への転回のことを意味するコペルニクス的転回に非常に似通った構造を持った原理の転回のあり方であったと捉えることができると考えられることになります。

カントの認識論におけるコペルニクス的転回の議論においては、

人間の認識が客観的に統合された秩序立った認識として成立しているためには、対象の側ではなく主観の側の条件の方が重要であると捉えられることによって、

認識のあり方における宇宙や世界といった対象の側から人間の意識の構造といった主観の側への主導的な原理の転回が進められていくことになると考えられることになるのですが、

それと同様に、

宇宙の構造の捉え方に関する人間原理における宇宙論的な転回の議論においても、

宇宙の姿が現実における観測可能な宇宙のあり方として成立しているためには、観測の対象である宇宙の側の物理的条件だけではなく、観測者としての人間の存在に基づく条件の方がより重要となると捉えられることによって、

宇宙を成り立たせている基本原理のあり方における観測の対象となる宇宙の構造の側から観測の主体である人間の存在の側への主導的な原理の転回が進められていると捉えることができると考えられることになるのです。

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宇宙原理と人間原理に基づく宇宙全体の構造の双方向的な探求

以上のように、

コペルニクスによる天動説から地動説への転回の議論からは、

直接的には、コペルニクスの原理とその宇宙論への適用である宇宙原理へとつながる考え方が生み出されていくことになったと考えられるのに対して、

そうしたコペルニクスによる天動説から地動説への転回の議論に基づいてそこから間接的な形で生み出されていったコペルニクス的転回の議論からは、

観測者としての人間の存在といった主観的な原理の側から宇宙全体の構造を探求していこうとする人間原理へとつながる宇宙論が生み出されていくことになった考えられることになります。

そして、そういった意味では、

観測者としての人間やその生命を育んできた地球といった特別な存在をも包含する宇宙全体の構造のあり方は、

コペルニクスによる天動説から地動説への転回の議論から派生したコペルニクスの原理コペルニクス的転回という二つの理論の転回のあり方に基づいて形成されていった原理である

宇宙原理人間原理と呼ばれる二つの宇宙論における基本原理に基づく双方向的な探求のなかで解き明かされていくべき存在であるとも考えられることになるのです。

・・・

次回記事:宇宙人の存在を肯定する根拠となる三つの科学的な理論とは?「平凡の原理」と「宇宙原理」と「ドレイクの方程式」

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