パンスペルミア説における生命の伝播の三通りのパターンとは?微生物の芽胞による偶発的伝播と知的生命体による意図的伝播

前回の記事で書いたように、現代の宇宙論において、人類を含む地球上の生命の起源を遠い宇宙の別の惑星系から飛来した微生物などの地球外の生命体のうちに求める考え方としては、

パンスペルミア説(the theory of panspermia)と呼ばれる仮説理論の名が挙げられることになるのですが、

こうしたパンスペルミア説における地球への生命の伝播のあり方としては、具体的には以下で述べるような三通りのパターンを想定していくことができると考えられることになります。

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彗星や小惑星に付着した微生物の芽胞による偶発的な生命の伝播

まず、最も一般的なパンスペルミア説の考え方としては、

そうした惑星間における生命の伝播のあり方は、宇宙空間を飛来する彗星や小惑星の表面や内部に付着した微生物の芽胞(がほう)のような構造体が偶発的に別の惑星へと漂着することによって行われていくと考えられていくことになります。

芽胞(がほう)とは、炭疽菌枯草菌納豆菌破傷風菌ボツリヌス菌といった一部の細菌類において形成される極めて耐久性の高い細胞構造のことを意味する言葉であり、

これらの細菌類は、異常な低温や乾燥状態といった過酷な生存条件のもとにさらされると、こうした芽胞と呼ばれる構造体をつくり出すことによって、半結晶状態の休眠状態へと移行していくことになり、

こうした細菌類の芽胞は、一般的に、絶対零度に近いような超低温下ではもちろん、200℃を超えるような超高温下においてもすぐには死滅しないと考えられています。

そして、

パンスペルミア説においては、そうした微生物がもともと生息していた惑星から隕石の衝突などによって宇宙空間へと放り出されてしまった後でも、半永久的に生存状態を保ち続けることができると考えられたうえで、

そうした彗星や小惑星の内部において息をひそめてきた微生物の芽胞が、地球のような新たな惑星系へと到達して大気圏突入における高温と衝撃を経てもなお生き残り続けることは可能であると考えられることによって、

そうした宇宙空間から偶発的に飛来してきた彗星や小惑星の内部に付着していた微生物の芽胞のような微細な有機体やその断片などを通じて、惑星間における生命の伝播が行われることがあり得ると考えられていくことになるのです。

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地球外知的生命体の植民活動における意図的な生命の伝播

それに対して、その他のパンスペルミア説の考え方としては、宇宙人のような地球外知的生命体の存在を前提とした惑星間の生命の伝播のあり方も考えられていくことになり、

最も分かりやすい例としては、少しSFじみた話にはなりますが、

太古の昔に、母国の惑星系で増えすぎた人口を抱えきれなくなった知的生命体が、自分たちが移住するための植民地となる惑星系を探して、ある時、地球のような別の惑星へと降り立ち、

そこに自分たちの惑星に生息する原始的な生物を意図的に送り込んでしばらく様子を見ていたものの、その惑星は自分たちが居住するのに適さない星であることが分かったのか、

あるいはその後、その星に移住しようとしていた知的生命体の種族自体が何らかの理由で滅んでしまったなどといった理由によってその知的生命体自身は新たな惑星からは去って行ってしまうことになり、

後に取り残された別の惑星系に由来する原始的な生命体だけがその星に取り残されて新たに独自の生態系をつくり上げていことになったといった事態も考えられることになります。

宇宙探査の際の偶発的な事故によって引き起こされる生命の伝播

また、もう一つの別な考え方としては、

そうした地球外知的生命体が地球のような新たな惑星へと降り立った際に、その来訪はせいぜい単なる銀河系全体のマッピングのための惑星の基礎的な探索活動のようなものであったとしても、

例えば、

惑星探査の際に、隊員の靴底に付着していた微生物の断片などが、そうした生命の存在しない惑星上に取り残されることによって、

そうした塵やゴミのような微生物やタンパク質の断片から、その後、その惑星における新たな生命体の誕生と進化が引き起こされていくといったこともあり得ると考えられることになります。

・・・

以上のように、

こうしたパンスペルミア説における惑星間における生命の伝播のあり方には、

彗星や小惑星に付着した微生物の芽胞などを通じて、まったくの偶発的な形で生命の伝播が進んでいくケースと、

そうした生命の伝播が地球外知的生命体の植民活動のような人為的な行為を通じて意図的に伝播されていくケース、

さらには、そうした地球外知的生命体の惑星探査の活動といった何らかの人為的な行為がきっかけとなってはいるものの生命の伝播自体は偶発的な形で進んでいくケース

という全部で三通りのパターンが想定されることになると考えられることになるのです。

・・・

次回記事:光パンスペルミア説と岩石パンスペルミア説の違いとは?宇宙空間の超低温下と高線量の放射線下における生命体の生存可能性

前回記事:パンスペルミア説とは何か?ギリシア語における語源とアナクサゴラスの哲学との関係

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