シャーロックホームズとフィッシュアンドチップスの関係は?
前回の「フライドポテトは英語でなんていうの?ドイツ語やフランス語では?」の続きです。
アメリカ英語のフレンチフライズ(French fries)の方はともかく、
イギリス英語のチップス(chips)が、日本で言ういわゆるフライドポテトのことを意味するというのは、いまいちイメージしにくいので、
チップス(chips)については、さらに具体例などを挙げて、
もう少し具体的なイメージを膨らませていきましょう。
フィッシュアンドチップスはファストフードの元祖なの?
チップス(chips)が入ったイギリスの伝統食に、
タラなどの白身魚のフライと、チップス(chips、日本で言ういわゆるフライドポテト)をセットにした、
フィッシュ・アンド・チップス(fish-and-chips)があります。
魚のフライに、じゃが芋のフライという、
どちらも油で揚げた食品の組み合わせなので、
脂っこくギトギトしていて体に悪いとか、
そもそもイギリス料理はみんなマズいといった過激な意見もありますが、
フィッシュ・アンド・チップスは、
歴史的にもイギリス国民に広く愛されてきたソウルフードでもあります。
18世紀半ばから19世紀にかけての産業革命以降、
大都市ロンドンを中心に、集まって来る大勢の工場労働者のために、
安くて手早く食べられる食品が求められるようになりました。
そこで、
コーン状に三角に丸めた新聞紙やわら半紙などに包んで、
片手でつまんで食べられるフィッシュ・アンド・チップスが、
ファストフード(fast food)の元祖のようなものとして、イギリス全土に広がっていったのです。
イギリスの小説や映画にでてくるフィッシュアンドチップスって?
現代版にアレンジした、ホームズをロバート・ダウニー・Jr.が、
ワトソンをジュード・ロウが演じたことで話題となった、
2009年公開の映画『シャーロック・ホームズ』(Sherlock Holmes)でも、
ホームズとワトソンが、
新聞紙に包まれたフィッシュ・アンド・チップスをつまみながら、
互いに議論を交わし、
ロンドンの狭い裏通りの人混みと喧騒の中を、
2人並んで歩いていく、というシーンがあります。
映画の中での、ホームズとワトソンの会話は、以下のように進んでいきます。
Watson: Why that certain chips stall, I don’t understand.
(なんで、君はいつも同じ店の同じフィッシュ・アンド・チップスしか食べないんだ?僕には意味がわからないよ。)
Holmes: There’s a particular beer in their batter. A northern stout, to be exact.
(この店では、揚げ衣の隠し味に、特別なビールを使っているんだ。正確に言えば、北イングランドの黒ビールだ。)
Watson: You know, Holmes, I’ve seen things in war I don’t understand.
I once met a man who predicted his own death…
…right down to the number and the placement of the bullets that killed him.
You have to admit, Holmes that a supernatural explanation to this case is theoretically possible.
(ホームズ、僕は戦争中に、自分でもまったく理解できない出来事を見てきたんだ。
僕は、かつて、自分の死を予言した男に出会ったことがある。
彼は、自分が死ぬ日付から、自分を殺す銃弾が貫通する場所まで、すべてをぴったりと言い当てたんだ。
ホームズ、君も認めなくちゃならないんじゃないかな。このケースでは、
科学を超えた超自然的な解釈こそが、唯一理論的に可能な道だということを。)
Holmes: Well, agreed, but it’s a huge mistake to theorize before one has data.
Insensibly one begins to twist facts to suit theories instead of theories to suit facts.…
(そうだな、ひとまずは君に同意しておこう。だけど、まだ十分なデータがそろっていないうちに、理論を組み上げようとするのは大きな間違いだ。
人は、自分でも気づかないうちに、事実に合致するように新たな理論を組み上げる代わりに、すでにある理論に合うように事実の方をねじ曲げ始めてしまうものなのだから。…)(※ただし、丸カッコ内は拙訳)
このように、2人の議論は、
フィッシュ・アンド・チップスが入った新聞包みを片手に、
どこか哲学的な込み入った方向へと、どんどん進んでいってしまうわけですが、
それはともかく、
この映画『シャーロック・ホームズ』だけに限らず、
チャールズ・ディケンズの小説『オリバー・ツイスト』や『二都物語』など、
多くのイギリスの小説・映画でフィッシュ・アンド・チップスは、
名脇役として登場してくるというわけです。
現実の世界でも、
ロンドンのシャーロック・ホームズパブ(The Sherlock Holmes Public House)では、フィッシュ・アンド・チップスが定番メニューとして楽しめますし、
映画『ハリーポッター』のなかでフィッシュ・アンド・チップスが直接出てくるシーンはちょっと思い出せないのですが、
USJ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)の『ハリーポッター』にちなんだレストラン「三本の箒」でも、
イギリスの伝統の味として、フィッシュ・アンド・チップスが提供されています。
まとめ
後半は、フィッシュ・アンド・チップスとシャーロック・ホームズの話ばかりになってしまいましたが、話を元に戻して、
最後に、日本で言ういわゆるフライドポテトの英語表現についてのコアなまとめを、わかりやすくなるようにしておきたいと思います。
覚えておいた方がいいことは、以下の2点だけです。
①日本で言うフライドポテトやポテトフライのことは、英語では主に、
フレンチフライズ(French fries)
と言う。
②そして、チャールズ・ディケンズの小説『オリバー・ツイスト』や『二都物語』、映画『シャーロック・ホームズ』などにも出てくる、
イギリス料理のフィッシュ・アンド・チップス(fish-and-chips)の
チップス(chips)は、スティック状のフライドポテトのこと。
この2つのことさえ、軸としてしっかり覚えておけば、
具体的にイメージもしやすく、
アメリカ英語とイギリス英語で混同することもなくなって、
バッチリですね。
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