アドラー心理学とは何か?個人心理学における劣等感を原動力とする主体的な意志の力を重視した心理学理論、深層心理学とは何か?⑧

このシリーズの前回の記事では、深層心理学の基礎となる理論を築き上げた、精神分析学の創始者であるフロイトと、

彼と深い関係にあり、一時期はフロイトに先立って国際精神分析協会の初代会長の座につきながらも、その後、彼と袂を分かつこととなって、分析心理学と呼ばれる新たな深層心理学の分野を切り拓いていくことになったユングの間における心理学理論の違いのあり方について考察してきましたが、

こうした深層心理学と呼ばれる学問分野における代表的な心理学の学派としては、フロイトの精神分析学ユングの分析心理学のほかに、

ユングと同じように一時期はフロイトの精神分析学の理論を学び、彼と共同研究を行いながら、後にフロイトと袂を分かつことによって自らの学派を築き上げていくことになった人物であるアドラーが創始した個人心理学と呼ばれる心理学の学派の名を挙げることができると考えられることになります。

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アドラーによる自由精神分析協会の設立と個人心理学の確立

アルフレッド・アドラーAlfred Adler、1870年~1937年)は、精神分析学の祖であるジークムント・フロイトSigmund Freud、1856年~1939年)と同じオーストリア出身精神科医および心理学者であり、

冒頭でも述べたように、彼は、自らの心理学理論を打ち立てていくことになる初期の段階においては、その道の先駆者であったフロイトの研究グループに参加して彼との間で共同研究を進めていくことによって、精神分析学の理論を学んでいくことになるのですが、

その後、アドラーは、人間の心の働きのすべてをリビドーと呼ばれる性的なエネルギーや性的欲動へと結びつけることによって解釈しようとするフロイトの考え方に対して次第に疑問を抱くようになり、彼との間に徐々に距離を置いていくようになっていくことになります。

そして、アドラーは、

彼と同様にフロイトと共に心理学研究を進めていたユングがフロイトと袂を分かって自らの心理学の学派である分析心理学を打ち立てることになる1914にさかのぼること3年前の1911に、新たに自由精神分析協会を設立するに至り、

そうした自由精神分析協会と呼ばれる自らが主宰する心理学研究の団体を、その後の1913年に個人心理学会へと改称していくなかで、

個人心理学Individual psychologyと呼ばれる自らの心理学の学派を築き上げていくことになったと考えられることになるのです。

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劣等感を原動力とする個人の心の主体的な意志の力を重視した心理学理論

アドラーは、こうした個人心理学と呼ばれる自らの心理学理論において、その名の通り、個人の心の内部における主体的な人格形成のあり方を重視していくことになり、

そのなかでも、特に、個人が他者との間の人間関係や社会生活を営んでいくなかで自らの心の内に形成していくことになる劣等感と、そうした劣等感を自ら克服しようとする補償作用のうちに、人間の人格形成の本質を見いだしていく心理学理論を打ち立てていくことになります。

例えば、

小学校時代に運動が苦手であるためにクラスメートたちから馬鹿にされたり、運動会や体育祭などでいつも恥をかいたりしてしまうことによって自らの心の内に劣等感を抱え込んでいくことになった人物が、

その後、中学や高校に入った段階において体を鍛え直して鍛錬に励むことによって、小学校時代に自分のことを馬鹿にしていた子供たちよりも力強い肉体を手に入れることによってその時の劣等感を克服していくケースや、

あるいは、病弱であるためにそうした肉体の鍛錬には向かない人物であったとしても、逆に勉学や芸術といった別の方面に自らの才能を生かす道を見いだしていくことによって、運動が苦手という自らの弱点を総合的な観点から補っていくケースなどが見られるように、

一人一人の人間における自分自身が進んでいく道の選択やその人格形成においては、劣等感を原動力とする個人の心の主体的な意志の力が重要な役割を果たしていると考えられることになります。

このように、

アドラーの心理学である個人心理学においては、そうした個人の心の内なる意志の力によってもたらされる劣等感を原動力とした自らの弱点の克服と補償作用のうちに、

一人一人の人間の心の内に存在する根源的な心的エネルギーのあり方が見いだされていくことになると考えられることになるのです。

・・・

次回記事:アドラーの個人心理学とフロイトの精神分析学の三つの特徴の違いとは?内向性と外向性の違いといった探究の方向性の相違点、深層心理学とは何か?⑨

前回記事:幼少期の性的虐待が二重人格や多重人格の形成につながりやすい理由とは?エディプス期における子供の心の発達の阻害との関係

 このシリーズの前回記事:ユングの分析心理学とフロイトの精神分析学の違いとは?無意識の構造とリビドーの捉え方の相違点、深層心理学とは何か?⑦

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