中国神話とギリシア神話における人間と神の距離感と同質性の違いと、中国神話における神話世界と歴史的世界の並進性

中国神話や古来から伝わる中国の民間信仰などにおいては、関帝廟(かんていびょう)や孔子廟(こうしびょう)などに見られるように、

歴史上の人物が、現世における治世や覇業才徳などから民衆の支持を広く集めることによって、死後に人間としてではなく、むしろ神として崇められるようになるケースが数多く存在すると考えられることになります。

そこで、今回は、

こうした中国神話における人間と神の距離感の近さや、両者の同質性と差異のあり方についてギリシア神話における神々と人間の関係との対比から詳しく考えていきたいと思います。

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ギリシア神話における神の人間の距離感の近さと両者の間に存在する明確な差異のあり方

神話における神の人間の距離感の近さで言うと、西洋における神話の代表格であるギリシア神話においても、

ギリシア神話における神々は、人間の世界の内に入り込んで干渉し、しばしば争いや戦争を引き起こしてしまうこともあれば、時には、人との間に子供をもうけて半神半人の存在をも生み出してしまうことがあるというように、

神との人間の両者の間の距離感は、親近感などが比較的強い形で描かれていると考えられることになります。

しかし、

こうしたギリシア神話における神々は、人間との距離感が近いとは言っても、人間には存在しない不死の性質や、自然の力や人間の心を自由に操る超常的な能力を持っているほか、

その出自についても、例えば、

ギリシア神話の主神であるゼウスは全宇宙を統べる神々の王であったクロノスと、大地と豊穣の女神であるレアとの間に生まれたとされ、

知恵の女神であるアテナは、父神ゼウスの頭の中から鎧をまとった姿で誕生したなどとされているように、

ギリシア神話における神々は、原初の宇宙のカオス(混沌)の中から生まれた最古の女神であるガイアを除いて、基本的には、それ以前に存在する別の神々から生まれたものだけが新たな神として認められていると考えられることになります。

ちなみに、

前述した神と人との間に生まれた存在であるヘラクレスアキレスアエネアスといったギリシア神話における半神半人の登場人物たちについても、神と人との区分のあり方比較的はっきりとしていて、

通常の場合、こうした神と人との間に生まれた者たちは、神としての不死なる性質などを継承することはなく、

基本的には、神ではなく英雄、すなわち、人間でありながら神的な超常的な力を持つ人物として区分されることになると考えられることになるのです。

中国神話における神の人間の同質性と神話世界と歴史的世界の並進性

それに対して、

中国神話においては、例えば、冒頭で挙げた関帝廟において武神として信仰されている関羽(かんう)は、

3世紀の中国の三国志の時代に張飛(ちょうひ)と共に(しょく)の国の皇帝となる劉備(りゅうび)を助けてその覇業と治世のために貢献した歴史上実在した武将ということになりますし、

その他にも、例えば、

中国神話において、四罪(しざい)と呼ばれる四柱の悪神として挙げられている共工(きょうこう)・驩兜(かんとう)・三苗(さんびょう)・鯀(こん)の四者は、

社会や国家に害悪をもたらす源となる悪神であると語られていると同時に、そうした悪徳を現実の人間社会のうちで実践した歴史伝承上において実在した人物としても語られていくことになります。

つまり、

こうした中国神話や古来から伝わる中国の民間信仰などにおいては、それが善神であれ悪神であれ、神話の世界のうちで語られている超常的な能力を持った神々の姿が、

同時に、かつて中国の古代社会の内に実在していたとされる歴史上の人物の姿としても語られていくことになると考えられることになるのです。

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以上のように、

ギリシア神話中国神話に登場する神々は、どちらも人間との距離感が比較的近い形で描かれているという点では、互いに共通していると考えられることになります。

しかし、

ギリシア神話においては、神々には人間には存在しない不死なる性質が帰属し、神々から生まれたものだけが新たな神として認められるというように、

人間と神の両者の間には、その出自や性質のあり方には、本質的な差異が見られると考えられるのに対して、

中国神話においては、孔子関羽といった歴史上実在した人物たちが、その死後に神として崇められるようになっていくケースや、

その反対に、

神話の世界において語られている四罪などの悪神たちが、歴史伝承上実在した人物としても語られていくケースがあるように、

中国神話においては、人間と神の存在との間にはあまり明確な意味での本源的な差異はないと考えられることになります。

そして、このように、

神話のなかに登場する悪神や善神たちが、歴史上や伝承において実在したとされる人物とも同一視されていくことによって、

中国神話においては、神話世界と人間社会における古代の歴史的世界が互いに並行して進んでいく形で物語が展開されていくことになると考えられることになるのです。

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次回記事:中国神話において天地創造を行った最初の神とは?盤古による天地創成の物語

前回記事:中国神話における七つの大罪とは?四凶と四罪に含まれる七つの悪徳の選別のあり方

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