中国神話において天地創造を行った最初の神とは?盤古による天地創成の物語

古代中国における神話の時代は、通常の場合、三皇五帝(さんこうごてい)と呼ばれる伏羲(ふっき)・女媧(じょか)・神農(しんのう)、そして、黄帝といった古代の神または聖王による治世の時代を中心に始まっていくことになるのですが、

こうした古代中国の神話においても、神農黄帝といった聖王が現れる以前に宇宙自体を創成した原初の神、すなわち、天地創造を行った最初の神について語られている文献はある程度存在していて、

一般的には、

3世紀頃の中国の三国志の時代に記された『三五歴記』などの文献において最古の記述のある盤古(ばんこ)という名で呼ばれている巨神がこうした宇宙のはじまりにおいて天地創造を行った最初の神として位置づけられることになると考えられることになります。

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混沌から生まれた巨神盤古による天地創成の神話

盤古と呼ばれる巨神が登場する古代中国における天地創成の神話においては、

宇宙はその原初の姿においては、天と地とが分かれていおらず、あらゆるものが渾然一体となった混沌が、ひとかたまりの卵のような球形の状態でまとまっていたとされることになります。

そして、

そうした卵のような混沌の中から、ある時、それ自体が宇宙そのものとなる巨神である盤古が誕生し、

盤古自身も、生まれた当初は、こうした天地が一体となった混沌のかたまりの内に閉ざされていたのですが、

やがて、年を経ていくにしたがって、巨神である盤古は、その背丈を大きく伸ばしていくようになり、

盤古の背丈が伸びていくにしたがって、彼の肩が天を押し上げ、その足が地を押し下げていくように、宇宙の内でも天と地とが離れていき、混沌の状態にあった宇宙の内において万物の生成と分離が進んでいくことになったと考えられることになります。

そして、

盤古の背が一日に一丈ずつ伸びていくと、それにしたがって、天の高さも一丈ずつ増していくとともに、それを支える地の厚みも一丈ずつ増していくことになり、

盤古の誕生から一万八千年ほどの歳月を経たのちに、現在のような天地の姿が形づくられたと語られていくことになります。

一丈(いちじょう)は、日本においては通常の場合、3メートルほどの長さを意味しますが、古代中国における一丈は、成人男性一人分の身長を基準とした長さを意味していて、具体的には、だいたい1.8メートルほどの長さのことを示していたと考えられることになります。

そして、さらに、

このようにして、天と地が分かれると、自らの役割を終えた盤古は死を迎え、盤古の流した長江(揚子江)黄河といった大地を流れる大きな川となり、

その四肢(手足)は、四岳(しがく)と呼ばれる東の泰山(たいざん)、西の華山(かざん)、南の衡山(こうざん)、北の恒山(こうざん)といった山々や山脈へ、

両目は、左目が太陽、右目がとなり、その髪の毛草木となるというように、

盤古の体から自然を形づくるあらゆる存在が分かれ出でていくことによって、宇宙の内にあるすべての事物が形成されていくことになったと説明されていくことになるのです。

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以上のように、

中国神話において天地創造を行った最初の神は、盤古(ばんこ)という名で呼ばれている巨神であったと考えられることになるのですが、

こうした盤古による天地創成の神話においては、

天と地が一体となった混沌の状態にあった原初の宇宙うちから、盤古が生まれ、巨神である盤古の背が伸びていくにしたがって、宇宙においても天と地が次第に離れていくことになり、

一万八千年ほどの歳月を経て、天と地とが現在の世界のような形へと完全に分かれたのちに、盤古が死を迎えると、その涙は大河手足は山脈両目は太陽と月髪は草木へと変化していくことによって、

こうした古代の巨神である盤古の遺骸から、世界におけるあらゆる自然の事物が形づくられていくことになったと説明されていくことになります。

そして、このようにして、

盤古と呼ばれる宇宙の原初において存在したとされる古代の巨神が自らの役目を果たして死を迎え、神話の表舞台から消え去っていくことによって、

その後に、

中国神話におけるメインストーリーとなる伏羲女媧神農、そして、黄帝といった三皇五帝の治世を中心とする人類と文明の誕生が主題とされる新たな神話の時代がその幕開けを迎えることになると考えられることになるのです。

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次回記事:女媧による黄河の土からの人間の創造と三皇五帝の最初の帝王である伏羲による八卦と文字の発明

前回記事:中国神話とギリシア神話における人間と神との距離感と同質性の違い

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