生物学における原生動物の二通りの位置づけとは?アリストテレスの二界説と近代生物学における生物の分類のあり方の違い
前回の記事で書いたように、アメーバやゾウリムシといった原生動物は、大きく分けて鞭毛虫類・肉質虫類・胞子虫類・繊毛虫類という四つの生物の種族へと分類されていくことになるのですが、
生物学において、これらの生物の種族の上位分類である原生動物という生物のグループ自体の定義や、他の生物の分類のあり方との対応関係は、必ずしもそれほど明確なものであるというわけではなく、
これから今回の記事で詳しく考えていくように、
こうした生物学における原生動物と呼ばれる生物のグループの位置づけのあり方には、厳密には、大きく分けて二通りの位置づけのあり方が存在すると考えられることになります。
アリストテレスの二界説に基づく動物の下位分類としての原生動物
まず、
現在の生物学へも通じる動物や植物といった生物の分類のあり方についての基本的な概念が確立され、生物学という分野自体が学問的に体系化されていったのは、
紀元前4世紀の古代ギリシアの哲学者であるアリストテレスの時代にまでさかのぼることができると考えられることになりますが、
そうした古代ギリシアのアリストテレスの時代にまでさかのぼることができる伝統的な生物学における生物の分類のあり方においては、
まず、
地球上に存在するすべての生物は、動物か植物かのいずれか一方のグループへと区分されたうえで、それぞれのグループにおいて分類された生物の種類の具体的な特徴の違いに応じて、さらに細分化された生物の種族の区分けが進められていくことになります。
そして、
こうした伝統的な生物学における動物と植物の二界説の考え方に基づくと、
原生動物に含まれる生物の種族は、まずは、こうした二つの大きな生物のグループのうちの動物の部門へと分類されたうえで、
そうした動物に区分された生物たちのなかでも、最も原始的な構造を持った生物の一群、すなわち、ただ一つの細胞によって身体が構成されている単細胞動物が原生動物として位置づけられていくことになると考えられることになります。
つまり、
以上のようなアリストテレスの二界説に基づく伝統的な生物学における動植物の分類のあり方に従うと、
動物的な性質を持った単細胞生物である原生動物は、人間や獣、鳥、魚、貝類といった無数の生物の種族が含まれる大きな生物のグループである動物の下位分類として位置づけられる生物群として捉えられることになると考えられることになるのです。
近代生物学における独立した生物グループとしての原生生物の位置づけ
それに対して、
だいたい18世紀頃までに成立したと考えられる近代生物学や、その後、細菌などの微生物を研究対象とする微生物学が確立されて以降の生物学においては、
前述したようなアリストテレスの二界説に基づく動物と植物の二分法によっては正確に分類していくことが困難な生物の種族が数多く発見されていくことになるのですが、
こうした近現代における生物学の進展にともなって、伝統的な生物学における生物の分類のあり方自体が見直されていくようになると、
そうした近現代の生物学における新たな生物の分類のあり方においては、動物と植物の他にも、菌類、原生生物、細菌類といった生物のグループも新たに設けられていくことになり、
全部で三つから八つ程度のより多様な生物のグループが、こうした動物や植物といった生物の分類のあり方における基本的な階級のうちの最上位の階級として位置づけ直されていくことになります。
そして、
こうした近現代の生物学における新たな生物の分類のあり方においては、上述したように、動物と植物という生物の枠組みとは別に、新たに原生生物と呼ばれる生物の一群が独立した生物のグループとして位置づけられることになり、
原生動物は、そうした動物と植物のいずれのグループにも属さない原生生物と呼ばれる生物のグループのなかでも、どちらかと言うと動物的な性質を多く持っている原生生物の下位分類にあたる生物の種族として位置づけられることになると考えられることになるのです。
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以上のように、
生物学における原生動物と呼ばれる生物のグループの位置づけのあり方については、
伝統的な生物学の生物の分類のあり方においては、アリストテレスの時代にまでさかのぼる動物と植物の二界説の考え方に基づいて、
原生動物は、動物のなかでも最も原始的な構造を持った生物の一群として、動物部門の下位分類にあたる生物の種族として位置づけられることになると考えられることになるのに対して、
近現代の生物学の生物の分類のあり方においては、地球上に存在する生物は、動物や植物以外にも、菌類や原生生物、細菌類といった多様な生物のグループへと分類し直されたうえで、
原生動物は、そうした動物や植物のどちらにも属さない新たな生物のグループである原生生物の下位分類にあたる生物の種族として位置づけられることになると考えられることになるのです。
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次回記事:原生動物という言葉は存在するのになぜ原生植物という言葉はほとんど見られないのか?
前回記事:原生動物とは何か?鞭毛虫類・肉質虫類・胞子虫類・繊毛虫類の四つの原生動物の種族と分類される代表的な生物の種類
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