中国神話における七つの大罪とは?四凶と四罪に含まれる七つの悪徳の選別のあり方

七つの大罪というと、通常は、キリスト教カトリックの教義などにおいて定められている

暴食・色欲・強欲・憤怒・怠惰・傲慢・嫉妬という人間の心の内に生じる七つの悪徳のことを意味することになりますが、

このように、戒めとして人間の心に宿る悪徳が列挙される形で描かれていくケースは、程度の差こそあれ、世の東西の他の宗教や神話の内でも数多く見いだすことができると考えられることになります。

例えば、中国神話においては、

キリスト教世界における七つの大罪のように、必ずしも一つ一つの悪徳が明示される形でまとめられているわけではないのですが、

そうした様々な悪徳を体現する存在として、四凶と四罪と呼ばれる合わせて八つの悪しき存在が挙げられていて、

こうした八つの悪しき存在の内には、キリスト教の七つの大罪に対応するような人々と社会に害悪をもたらす源となる七つの悪徳の存在を見いだすことができると考えられることになります。

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四凶と四罪という八つの悪しき存在の内に含まれる七つの悪徳とは?

詳しくは、四凶とは何か?および四罪とは何か?の記事で考察したように、

中国神話のなかでは、『春秋左氏伝』『史記』『山海経』といった様々な古代の歴史書民俗資料のうちに、四凶や四罪といった妖怪や悪神についての記述がなされていて、

四凶には、渾沌(こんとん)・窮奇(きゅうき)・檮杌(とうこつ)・饕餮(とうてつ)の四者が、

それに対して、

四罪には、共工(きょうこう)・驩兜(かんとう)・三苗(さんびょう)・鯀(こん)の四者がそれぞれ分類されることになります。

そして、

こうした全部で合わせて八つの悪しき存在のそれぞれは、

渾沌は、その名の通り混沌(カオス)を意味すると同時に怠惰の悪徳をも体現し、
窮奇は、悪人を助けて善人を陥れるという不正と背信を、
檮杌は、頑迷なる無知に基づく暴力を、
饕餮は、己の目につくすべてのものを貪り尽くす貪食と貪欲さを体現しているのに対して、

共工は、怒りによって洪水を引き起こし、山々を破壊する憤怒の悪徳を体現し、
驩兜三苗は、主君に逆らって反乱を起こす不忠と反逆の悪徳を、
は、自らの無能さを認めずに、己の能力を過信して虚栄を張る傲慢さをそれぞれ体現していると考えられることになります。

つまり、一言でいうと、

中国神話において人々と社会に害悪をもたらす源となる妖怪や悪神の代表格として挙げられている四凶や四罪のうちに含まれている

渾沌・窮奇・檮杌・饕餮・共工・驩兜・三苗・鯀という八つの悪しき存在は、それぞれ、

怠惰・背信・暴力・貪欲・憤怒・不忠・傲慢という七つの悪徳を体現する存在として捉えることができると考えられることになるのです。

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中国神話における不忠や背信といった社会秩序を脅かす悪徳の重視

ちなみに、

四凶と四罪の内に含まれている悪しき者の名が、渾沌・窮奇・檮杌・饕餮・共工・驩兜・三苗・鯀という八つの名であるのに対して、

それに対応する悪徳や大罪の名は七つにとどまっている理由としては、

前述したように、四罪として挙げられている驩兜三苗の両者は、どちらも自らの主君に逆らって反乱を起こすという不忠の悪徳によって断罪されているため、両者が体現する悪徳が互いに重複していることが理由として挙げられることになるわけですが、

このことは、逆に言えば、

中国神話のうちにおいては、主君に背いて仇をなす不忠不義背信反逆といった行為が、社会と国家の安寧を脅かし、ひいては世界におけるあらゆる秩序を崩壊させることにつながる危険性を持った最も危険で重大な大罪として重視されていたということを意味しているとも考えられることになります。

つまり、そういう意味では、

こうした中国神話においては、キリスト教における七つの大罪の選別のあり方よりも、

不忠や背信といった社会や国家の秩序を脅かす悪徳のあり方がより重視される形で神話の内で戒めとして示されるべき悪徳の選別が行われていると考えられることになるのです。

・・・

以上のように、

中国神話においては、四凶四罪の内に含まれている八つの悪しき存在のうちに、社会や国家に害悪をもたらす源となる七つの悪徳の存在が示されていると考えられ、

具体的には、四凶や四罪のうちに含まれている

渾沌・窮奇・檮杌・饕餮・共工・驩兜・三苗・鯀という八つの悪しき存在は、

怠惰・背信・暴力・貪欲・憤怒・不忠・傲慢という七つの悪徳へとそれぞれ対応していると考えられることになります。

そして、

こうした中国神話における悪徳の選別のあり方からは、キリスト教における
暴食・色欲・強欲・憤怒・怠惰・傲慢・嫉妬という七つの大罪の選別のあり方よりも、

不忠や背信といった社会や国家の秩序を脅かす悪徳のあり方をより重視する傾向を読み取ることができると考えられることになるのです。

・・・

次回記事:中国神話とギリシア神話における人間と神の距離感と同質性の違いと、中国神話における神話世界と歴史的世界の並進性

前回記事:四凶と四罪の違いとは?神に近い存在と人に近い存在としての中国神話における両者の位置づけのあり方の違い

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