七種類のコロナウイルスの具体的な特徴とウイルス学における分類
前回書いたように、コロナウイルスと呼ばれるウイルスの種族は、ウイルス学の分野における分子生物学的な分類のあり方においては、
エボラウイルスやHIVウイルスなどといったウイルスとも同じ一本鎖RNA+鎖ウイルスと呼ばれるウイルスのグループへと分類されることになるのですが、
こうしたコロナウイルスと呼ばれるウイルスの種族に含まれるウイルスのなかで、人間に対して風邪や肺炎などの感染症を引き起こす原因となるウイルスの種類としては、
ヒトコロナウイルス229E、ヒトコロナウイルスNL63、
ヒトコロナウイルスOC43、ヒトコロナウイルスHKU1、
SARSコロナウイルス、MERSコロナウイルス、
そして今回新たに発見されることになった2019-nCoVと呼ばれる新型コロナウイルスという全部で七種類のコロナウイルスの種類が挙げられることになります。
七種類のコロナウイルスの具体的な特徴とウイルス学における分類
そうるすと、まず、上記の図において示したように、
こうした人間に対して風邪や肺炎などの感染症を引き起こす原因となる全部で七種類のコロナウイルスは、コロナウイルスと呼ばれるウイルスの種族のなかでも、
アルファコロナウイルスとベータコロナウイルスと呼ばれる二つのウイルスのグループのうちのいずれかへと分類されることになります。
そして、このうち、
アルファコロナウイルスに分類されるヒトコロナウイルス229EとヒトコロナウイルスNL63と、
ベータコロナウイルスに分類されるヒトコロナウイルスOC43とヒトコロナウイルスHKU1という全部で四種類のヒトコロナウイルスは、
すべて、冬場から春先にかけて流行する一般的な咳かぜなどの比較的軽度の上気道感染症を引き起こす原因となるウイルスの種類として位置づけられることになります。
そして、それに対して、
ベータコロナウイルスに分類される残りのSARSコロナウイルス、MERSコロナウイルス、そして、今回新たに発見されることになった2019-nCoVと呼ばれる新型コロナウイルスという三種類のベータコロナウイルスは、
前述した一般的な風邪の症状の原因となる四種類のヒトコロナウイルスと比べて、肺炎などの比較的重度の下気道感染症を引き起こす原因となることもあるより危険性の高いウイルスの種類として位置づけられることになり、
こうした三種類のベータコロナウイルスによって引き起こされることになる急性呼吸器疾患の致死率は、MERSの致死率は30%くらいであるのに対して、
SARSの致死率は10%程度、新型コロナウイルスによって引き起こされる急性呼吸器疾患のことを意味するCOVID-19の致死率は2%程度であるとされています。
その他のコロナウイルスの種類の具体的な特徴
ちなみに、
こうしたアルファコロナウイルスやベータコロナウイルスと呼ばれる二つのウイルスのグループには、
こうした人間に対して風邪や肺炎などの主に呼吸器系の症状を引き起こすウイルスの種類のほかに、
ネココロナウイルスやイヌコロナウイルス、ブタ流行性下痢ウイルスやコウモリコロナウイルスなどといった人間以外の様々な動物に感染するコロナウイルスの種類も分類されることになるのですが、
このうち、
ネココロナウイルスやイヌコロナウイルス、ブタ流行性下痢ウイルスといったウイルスは、どちらかというと呼吸器系の症状というよりは、
小腸の粘膜の上皮細胞を中心とする組織で増殖していくことによって、下痢や嘔吐や食欲不振などといった消化器系の症状を引き起こすことが多いウイルスの種類として位置づけられることになります。
そして、そういった意味では、
こうしたコロナウイルスと呼ばれるウイルスの種族は、人間に対しては冬場から春先にかけての一般的な咳かぜ、あるいは、SARSやMERSにおいて見られるようなより重症の肺炎の症状などに代表される呼吸器系の症状を引き起こすことが多いウイルスとして知られているものの、
もともとは、そうした鼻や喉の粘膜あるいは気管や肺などといった呼吸器系の器官だけではなく、小腸などの消化器系の器官においても増殖していくことができる潜在的な能力をもったウイルスであるとも考えられることになるのです。
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次回記事:SARSとMERSと新型コロナウイルス肺炎の致死率の比較と三つのウイルス感染症の具体的な特徴の違い
前回記事:コロナウイルスの具体的な特徴とHIVウイルスやエボラウイルスなどの他のウイルスとの分子生物学的な関係
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