オリンピックの聖火が太陽光から採火される理由とは?古代ローマのウェスタの神殿の炎の再点火における神聖性の回復
現代のオリンピックにおいては、大会の開催期間中にメインとなる競技場でともされ続けるオリンピックの聖火は、
古代のオリンピックが行われていたギリシアの古代都市オリンピアにおける女神ヘラの神殿の跡地において、太陽光から採火が行われることになっているのですが、
このように、オリンピックの象徴でもある聖火の炎が、太陽の光を利用して採火がなされることになっている具体的な理由としては、
古代ローマにおいて聖なる炎を司る女神とされていたウェスタの神殿において行われていた巫女たちの儀式にその大本の起源が求められることになると考えられることになります。
古代ローマのウェスタの神殿で燃え続ける聖なる炎と火の消失
そうすると、まず、
こうしたローマ神話において聖なる炎を司る火床の女神として位置づけられたウェスタは、ギリシア神話における竈(かまど)の女神であったヘスティアと同一視されていた女神にもあたり、
そうしたギリシア神話におけるヘスティア、ローマ神話におけるウェスタを祀る神殿の内部においては、彼女たちのことを象徴する聖なる炎が常に燃え続けるように配置されていたと考えられることになります。
そして、
こうしたウェスタの神殿に仕える巫女たちの最たる務めは、神殿の中央で燃えている神聖なる永遠の炎を絶やすことがないように守り続けることにあったと考えられるのですが、
それでも、実際には、
思いがけない天災や、あるいは、単なる巫女のわずかな不注意によって、こうしたウェスタの聖なる炎が一時的に消えてしまうこともあったとされていて、
古代ローマの資料においても、少なくても紀元後1世紀ごろの時代に、そうしたウェスタの神殿に燃える神聖な炎が消えてしまうという事件があったという実際の記録が残されているほか、
ゲルマン民族などの異民族の侵攻によって神殿が破壊されてしまうといった事態や、神殿に安置されていた聖なる炎から火が燃え移ることによって神殿自体が焼失してしまうといった事態もあったと考えられることになるのです。
太陽の光を利用した炎の再点火による神聖性の回復
それでは、このように、
ウェスタの神殿に安置されていた炎がいったん消えてしまった場合には、いったいどのような形で、新たに神殿内に安置されることになる炎の神聖性が再び取り戻されることになっていたのか?というと、
そうした場合には、燃える鏡とも呼ばれていた特別に用意された凹面鏡によって集められた太陽の光から新たに採火が行われることによって、神殿に再び聖なる炎がともされることになっていたと考えられることになります。
つまり、
ウェスタの神殿の内部で燃える聖なる炎が一時的に消えてしまった場合でも、常に天空に燃え続けている永遠の火である太陽から再び炎が分け与えられることによって、
その後もウェスタの神殿の内部で燃え続けていくことになる炎の神聖性が回復されることになっていたと考えられることになるのです。
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次回記事:オリンピックの聖火の由来とは?ギリシア神話とローマ神話における聖なる炎の起源となる三柱の神々とウェスタの巫女
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