蒟蒻ゼリーは子供にとっては危険な食べ物なの?蒟蒻ゼリー考③

今回の「蒟蒻ゼリー考③」は、
年齢層によって、一般的な食品と蒟蒻ゼリーとで誤嚥事故の引き起こしやすさに違いはあるのか? について、
具体的、客観的なデータに基づいて検証していきたいと思います。

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蒟蒻ゼリーが危険だというのは全くの濡れ衣なの?

前回までの、シリーズ「蒟蒻ゼリー考」では、

交通事故で死ぬ確率と、食べ物を喉に詰まらせて死んでしまう確率はほぼ同じ、
つまり、交通事故と食べ物の誤嚥は同じくらい危険だ、ということと、

窒息事故を起こしやすい食品は、餅、カップゼリー、飴の順で、むしろ蒟蒻ゼリーの方が喉には詰まりにくい、ということが分かりました。

以上の考察から言えることは、

蒟蒻ゼリーが窒息事故を起こしやすい危険な食べ物だ、というのは、
全くの濡れ衣であり、
業界団体による不当な圧力とマスコミのデマによって、
蒟蒻ゼリーが不当におとしめられたに過ぎない、

という、いわば、陰謀論のような話になりそうなのですが、

ここで、数値的・客観的データの見方を少し変えてみると、この問題の違った側面が見えてきます。

それは、子供の食物誤嚥による死亡事故の数、という観点からの見方です。

子供の死亡者数から蒟蒻ゼリーの危険性を見てみると?

1995年から2008年までに把握された蒟蒻ゼリーによる死亡事故の一覧として、
消費者庁所管の独立行政法人国民生活センターは、以下のデータを出しています。

こんにゃく入りゼリーによる死亡事故一覧

1995年7月    男児    1歳6ヶ月    新潟県
1995年8月    男児    6歳      大阪府
1995年12月    女性    82歳     茨城県
1996年3月    男性    87歳     鳥取県
1996年3月    男性    68歳     静岡県
1996年3月    男児    1歳10ヶ月   長野県
1996年6月    男児    2歳1ヶ月     埼玉県
1996年6月    男児    6歳       茨城県
1999年4月    女性    41歳       東京都
1999年12月    男児    2歳       京都府
2002年7月    女性    80歳       秋田県
2005年8月    女性    87歳       愛知県
2006年5月    男児    4歳       三重県
2006年6月    男性    79歳       兵庫県
2006年10月    男児    3歳         東京都
2007年3月    男児    7歳       三重県
2007年3月    男児    7歳       不明
2007年4月    男児    7歳       長野県
2007年10月    男性    68歳       不明
2008年4月    女性    75歳     東京都
2008年5月    女性    87歳     東京都
2008年7月    男児    1歳9ヶ月   兵庫県

この一覧をパッと見ただけでも、何となく小さい子供の死亡例が多い
という印象になるかと思います。

実際、このデータを各年齢層ごとにまとめ直してみると、次のようになります。

1995年~2008年に発生した蒟蒻ゼリーの誤嚥による死亡事故全22件のうち、

0歳~  9歳の死亡者数・・・・・12人
10歳~64歳の死亡者数・・・・・1人
65歳以上 の死亡者数・・・・・・9人

ということになります。

※ このデータでは0歳~7歳でデータを区切っても同じ12人となるので、そのように年齢の区分けをしてもよいのですが、次に言及する人口動態調査における年齢区分と区切り方を揃えるため、あえてここでも0歳~9歳という区分にしています。

つまり、この統計データに基づくと、
蒟蒻ゼリーの誤嚥事故による死亡者55%もが0歳~9歳の子供だった、
ということになります。

これに対して、
一般的には、食物の誤嚥による窒息死亡事故では、
嚥下反射が低下してくる高齢者になるほど死亡率が高く
低年齢層では死亡率が低くなっています。

例えば、前回あげた、人口動態調査における事故死亡者総数と食物の誤嚥による死亡者数のデータでも、

その2014年分の年齢ごとの内訳データを見てみると、

2014年の食物の誤嚥による死亡者総数4874人のうち、
65歳以上の高齢者の死亡者数が4310人と、死亡数の大部分を占めているのに対し、
0歳~9歳の死亡者数はわずか14人、となっています。

つまり、一般的な食物の誤嚥による死亡事故では、
0~9歳の子供が占める割合はたった0.3%に過ぎないということになります。

以上のことを考え合わせると、

一般的な誤嚥による死亡事故では、
子供が占める割合はたった0.3%に過ぎないのに、

それが蒟蒻ゼリーの誤嚥による死亡事故になると、
子供が占める割合が一気に55%にまで跳ね上がってしまう、ということになるのです。

※ 実際は、国民生活センターが把握できた事例が、ある程度低年齢層に偏っていた可能性もあるので、実際の年齢層の偏り方のギャップはここまで極端ではない可能性もあります。

※ そもそも、一般的には、子供の食物の誤嚥による死亡事故自体が稀であることと、
蒟蒻ゼリーを食べる頻度が他の食品と比べて相対的に少ないことを考えれば、
これだけの子供の死亡例が確認されている以上、蒟蒻ゼリーによる死亡事故で子供が占める割合が、一般的な誤嚥による事故の場合よりもかなり大きいのは確かだと考えられます。

つまり、蒟蒻ゼリーの誤嚥事故は、絶対数としてはかなり少ないのですが、
死亡事故における子供(0歳~9歳)の割合という観点から考えると、
一般的な誤嚥による死亡事故よりも、蒟蒻ゼリーの誤嚥による死亡事故の方が、
子供の占める割合が著しく高くなってしまう、ということです。

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以上の話をまとめてみると、次のようになります。

蒟蒻ゼリーによる誤嚥事故は件数としてはかなり少ないので、
中学生以上の青年、大人は、蒟蒻ゼリーをとりたてて避ける必要はない。

むしろ、嚥下反射が低下してくる高齢者の方を中心に、
などの一般的に喉に詰まりやすい食品に対して十分な注意をはらう必要がある。

しかし、幼稚園か小学校低学年くらいまでの子供に限っては、
絶対数は少ないとはいえ、死亡事故での子供が占める割合が高くなっているので、
蒟蒻ゼリーをあえて食べさせる必要はないし、
もし食べさせるとしても、十分な注意を払う必要がある

ということです。

判官びいきのような思いもあってか、
蒟蒻ゼリーのパッケージに烙印のように貼り付けられている、
小さなお子様や高齢者の方は絶対にたべないでください」という、
大きな記載の文言を見つめていると、

他にも、餅などのように、一般的にもっと喉に詰まりやすい食品があるのに、
そちらの方にはそのような目立つ注意書きはほどんどなされず、
蒟蒻ゼリーにだけ、こういった記載が半ば義務づけられているのは、
片手落ちのバッシングで、不公平ではないのか、という思いにも駆られます。

しかし同時に、
死亡事故における子供が占める割合という観点から見るとき、
この記載の、特に最初の部分、
小さなお子様や高齢者の方は絶対にたべないでください」というのは、
あながち間違いとは言えない、という思いにもなってしまいます。

いずれにせよ、
これまでの、シリーズ「蒟蒻ゼリー考」全体を通して考えてきたように、

誤嚥事故自体がどれだけ危険であるのか、
一般的に蒟蒻ゼリーが餅やパンなどと比較してどのくらい危険なのか、
そして、子供に限れば蒟蒻ゼリーには特別な危険性があるかもしれない、

といったことについて自分なりに十分な知識を得ることができれば

蒟蒻ゼリーそのほかの食品による誤嚥事故についても
過度に怖がることも、過度に侮ることもなく、
その危険性を適切に把握して、
その人その人の置かれた状況にしたがって、
適切な判断を下せることにつながるのではないでしょうか。

そもそも、蒟蒻ゼリーの誤嚥事故問題に関するこの一連の考察は、
蒟蒻ゼリーをバッシングするためでも、反対に過度に擁護するためでもなく、

蒟蒻ゼリーの問題に関する考察を通じて、誤嚥事故に対する適切な理解を深め、
日々の生活をより安全に送るための備えとして役立てる目的があります。

以上の理由から、この記事が、
蒟蒻ゼリーやその他の食品による誤嚥事故の危険性を考えることによって、
自分や周りの人の食の安全をしっかり確保したうえで、
日々の食生活を安心して楽しむための、
ほんのわずかな一助としてでも役立つことができれば幸いです。

まとめ

蒟蒻ゼリーが窒息事故を起こしやすい危険な食べ物だ、というのは、全くの濡れ衣です。

しかし、一般的な誤嚥による死亡事故では、子供が占める割合は0.3%に過ぎないのに、
蒟蒻ゼリーの誤嚥による死亡事故になると、子供が占める割合が55%にまで上がります。

幼稚園か小学校低学年くらいまでの子供に限っては、蒟蒻ゼリーをあえて食べさせる必要はないし、もし食べさせるとしても、十分な注意を払う必要があります。

蒟蒻ゼリーの問題に関する考察を通じて、誤嚥事故に対する適切な理解を深めることができれば、日々の生活をより安全に送るための備えとして役立つことでしょう。

 

シリーズ「蒟蒻ゼリー考」 INDEX
① 誤嚥による事故と交通事故ではどちらが危険なの?
② 蒟蒻ゼリーは本当に他の食品よりも窒息事故を起こしやすいの?
③ 蒟蒻ゼリーは子供にとっては危険な食べ物なの?

 

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