トロピカル方式とは何か?②春分点の位置の移動に基づく十二宮と十二星座の位置関係のずれと識別記号としての十二宮の名称
前回の記事で書いたように、日本における一般的な星占いにおいても広く用いられている西洋占星術などにおけるトロピカル方式に基づく黄道十二宮の領域の配置のあり方においては、
天球上における太陽の運行の基点となっている春分点や秋分点、夏至点や冬至点などといった黄道上における太陽の位置づけのあり方のみに基づいて十二宮の配置のあり方が定められていくことになると考えられることになるのですが、
こうしたトロピカル方式と呼ばれる黄道十二宮の領域の配置のあり方においては、実際の天球上において春分点の位置がずれていくのに従って、
十二宮と十二星座の間にも位置関係のずれが生じていってしまうことになると考えられることなります。
春分点の位置の移動に基づく十二宮と十二星座の位置関係のずれ
以前にも「現在の春分点がおひつじ座ではなくうお座に位置する理由」の記事などにおいて詳しく考察したように、
天球上における実際の春分点の位置は、歳差運動(さいさうんどう)と呼ばれる地球の自転運動の中心軸にあたる地軸の微細なブレの影響を受けるによって、
天球上における太陽の通り道にあたる黄道上を2万5800年ほどの周期で少しずつ西へと移動していくことになると考えられ、
そうした実際の天球上における春分点の位置は、
黄道十二宮における白羊宮から双魚宮までの十二の領域に対して名前が付けられることになった紀元前1000年ごろの古代バビロニアの時代から現在へと至るまでの間に、
おひつじ座の近くにあたる位置から、その西側に位置する星座にあたるうお座の近くにあたる位置へと移動していくことになっていったと考えられることになります。
つまり、そういった意味では、
春分点が位置する白羊宮の領域に太陽が位置するときには、そうした天球上における実際の太陽の位置はおひつじ座ではなくその隣のうお座に近い地点に位置していて、
その次の金牛宮の領域に太陽が位置しているときには、天球上における実際の太陽の位置はおうし座ではなくやはりその隣のおひつじ座に近い地点に位置することになるというように、
こうしたトロピカル方式と呼ばれる方式に基づく黄道十二宮の配置のあり方においては、
現在の天球上における十二宮の領域とそれに対応する十二星座の位置関係は、だいたい一つずつくらいずれた位置関係にあると考えられることになるのです。
太陽の運行に基づく天球上の十二の領域を区別するための識別記号としてのトロピカル方式における黄道十二宮の名称の位置づけ
以上のように、
こうしたトロピカル方式と呼ばれる日本における一般的な星占いでも広く用いられている西洋占星術において採用されている黄道十二宮の配置のあり方においては、
天球上における太陽の運行の基点となっている春分点や秋分点、夏至点や冬至点などといった黄道上における太陽の位置だけに基づいて十二宮の配置のあり方が定められていくことになることから、
そうした十二宮の配置の基点となる春分点の位置が地球の歳差運動の影響によって少しずつ黄道上を西へと移動していくのに従って、
春分点が基点となる十二宮の領域と、それに対応する実際の天球上における十二星座の間にも位置関係のずれが生じていってしまうことになると考えられることなります。
そして、そういった意味では、
こうしたトロピカル方式と呼ばれる黄道十二宮の配置のあり方において用いられている白羊宮や金牛宮といった十二宮の領域の名称は、一義的な意味においては、
古代バビロニアや古代ギリシアといった2000年以上前の過去の時代の天球上における星座の位置のあり方に基づいて定められた現在の天球上における星座の位置のあり方とは基本的には無関係な名称に過ぎず、
それは、言わば、
そうした太陽の運行のあり方に基づいて定められた天球上の黄道帯における十二の領域のことを互いに分かりやすく区別していくために用いられている単なる識別記号のようなものに過ぎないと解釈していくこともできると考えられることになるのです。
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次回記事:サイデリアル方式とは何か?①インド占星術における星座を構成する恒星の位置を基準とした黄道十二宮の領域の画定
前回記事:トロピカル方式とは何か?①西洋占星術における黄道上における太陽の位置のみを基準とした黄道十二宮の領域の画定
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