三段論法の格式覚え歌(Barbara, Celarent, Darii, Ferio…)におけるラテン語の19個の単語と19通りの推論形式との対応関係
前回まとめたように、前提が真であれば結論も必然的に真となる妥当な三段論法の形式には、全部で256通りの形式的に可能な三段論法の格式のうち、
以下に記した24通りの格式が該当することになります。
第一格AAA式、第一格AAI式、第一格AII式、
第一格EAE式、第一格EAO式、第一格EIO式、
第二格AEE式、第二格AEO式、第二格AOO式、
第二格EAE式、第二格EAO式、第二格EIO式、
第三格AAI式、 第三格AII式、第三格IAI式、
第三格EAO式、第三格EIO式、第三格OAO式、
第四格AAI式、第四格AEE式、第四格AEO式、
第四格IAI式、第四格EAO式、第四格EIO式
そして、上記の24通りの格式のうち、
直前に位置する格式に大小対当(全称命題が真ならば特称命題も真となる関係)を適用する直接推論によって比較的に簡単に導出できる5つの格式を除いた全部で19通りの三段論法の形式は、
中世のスコラ哲学におけるような伝統的な論理学の教程においては、正しい演繹的推論を行うためにしっかり覚えておくことが必要な推論の形式であるとみなされていて、
当時のヨーロッパでは、こうした19通りの三段論法の形式をすべて暗記するためのラテン語の覚え歌のようなものも広く流布していました。
三段論法の格式覚え歌のラテン語原文と解読法則
三段論法の格式覚え歌については、詩の構成の細部が異なるいくつかのパターンの覚え歌が伝えられていますが、
こうした覚え歌のパターンのなかでも比較的一般的なものをそのままラテン語の原文で記すと、おおよそ、以下のようなものとなります。
Barbara, Celarent, Darii, Ferioque prioris.
Cesare, Camestres, Festino, Baroco secundae.
Tertia Darapti, Disamis, Datisi, Felapton, Bocardo, Ferison habet.
Quartae insuper addit Bramantip, Camenes, Dimaris, Fesapo, Fresison.
上記の四行の詩において、一番上の行は三段論法の第一格に、二番目の行は第二格、三番目の行は第三格、そして最後の行は第四格にそれぞれ対応することになるのですが、
それぞれの行に含まれている太字の部分に該当する一つ一つの単語が、それぞれの格における妥当な三段論法の式を表していて、
個々の単語の最初から三番目までの母音字が三段論法の大前提・小前提・結論というそれぞれの段におけるA, I, E, Oという命題形式の区分に対応することになります。
例えば、この詩の一行目冒頭のBarbaraという単語の場合、
この単語に含まれる最初の母音字はa、二番目の母音字もa、二番目の母音字もaとなっているので、Barbaraは、第一格AAA式の三段論法の格式を表していると解釈されることになりますし、
また、四行目の最後のFresisonという単語の場合、
この単語に含まれる最初の母音字はe、二番目の母音字はi、二番目の母音字はoとなっているので、Fresisonは、第四格EIO式の三段論法の格式を表していると解釈されることになるのです。
格式覚え歌の19個の単語と19通りの三段論法の形式との対応関係
そして、以上のような解読の法則にしたがって、上記のラテン語の詩に含まれる太字で記した19個の単語と、19通りの妥当な三段論法の形式との対応関係を示しておくと、以下のようになります。
詩の一行目
Barbara =第一格AAA式
Celarent =第一格EAE式
Darii =第一格AII式
Ferio =第一格EIO式
詩の二行目
Cesare =第二格EAE式
Camestres =第二格AEE式
Festino =第二格EIO式
Baroco =第二格AOO式
詩の三行目
Darapti =第三格AAI式
Disamis =第三格IAI式
Datisi =第三格AII式
Felapton =第三格EAO式
Bocardo =第三格OAO式
Ferison =第三格EIO式
詩の四行目
Bramantip =第四格AAI式
Camenes =第四格AEE式
Dimaris =第四格IAI式
Fesapo =第四格EAO式
Fresison =第四格EIO式
・・・
次回記事:三段論法の格式の覚え歌(Barbara, Celarent, Darii, Ferio…)のラテン語の発音と詩全体のおおよその意味の和訳とは?
前回記事:24種類の妥当な三段論法の形式のまとめとそれぞれの格式を用いた推論の具体例
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