精霊と聖霊の違いとは?四大の力を司る超自然的な存在としての「精霊」とキリスト教における「聖霊」の位置づけ
前回の記事で書いたように、聖霊とは、キリスト教における父と子と聖霊という三位一体の神の存在のあり方のうちの一つの存在様式として位置づけられる神聖なる神の霊の存在のあり方を意味する言葉であると考えられることになるのですが、
こうした「聖霊」(せいれい)という言葉と同じ発音の似たような意味をもつより一般的な言葉としては、「精霊」(せいれい)という言葉も挙げられることになります。
それでは、こうした「精霊」と「聖霊」と呼ばれる二つの霊の存在のあり方のうちには、より具体的にはどのような特徴の違いを見いだしていくことができると考えられることになるのでしょうか?
四大の力を司る「精霊」の存在とギリシア神話における下級神としての位置づけ
まず、
「精霊」と「聖霊」という二つの言葉のうちの前者にあたる「精霊」という言葉は、
一言でいうと、
自然界にある様々な生物や事物の内に宿っているとされていて、ときおり不思議な現象などを引き起こすとされている超自然的な存在のことを意味する言葉として捉えることができると考えられ、
こうした「精霊」と呼ばれる霊の存在は、特に、地水火風といった自然界における四大の力を象徴する存在として位置づけられることになるほか、
ギリシア神話においては、アルテミスやディオニュソスといったオリュンポスの神々に付き従う下級の神々の存在のあり方もこうした精霊あるいはニンフといった言葉によって言い表されていくことになります。
そもそも、
自然界における地水火風という四大の力の存在は、
古代ギリシアの哲学者であるエンペドクレスが唱えた宇宙の内に存在するあらゆる事物は土・水・火・空気という四つの元素の組み合わせによって成り立っていると考える四元素説に基づいて定められた概念であると考えられることになるのですが、
その後、
16世紀のドイツの錬金術師であるパラケルススに代表されるような中世ヨーロッパにおける錬金術や魔術の研究、あるいは、神話や民間伝承のうちにおいて、
例えば、
土の元素には、ピグミー(Pygmy)やノーム(Gnome)と呼ばれる大地の力をつかさどる精霊が、
水の元素には、ニンフ(Nymph)やウンディーネ(Undine)と呼ばれる水の力をつかさどる精霊が対応し、
火の元素には、サラマンダー(Salamander)やウルカヌス(Vulcanus)と呼ばれる火の力をつかさどる精霊が、
空気の元素には、シルフ(Sylph)やシルウェストリス(Sylvestris)と呼ばれる風の力をつかさどる精霊が対応するというように、
それぞれの元素と四大の力を象徴する具体的な「精霊」の種族の存在が位置づけられていくようになっていったと考えられることになるのです。
キリスト教における「聖霊」の存在と唯一神としての神との関係
それに対して、
キリスト教における「聖霊」の存在の位置づけのあり方については、前回の記事で詳しく考察したように、
それは父と子と聖霊という三位一体の神の一つの存在様式のあり方として位置づけられると同時に、
聖母マリアにイエスを身ごもらせたと神と人とをつなぐ愛の現れや、人間の心や体の内に宿る神聖なる霊の存在のあり方もこうした聖霊と呼ばれる神の霊の存在のあり方として捉えられていくことになるのですが、
いずれにせよ、
こうしたキリスト教における「聖霊」の存在の位置づけのあり方においては、
「精霊」の場合のように、それが四元素説や四大の力に象徴されるような自然界における様々な事物や自然の力との関係においてではなく、
キリスト教における創造主である唯一神としての主なる神との関係においてのみ、こうした「聖霊」と呼ばれる神聖なる神の霊の存在のあり方が捉えられていくことになると考えられることになるのです。
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以上のように、
こうした「精霊」と「聖霊」という言葉の具体的な意味の違いとしては、
前者の「精霊」という言葉は、一義的には、地水火風といった自然界における四大の力を司る超自然的な存在のことを意味していて、それはギリシア神話における下級の神々のことを意味する言葉としても用いられることになるのに対して、
後者の「聖霊」という言葉は、そうした四大の力といった自然界における具体的な事物の象徴としてではなく、キリスト教における唯一神としての神の存在における神聖なる神の霊の存在のあり方を意味する言葉として用いられている
といった点に、こうした二つの霊の存在のあり方における具体的な特徴の違いを見いだしていくことができると考えられることになるのです。
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前回記事:聖霊とは何か?新約聖書において聖霊の具体的な存在のあり方を示す三つの記述
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