完璧の語源とは?②完璧の故事で藺相如が守り通した三つの宝とは何か?

前回書いたように、完璧(かんぺき)という言葉の語源は、紀元前3世紀における古代中国の戦国時代の小国であった趙の国において、

趙の恵文王(けいぶんおう)が手に入れた和氏の璧(かしのへき)と呼ばれる名玉を偽りの申し出によって奪おうとしていた秦の昭襄王(しょうじょうおう)に対して、

趙の国の使者の役目を担った藺相如(りんしょうじょ)が、巧みな話術と自らの命をも賭した毅然とした態度で秦王を圧倒することによって、

璧を力ずくで奪われることも、きずを付けられることもなく、趙の国の璧を完全に守り切った、すなわち、璧を完(まっと)うしたという故事に由来すると考えられることになります。

そして、

こうした古代中国の趙の国における故事に即して考えると、そこには、もう少し深い意味でこうした完璧という言葉の意味を解釈し直してみる余地があると考えられることになるのです。

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和氏の璧をめぐる争いによって趙の国が直面していた本当の問題

冒頭で述べたように、

趙の国の使者であった藺相如は、秦王の偽りの申し出を受け入れ、和氏の璧を持参した状態で秦王に謁見したうえで、

秦に璧を奪われてしまうこともなければ、璧を渡さないことによって大国である秦との間に戦争を引き起こすこともなく、再び趙の国へと璧を無傷の状態で持ち帰るという難題をうまく解決することになるのですが、

このように、藺相如完璧の使者を果たしていた際に、趙の国が置かれていた実際の状況について改めて整理して考えてみると、

詳しくは前回の記事で考察したように、そこには、

強国である秦の申し出を直接断って璧を差し出さなければ、秦はそれを口実に大軍を差し向けて小国である趙の国を攻め滅ぼしてしまうことになるが、

かといって、強国である秦の脅しに屈して璧を差し出しても、今度はそれをきっかけとして趙の国はさらなる譲歩を際限なく迫られることによって国力が衰退して亡国へと向かってしまうというように、

一種のジレンマのような解決困難な膠着した局面が生じていたと考えられることになります。

つまり、

このとき、趙の国が和氏の璧という名玉の所有権をめぐる争いを介して直面していた実際の問題は、

単に大国である秦に璧を渡すか渡さないかという財宝の奪い合いの問題だけではなく、

そこには、大国である秦と正面衝突することによって敗戦の危機に瀕するか、はたまた、秦の言いなりになることによって奴隷のような立場へと貶められ、虐げられていくことになるかもしれないといった

趙という国自体の命運や、ひいては、趙の国に生きる人々の生活と生命の安全にも関わる国家の存亡と威信に関わる問題に直面していた考えられることになるのです。

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完璧の故事において藺相如が守り通した三つの宝とは?

そして、

藺相如は、まさに、こうした趙の国が直面していた国家の存亡の危機に関わる重大な問題を解決するために、秦王のもとへと自らおもむき、

その場で、ただ壁を無事に守り通しただけではなく、趙の国の人々を自ら代表して、その気概の強さと、知略の巧みさをはっきりと示して見せることによって、

大国である秦に比べて趙の国は小国であるとは言っても、趙の国とそこに生きる人々は、なんでも強い者の言いなりになるような卑屈で軟弱な人間でもなければ、ただ怒りにまかせて暴発してしまうような頭の悪い向こう見ずな人間でもなく、

趙の国は、小国であっても、一本筋が通っていて、不屈の精神優れた知性を備えた人材が揃った安易に攻め落とすことができない強靱で堅固な国として一目置かれることになっていったと考えられることになります。

つまり、

藺相如が知恵をふり絞り、自らの命を賭して秦王と対峙していたのは、和氏の璧という単なる財宝を守ろうとするためだけのやり取りであったわけではなく

そこには、

和氏の璧という財宝のほかに、趙という国の国家としての威信や、その国に生きるすべての人々の生命と命運までもがかかっていたと考えられ、

そういう意味では、

こうした完璧の故事において藺相如が守り通した宝は、和氏の璧という文字通りの財宝だけではなく、

生命威信財産という三つの宝がその働きによって守られた考えられることになります。

つまり、

藺相如は、趙の国の宝である璧を完全に守り切るという自らの使命を全うすると同時に、そうすることによって、趙の国家としての威信と、趙の国に生きる人々の生命をも守り切るという

全部で三つの意味において、真の意味で完璧な使者の役目を果たしたと考えられることになるのです。

・・・

次回記事:刎頸の交わりとは何か?①知略に優れた藺相如と武勇に優れた廉頗の間に結ばれた互いの命を相手に預け合う深い信頼関係

前回記事:完璧の語源とは?①名玉がもたらした趙の国の絶体絶命のジレンマと秦王を欺いた完璧の使者

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