森の人が語る人々を導くが救いはしない青き衣の人の姿、「その者青き衣をまといて金色の野に降り立つべし」の本当の意味②

前回書いたように、漫画版の『風の谷のナウシカ』の中盤の場面においては、土鬼(ドルク)の一部族であるマニ族の僧正が語る言葉によって、

古き言い伝えにおいて予言されていた伝説上の存在である青き衣の人とされたナウシカは、人類すべてを青き清浄の地へ導く救世主として位置づけられていくことになるのですが、

その後の漫画版の『風の谷のナウシカ』における物語の展開においては、腐海の森と共に生きる森の人や、現在の世界をつくり上げた創造主にあたる旧世界の人類の影といった新たな登場人物たちの口から、

こうした青き衣の人と呼ばれる存在についての本当の姿が、新たな視点から解き明かされていくことになります。

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森の人によって解き明かされる青き衣の人の本当の姿とは?

漫画版の『風の谷のナウシカ』の物語が、中盤から終盤へと向けて徐々に進み出していく第四巻の冒頭部に近い場面においては、

ナウシカの師匠でもあった腐海の森を旅する老剣士ユパと、僧正が殺されてしまったのちにユパのもとに付き従っていたマニ族の娘であるケチャ、そして、

腐海の森に中で集落を作り、森と共に生きる生活を営んでいる森の人と呼ばれる一族の中心となる存在であるセルムという名の少年との三人の間で交わされる以下のような言葉のやり取りのなかで、

腐海の森の守り人である森の人の視点から捉えられた青き衣の人の姿が語られていくことになります。

・・・

森の人「私たちは古エフタル王国1の末裔です。大海嘯2のとき、森に入りました。青き衣の者に率いられて。」

ユパ「青き衣!?

ケチャ「青き衣の者って昔の人だったのか!?僧正さまは私たちマニ族を救うためにその人が現れると言っていたわ。」

森の人「ケチャ。青き人は救ってはくれないのだよ。ただ道を指し示すだけさ。」「私たちはいまもその人の言葉を守っている。」

(『風の谷のナウシカ』第四巻、29ページ。)

1エフタルとは、この物語のなかでは、ナウシカが生きている時代よりもさらに300年ほど昔に栄えていて、大海嘯によって滅びてしまった高度な文明を持った古代国家のことを指している。

2大海嘯(だいかいしょう)とは、旧世界が滅びてから残された人間たちの世界を繰り返し襲ってきた大いなる厄災であり、暴走する王蟲の群れ津波のように押し寄せてきて大地を飲み込み、その後、段階的に、人間が住むことのできない腐海の森が大きく拡張されてきた現象のことを指している。

・・・

つまり、この場面においては、

青き衣の人は、確かに、腐海の森がその浄化の役割を終えて、この世界に青き清浄の地がもたらされるまでに人々がたどるべき正しい道筋を指し示してはくれるものの、

そうした人々がたどるべき正しき道の先に、必ずしも現在の人々が行き着くことになる安住の地が約束されているわけではなく

青き衣の者は、そうした安住の地を与えてくれるような救済者ではないということが明かされていると考えられることになるのです。

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人々を導くが救いはしないハーメルンの笛吹きのような青き衣の人の姿

また、

以前に腐海の森が生まれた本当の理由とは?の記事で詳しく考察したように、

こうした漫画版の『風の谷のナウシカ』の終盤の場面においては、腐海の森も、そのほとりに生きる現在の人類全体も、そのすべてが旧世界の人類の壮大な計画によって造り出された人工の浄化装置であり、

数千年の時を経て世界が青き清浄の地へとよみがえった時には、汚染の広がった汚れた世界に適応してしまった現在の人類にとってはそうした新たに生まれた世界の清浄さこそがかえって毒として働くことによって、共に滅びるよう定められた存在であるという衝撃の事実が解き明かされていくことになるのですが、

そういった意味では、

こうした森の人が語る青き衣の者の姿とは、人々が進むべき道を指し示してくれはするが、その導く先には、人々がたどり着くべき安住の地などどこにも用意されていないという

まるで、ハーメルンの笛吹きのような影を帯びた存在として捉え直されているとも考えられることになるのです。

・・・

次回記事:伝説上の青き衣の人を超える存在へと至るナウシカの姿、「その者青き衣をまといて金色の野に降り立つべし」の本当の意味③

前回記事:「その者青き衣をまといて金色の野に降り立つべし」の本当の意味とは?①漫画版の『風の谷のナウシカ』における二か所の記述

関連記事:腐海の森が生まれた本当の理由とは?旧世界の人類の壮大な計画によって造られた人工の浄化装置としての腐海の森の真実の姿

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