風の谷のナウシカとギリシア神話の王女ナウシカの関係とは?①『オデュッセイア』におけるパイアキアの王女ナウシカの記述

「『風の谷のナウシカ』と「虫愛ずる姫君」の共通点とは?」の記事で書いたように、

宮崎駿作の漫画版の『風の谷のナウシカ』のあとがき部分においては、この物語の作者である宮崎駿自身の言葉として、

『風の谷のナウシカ』の主人公であるナウシカは、日本の古典文学の中に登場する「蟲愛ずる姫君」と呼ばれる少女の存在から着想を得て主人公としての具体的なイメージが形づくられていったということが記されているのですが、

そこでは、こうした『風の谷のナウシカ』の主人公であるナウシカのモチーフとなったもう一人の人物として、

ギリシア神話の中に登場するスケリア島に住むパイアキア人の王女であったナウシカという同じ名を持つ人物の存在についても言及がなされています。

それでは、こうしたギリシア神話において登場する王女ナウシカとは、その原典となるギリシア神話の物語の中では具体的にどのような人物として描かれていると考えられることになるのでしょうか?

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古代ギリシアの長編叙事詩『オデュッセイア』におけるイオニア海に

ギリシア神話において、ナウシカという名の王女が出てくるのは、紀元前8世紀頃の吟遊詩人であったとされるホメロスの作として伝わる古代ギリシアの長編叙事詩である『オデュッセイア』と呼ばれる作品のなかであって、

『オデュッセイア』Odysseia、英語ではオデッセイ(Odyssey)とは、一言でいうと、

トロイア戦争に勝利したギリシアの英雄であるオデュッセウス故郷であるイタケに残した妻子たちのもとへと帰還するまでの十年に渡る漂流と冒険の物語が描かれている神話物語ということになります。

そして、

こうした『オデュッセイア』の物語の後半部分においては、この物語の主人公であるオデュッセウスが、彼のことを強く引きとめようとする海の女神であるカリュプソのもとを離れて、筏(いかだ)に乗って航海に乗り出すことになるのですが、

その後、嵐と暴風によって筏がバラバラに大破してしまい、長い間波の間を漂っていたオデュッセウスは、

地中海東部のイオニア海に浮かぶギリシアの島であるスケリア島(現在のケルキラ島)へと瀕死に近い状態になりながら漂着することになります。

そして、

そうした『オデュッセイア』の場面においては、具体的には以下のような形で、

スケリア島に住む民族であるパイアキア人と、彼らの始祖である初代の王ナウシトオス、その子にあたるアルキヌス王、そして、その娘である王女ナウシカといった人々についての記述がなされていくことになります。

・・・

パイアキア人は、もとはキュクロプスが住む島の近くに住んでいたのですが、その蛮族の圧制から逃れるために、ナウシトオスと呼ばれる王の指揮のもと、このスケリアの島に移住してきたのです。」

「この民族はかつて神々と同族であったことから、捧げ物をすると神々が現れて彼らと饗宴を共にしたと伝えられています。また、この民族は非常に多くの富を持っていて戦争などというものもない豊かで朗らかな生活を送っていました。」

「海の民であった彼らは、航海を主な仕事としていて、鳥の飛ぶような速い船を作り、彼らが知らない港は世界中のどこにもなく、水先案内人もいりませんでした。」

「今は、ナウシトオスの子であるアルキヌス王がこの国を治めていて、アルキヌスは賢明で公正な君主であり、島の人々みなに愛されていました。」

(『ギリシア・ローマ神話』ブルフィンチ作・野上弥生子訳、317~318頁、参照。)

キュクロプス(Kyklops、英語読みではサイクロプス(Cyclopsとは、ギリシア神話において登場する一つ目の巨神のことを指す。

・・・

ちなみに、

こうした王女ナウシカが属するパイアキア人という民族に関する「航海に優れた民族」、あるいは、「鳥の飛ぶような速い船を作る」といった記述からは、

『風の谷のナウシカ』の中に登場する主人公ナウシカが乗る小型で素早い飛行装置であるメーヴェの姿などが連想されることになると考えられることになりますが、

こうした『オデュッセイア』の物語の中においては、アルキヌス王の娘であるナウシカは、

人々の上に立つ王女という高貴な身分でありながら、彼女のもとに仕える侍女たちと一緒になって洗濯や手芸などの仕事にも精を出し、

時間があれば、すぐに人々の輪の中へと入っていき、彼らと毬投げ(まりなげ)のようなボール遊びをしたり、歌を歌ったりしているような快活で親しみ深い王女であると同時に、勇気と判断力にも富んだ知的な女性として描かれていくことになるのです。

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王女ナウシカの夢の中で告げられる女神アテナの予言の言葉

そして、こうした『オデュッセイア』の物語の中で、パイアキア人の王女ナウシカは、

ある夜、眠っている間に、知恵と工芸を司る女神であるアテナから以下のような内容の夢のお告げを受けることになります。

・・・

「朝が来て目を覚ましたならば、衣服を持って泉の水がわく川辺へと行き、そこで服を洗って水浴びをするといい。すると、一人の高貴な男があなたのもとを訪れることになるでしょう。その者は血統においても能力においても優れた人物であり、もしあなたが望むならば彼をあなたの夫とすることができるでしょう。」

(『ギリシア・ローマ神話』ブルフィンチ作・野上弥生子訳、318頁、参照。)

・・・

そして、

ギリシア神話のなかの『オデュッセイア』において記されている以上のような物語の経緯を経たうえで、

ある日、平和で豊かな島国に生きていた快活で思慮深い女性であったパイアキア人王女ナウシカのもとを、

女神アテナが彼女の夢の中で告げた予言の言葉通りに、トロイア戦争で勝利をおさめてからギリシア本国へとたどり着くまでの十年にも渡る長き放浪の旅の途上にあったギリシアの英雄オデュッセウスが訪れることになるのです。

・・・

次回記事:王女ナウシカと英雄オデュッセウスの恋愛と友愛、ギリシア神話の王女ナウシカと風の谷のナウシカの関係とは?②

前回記事:風の谷のナウシカと粘菌との関係とは?②「個にして全、全にして個」という生命の本質を体現する粘菌という生命体の構造

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