刎頸の交わりとは何か?知略に優れた藺相如と武勇に優れた廉頗の間に結ばれた互いの命を相手に預け合う深い信頼関係

前々回前回の記事では、

紀元前3世紀古代中国の趙の国において、優れた知略と気概を兼ね備えた将であり政治家でもあった藺相如(りんしょうじょ)が、

強国である秦の王から趙の国の宝である和氏の璧(かしのへき)を無傷の状態で守り通し、そうすることによって、趙の国を国家として存亡の危機から救ったという逸話が語られている完璧の故事について、詳しく考察してきましたが、

こうした古代中国の名将である藺相如が登場する中国の故事としては、ほかに、刎頸の交わり(ふんけいのまじわり)と呼ばれる故事も挙げられることになります。

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刎頸という言葉の意味と完璧の故事から三年後の古代中国の趙の国の故事

刎頸(ふんけい)とは、頸(くび)を刎(は)ねるという漢字自体の意味が示しているように、首を斬ること、すなわち、斬首のことを意味する言葉ということになりますが、

刎頸の交わりとは、その言葉自体の意味が示しているように、

相手のためになら自分の首がはねられて斬り殺されることになったとしても悔いはないと誓い合うほどの生死を共にする深く親しい交わりのことを意味する言葉であると考えられることになります。

そして、

こうした刎頸の交わりという言葉や、刎頸の交わりによって結ばれた友のことを意味する刎頸の友といった言葉の由来となるエピソードは、

戦国時代の中国において、藺相如完璧という言葉の由来となる使者の役目を果たしてから三年ほど後の時代における古代中国の趙の国の故事のうちに求めることができると考えられることになります。

知略に優れた藺相如と武勇に優れた廉頗の間に結ばれた深い信頼関係

紀元前3世紀古代中国における戦国末期の時代、戦国の七雄のうちの一国として数え上げられていた趙の国は、大国である秦からの攻勢を受けることによって存亡の危機へと立たされていくことになるのですが、

当時、こうした小国である趙の国を支える屋台骨を担う人材として活躍していた人物としては、完璧の故事で取り上げた将である藺相如のほかに、廉頗(れんぱ)という将の名も挙げられることになります。

廉頗は、趙の国において藺相如より先に名を挙げ、古代中国における主要官職のことを意味する公卿(こうけい)のなかでも特に上位の地位にあたる上卿(しょうけい)の地位へとはやくから列せられていた将軍であり、

廉頗は、将軍となった後に、趙の国へと攻め込んできた秦の軍勢を退け、隣国である(せい)の国にも攻め入ってこれを破るなど、数々の武功を上げることによって、趙の総大将としての地位を確立していくことになるのですが、

このように、

当時の趙の国は、知略に優れた将である藺相如と共に、廉頗という武勇に優れた将が並び立つことによって、小国でありながら大国である秦に立ち向かうことができるだけの強さと守りの堅固さを維持することができていたと考えられ、

そうした趙の国を取り巻く緊迫した情勢のなかで、両者は、相手の内に自分にはない優れた長所を見いだし、互いに相手のことを趙の国のために欠くことができない人物として高く評価して認め合うことによって、

互いに自らの命を相手に預け合う深い信頼関係を結ぶという刎頸の交わりへと至ったと考えられることになるのです。

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以上のように、

こうした古代中国の趙の国の故事において登場する藺相如と廉頗の二人は、互いに相手がいなければ自分も本来の力を十分に発揮することができず、

二人のうちのどちらか一方が欠けてしまっても趙の国は強大な秦には対抗することができずに滅びてしまうことになるので、

二人の命運が尽きるのは同じ時であり、相手のためならば自分の命をかけることも少しも惜しいものではないという意味において、

互いに相手のためになら自分の首を刎ねられることになっても悔いはないという刎頸の交わりを結ぶことになったと考えられることになります。

しかし、その一方で、

こうした藺相如よりも趙の国では少し古株の先輩にあたり、かなり頑固なところがある武人でもあった廉頗は、

藺相如が完璧の故事における使者の務めなどによって頭角を現し、口舌の労のみ自分と同格の地位にまで上り詰めてきた当初は、そのことを必ずしも良しとはしなかったため、はじめの内は二人の仲はあまり良い関係ではなかったと考えられることになるのですが、

当初は、このような互いに敵対するようなライバル関係にありながら、そうした二人の関係が今回取り上げたように刎頸の友と呼ばれるような唯一無二の親友のような関係へと劇的に変化していったいきさつからは、

詳しくは次回改めて考察していくように、知略の人であった藺相如が示した現代へも通じる一種の処世術のような人間関係の動かし方の巧みさなども読み取ることができると考えられることになるのです。

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次回記事:藺相如が刎頸の交わりの故事で示した処世術のあり方とは?出世に対する廉頗将軍の嫉妬とそれに対する冷静で人情深い対応策

前回記事:完璧の語源とは?②完璧の故事で藺相如が守り通した三つの宝とは何か?

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