黄帝とは何か?漢民族の祖にしてすべての皇帝の伝説上の始祖となる帝王による工業技術の発展した文明国家の建設

前回書いたように、中国神話においては、三皇のうちの最後の一人である神農(しんのう)の時代において、

農耕社会を中心とする音楽文字文化医療などにも恵まれた古代における一つの理想的な文化国家の実現がもたらされていたと考えられることになります。

そして、こうした神農とその子孫たちによる治世の時代が終わると、

その次には、中国神話における伝説上の帝王である三皇五帝のなかの五帝のうちの最初の皇帝として位置づけられる黄帝(こうてい)による新たな統治の時代がその幕開けを迎えていくことになります。

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漢民族の祖にしてすべての皇帝の伝説上の始祖でもある黄帝

黄帝(こうてい)は、中国神話においては、伝説上初めて中国全土を統一し、黄河の流れる華北と、長江(揚子江)の流れる華南のすべての領域を統治する漢民族の統一国家を建設した帝王であるとされていて、

古代中国における五人の聖王である五帝のうちの黄帝に続く、顓頊(せんぎょく)・(こく)・(ぎょう)・(しゅん)といった残りの四帝の聖王たちはもちろん、

さらにその後に続く(か)、(いん)、(しゅう)といった古代中国の歴代王朝の始祖や、のちに始皇帝が現れる(しん)の国の始祖も、伝承上は、こうした黄帝の子孫として位置づけられていくことになります。

つまり、そういう意味では、

中国においては、こうした五帝のうちの最初の皇帝として位置づけられる黄帝こそが、すべての皇帝の伝説上の始祖として位置づけられる存在であり、

黄帝は、そうした歴代の皇帝たちの統治のもとにある中国のすべての人々、すなわち、漢民族の祖としても位置づけられる帝王であると考えられることになるのです。

黄帝の治世における工業技術の発展と統一的な社会秩序の形成

また、

黄帝は、はじめて洗練された形での衣服の製作や家屋の建築を行った帝王であるとされていて、

さらには、工業技術を発展させていくことによって、や(牛車や馬車、荷車などの)といった様々な構造物を考案した帝王としても位置づけられていくことになります。

つまり、そういう意味では、前回取り上げたように、

三皇の最後の一人である神農の治世においては、農業技術の発展や医療を中心とする牧歌的な農耕社会が形成されていったのに対して、

五帝の最初の一人である黄帝の治世においては、農業だけではなく、工業の面でも発展が進んでいくことによって、工業技術の進んだ古代における文明国家の形成が進められていくことになったと考えられることになります。

そして、

黄帝は、こうした衣服家屋といった様々な構造物を考案しただけではなく、貨幣(こよみ)、音律などをはじめて制定した帝王としても伝えられていて、

こうした黄帝の治世においては、中国全土が統一されていくなかで、家屋の建築や船や車の建造が進められていくことによって、大規模な建築事業交通整備なども進展しくことになり、

さらには、貨幣などの制定を通じて、国家としての統一的な社会秩序の形成なども進められていくことになったと考えられることになるのです。

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以上のように、

黄帝(こうてい)とは、中国神話における伝説上の帝王である三皇五帝のなかの五帝のうちの最初の皇帝であり、

伝説上初めて中国全土を統一したとされる帝王であることから、古代中国の歴代王朝の始祖にして、漢民族の祖としても位置づけられる帝王であると考えられることになります。

そして、

こうした黄帝の治世においては、の発明や、洗練された形での衣服の製作や家屋の建築が進んで行くとともに、貨幣音律の制定なども進められていくことによって、

工業技術が発展し、統一的な社会秩序が形成された古代における文明国家の建設がなされていくことになったと考えられることになるのです。

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次回記事:蚩尤とは何か?涿鹿の戦いにおける黄帝軍と蚩尤軍の間の中国神話の古代世界における最終戦争と歴史時代への転換点

前回記事:神農とは何か?牛頭人身の太陽神としての炎帝神農氏と農耕と医療を中心とする古代中国における理想的な文化国家の形成

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