人体の細胞におけるアポトーシスの八つの具体例、水晶体や脳の中枢神経から免疫システムの構築にまで関わる細胞死の仕組み

前回書いたように、動物と植物の細胞における遺伝的にプログラムされた細胞死としてのアポトーシスの代表例としては、

オタマジャクシからカエルへの形態変化やカエデやモミジにおける落葉現象などが挙げられることになります。

そして、

こうしたアポトーシスと呼ばれる細胞死のあり方は、動物や植物の細胞においてだけでなく、人間の生命の発生過程や、誕生した後の人体の仕組みの中にも数多く見ることができる現象であると考えられることになり、

人体の細胞においても、オタマジャクシからカエルへの形態変化において見られるような仕組みと同様に、カスパーゼと呼ばれる分解酵素を基軸とした細胞内におけるシグナル伝達経路の形成を誘因として、生体内の適切な部位においてアポトーシスと呼ばれるプログラム細胞死が引き起こされていくことになります。

スポンサーリンク

発生段階における人間の手足の指や目と脳におけるアポトーシスの働き

まず、

人体の細胞においてこうしたアポトーシスと呼ばれる細胞死のあり方がより大規模な形で広範囲に見られるケースとしては、受精卵が胎児へと成長して誕生へと至るまでの人間の発生段階における人体形成のあり方が挙げられることになります。

例えば、

胎児の手足の指は、人体が形成される初期段階においては、ちょうどカエルの手足のように、

指の間の空間がすべて皮膚の膜によって覆われて互いにつながった水かきが存在するような状態になっていると考えられることになるのですが、

誕生するまでの間において、そうした手足の指の間に存在する皮膚の膜の部分に存在する不要な細胞が、順次アポトーシスによって消失していくことによって、

一つ一つの指を器用に動かすことができる互いに分離した人間の指が完成することになると考えられることになります。

また、

人間の胎児には、当初はオタマジャクシや猿などと同様に尾っぽのような組織が存在すると考えられるのですが、

こうした人間にとっては不要な部位である尾の部分を形成している細胞も、誕生するまでの間にアポトーシスによってきれいさっぱり取り除かれてしまうことになると考えられることになるのです。

そして、こうしたアポトーシスの働きは、

手足や尾っぽといった人体の形状に関わる部位だけではなく、目や脳といった感覚器官や中枢神経系に関わる部位においても働いていて、

例えば、

人間の目において、外から入ってきた光を屈折させて網膜上に映し出すレンズとしての役割を担う器官である水晶体においても、

こうした水晶体における光の透過性が確保されているのは、人体の発生の段階において水晶体の形状をつくり上げるために生み出された細胞のうちのほとんどが誕生までの間のアポトーシスによって消失してしまうためであると考えられ、

何らかの原因によって水晶体の内におけるアポトーシスが適切に働かずに、水晶体の内部に不要な細胞が多く残ってしまうと、透明性が損なわれてしまい、白内障などの原因となってしまうケースもあると考えられることになります。

そして、さらに、

こうしたアポトーシスの仕組みは、脳内の神経組織のネットワーク形成においても働いていて、

人間の脳においては、その発生段階において、一度つくられた脳の神経細胞の半数以上がアポトーシスによって消失して間引かれてしまうことによって、

誕生する前の胎児の脳内において、より効率的な中枢神経システムの回路の初期設定が構築されていくことになると考えられることになるのです。

スポンサーリンク

人体の免疫システムや異常細胞の除去などにおけるアポトーシスの働き

そして、

誕生した後の人体の内部システムにおいても、こうしたアポトーシスと呼ばれるプログラム細胞死の仕組みは重要な役割を担っていて、

例えば、

ウイルスに感染して細胞内のシステムを乗っ取られそうになってしまっている細胞や、DNAの損傷によってガン細胞化などの重大な遺伝子異常が生じてしまった細胞のうちの大部分は、通常の場合、

こうしたアポトーシスと呼ばれる細胞死の仕組みを用いることによって、順次除去されていくことになると考えられることになります。

また、こうしたアポトーシスの仕組みは、

免疫細胞生殖細胞における細胞の選別作業などにも利用されていると考えられていて、

例えば、

人間の生殖細胞は誕生してから細胞として十分に発達するまでの間に、アポトーシスによって95%以上が間引かれてしまうと考えられるのですが、

そうしたアポトーシスの過程において、より機能性が高く、遺伝子レベルにおける異常も少ないより優秀な生殖細胞の選別が行われていくことになると考えられることになります。

また、

人体内の免疫システムについても、こうしたアポトーシスの仕組みが働いていて、

体内でつくられる免疫細胞の中には、もともとは、体外から侵入してくる病原体などの異物だけではなく、自分の人体の細胞にも免疫反応を示してしまう細胞が数多く含まれていると考えられるのですが、

こうした自分の仲間にも免疫反応を示して攻撃してしまう危険性のある免疫細胞は、血管などに放出される前に、予めアポトーシスによって淘汰されることによって、

体外から侵入してきた外敵のみを撃退する適切な免疫システムが構築されていくことになると考えられることになるのです。

・・・

以上のように、

人体の細胞において働くアポトーシスの代表的な例としては、

①胎児における手足の指の形成
②胎児における尾の部分の消失
目の水晶体における透過性の確保
脳内における効率的な中枢神経システムの形成
ウイルスに感染した細胞の除去
ガン細胞化などの重大な遺伝子異常をきたした細胞の除去
⑦より機能性に優れた生殖細胞の選別
外敵のみを撃退する適切な免疫システムの構築

といった全部で八つの具体例を挙げることができると考えられることになります。

そして、

こうした人体の細胞を含む動物や植物といったあらゆる生物の細胞においては、

個体としての生物における発生や成長や老化の過程や、異常細胞の除去や免疫システムの構築といった様々な内的なプロセスに従って、

こうしたアポトーシスと呼ばれる遺伝的にプログラムされた細胞死が整然とした秩序立った形で粛々と進行していくことになると考えられることになるのです。

・・・

次回記事:ネクロトーシスとは何か?アポトーシスとネクローシスの中間に位置する細胞死のあり方

前回記事:動物と植物の細胞におけるアポトーシスの具体的な仕組みとは?モミジとオタマジャクシにおけるプログラム細胞死のあり方

関連記事:細胞の自殺または安楽死としてのアポトーシスと他殺や事故死としてのネクローシス

生物学のカテゴリーへ

スポンサーリンク
サブコンテンツ

このページの先頭へ