女性・男性・子供の三者の間に成立する人間の生命の弁証法的発展の構造、ヘーゲル哲学における生命の弁証法的展開の構造②

前回書いたように、ヘーゲルの『精神現象学』において示されている蕾から花、そして、花から実へと進展する植物の生命の弁証法的展開のなかでも、

種族の生命を受け継ぐ次世代の新たな個体が生み出されることになる後半の花から実への発展の過程においては、

テーゼ(正)となる「雌花」に対して、アンチテーゼ(反)となる「雄花」の存在が主張され、両者の間の生物学的な対立がアウフヘーベン(止揚)されることよってジンテーゼ(合)としての「実」が生じるという形で植物の生命の弁証法的展開が進展していくことになると考えられることになります。

そして、こうしたことからは、さらに、

植物における雌花と雄花の関係を、

動物や人間における雌と雄、あるいは、女性と男性との関係へと置き換えていくことによって、

女性・男性・子供という三者の間に成立する生物学的な関係のあり方を生命における弁証法的な自己展開の過程の典型的な例として取り上げることもできると考えられることになります。

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女性・男性・子供の三者の間に成立する人間の生命の弁証法的発展の構造

まず、

植物における「雌花」と「雄花」と「実(種子)」の関係を、そのまま人間における「女性」と「男性」と「子供」の関係に当てはめて考えていくと、

前回取り上げた植物における「雌花」の概念は人間においては「女性」に、植物における「雄花」の概念は人間においては「男性」に対応づけられることになり、

「雌花」と「雄花」の対立がアウフヘーベンされることによって結実する「実」あるいは「種子」の存在は、「女性」と「男性」の間に誕生する「子供」の存在に対応づけられることになると考えられることになります。

例えば、

ある一人の「女性」の存在をテーゼとした場合、彼女とは異なる性質を持った存在である「男性」は、

ある側面においては、彼女と対立し、その存在を否定するあり方を持つ者、すなわち、「女性」に対するアンチテーゼとして位置づけられることになると考えられることになります。

しかし、

こうしたテーゼとしての「女性と、それに対するアンチテーゼとしての「男性との間の対立は、

「女性」と「男性」一組の夫婦として結ばれたうえで、両者の存在がアウフヘーベンされることによって一つの家族の形成へと進展していくことになり、

さらに、そうして形成された一つの家族の内に誕生する「子供」の存在において、

テーゼとしての「女性アンチテーゼとしての「男性の両者の存在と性質の生物学的な統合としてのジンテーゼが成立することになると考えられることになります。

つまり、

人類を構成する二つの存在である「女性」と「男性」との間に存在する対立において、

生物学的には、両者の存在の間に生まれる「子供」の存在が、
社会学的には、両者の社会的な結合として生じる「家族」の存在が、

「女性」をテーゼ「男性」をアンチテーゼとする両者の存在をアウフヘーベンすることによって形成されるジンテーゼとなる存在として位置づけられることになると考えられることになるのです。

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・・・

以上のように、生物学的な意味においては、

人類全体、あるいは、それを構成する一つ一つの家族の内に存在する女性・男性・子供という三者の存在の間においては、

 女性」をテーゼ(正)、それに対する男性」をアンチテーゼ(反)としたうえで、両者の存在の間の対立がアウフヘーベン(止揚)されることよって形成されるジンテーゼ(合)としての「子供」が誕生するという形で、

人間の生命における弁証法的発展が進んで行くことになると考えられることになります。

そして、

そうした「女性」と「男性」のアウフヘーベンによる結実として生まれた人類という種族の生命を受け継ぐ次世代の新たな個体としての子供の存在においても、

彼女または彼は、いずれは大人の「女性」か「男性」のいずれかへと成長していくことになり、

その時点において生じる新たな世代における「女性」と「男性」の間の対立と、その発展的な解消としてのアウフヘーベンによって、さらに次の世代の子孫が生み出され続けていくという形で、

人間の生命における弁証法的な自己展開の過程がどこまでも限りなく進展していくことになると考えられることになるのです。

・・・

このシリーズの次回記事:人類の永続的な発展のあり方を示す生命と国家における二重の弁証法、ヘーゲル哲学における生命の弁証法的展開の構造③

関連記事:ヘーゲル哲学の生命の弁証法的展開において男性と女性のどちらがテーゼとして位置づけられることになるのか?

前回記事:雄花と雌花あるいは雄しべと雌しべとの間に成立する生命の弁証法的展開、ヘーゲル哲学における生命の弁証法的展開の構造①

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