映画『マトリックス』における仮想現実としてのマトリックスの二重の意味とは?マトリックスとは何か?④

前々回前回記事で書いたように、

マトリックスmatrixという言葉は、生物学上の概念としては、生物の細胞の内部においてエネルギー生産を担う細胞小器官であるミトコンドリアの基質構造のことを意味するのに対して、

それは数学や物理学上の概念としては、行列と呼ばれる縦と横の数の並びによって形成される数の配列構造のことを意味する概念として捉えられることになります。

そして、

こうした生物学数学物理学といったそれぞれの学問分野におけるマトリックスの概念の定義を踏まえたうえで、

映画マトリックスにおいて、コンピュータによって創り出されている仮想現実のことを指してマトリックスという言葉が用いられている理由について考えてみると、

そこには、少なくともこうした学問上のマトリックスの定義に関わる二重の意味が含まれているいると考えられることになるのです。

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縦と横の数字の羅列によって形成される虚構の世界としてのマトリックス

冒頭でも述べた通り、

1999年公開アメリカのSF映画マトリックス』(The Matrixでは、コンピュータによって創り出されている仮想現実のことを指してマトリックスmatrixという言葉が用いられていますが、

映画『マトリックス』の世界観においては、

人間が現実だと持っているこの世界は、実際は、コンピュータによって創り上げられた仮想空間の世界であり、

人々は、自分たちが認識している仮想空間の世界の外側に存在する真実の世界を見ることも、その存在にすら気づくこともないまま、コンピュータによって創り上げられた仮想現実の中で一生を過ごしてそのまま死んでいくという偽りの世界の内に囚われたままの人生を送っていると説明されることになります。

そして、

コンピュータ・グラフィックスの分野において、通常、三次元像を構成する局所座標系の移動や回転といったコンピュータ上のデータから仮想空間への情報の変換作業には、行列としてのマトリックスが用いられることになるのですが、

それと同じように、

こうしたコンピュータによって創り上げられた仮想現実の世界は、究極的には、縦と横の数の並びによって形成される数の配列構造のことを意味する行列としてのマトリックスの構造によって形づくられていると考えられることになります。

つまり、

映画マトリックスにおけるマトリックスの第一の意味としては、

人間が現実の世界だと思い込んでいるこの世界は、実際は、コンピュータによって創り上げられた仮想現実の世界であり、

それは、数学や物理学上の概念における行列としてのマトリックスによって形づくられている縦と横の数字の羅列によって形成されている虚構の世界に過ぎないという意味が込められていると考えられることになるのです。

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機械都市への電力の供給源となる人体の構造としてのマトリックス

このように、「マトリックス」の第一の意味としては、数学上のマトリックスの概念との関連が挙げられるのに対して、

映画『マトリックス』におけるマトリックスの第二の意味としては、生物学上のマトリックスの概念との関連が挙げられると考えられることになります。

映画『マトリックス』において、コンピュータによって創り上げられたマトリックスと呼ばれる仮想空間の世界の中で生活を営む人間たちは、

実際は、その肉体は発電所と呼ばれる施設の内部のカプセルの中に閉じ込められて、生まれてから死ぬまでの一生の間、そのカプセルの中で目覚めることのない眠りにつくことになるのですが、

映画のストーリーの中では、コンピュータは、そうしたカプセルの内部に閉じ込められている人体の生命活動によって発せられる体熱を利用して発電を行い、機械都市への電力供給を管理しているということが説明されることになります。

つまり、『マトリックス』の世界観においては、

人間の精神は仮想空間の世界に囚われているのに対して、人間の肉体は機械都市への電力を供給するための発熱源として発電所のカプセルの内部に閉じ込められていて、

言わば、人間は機械のためにエネルギーを生産するだけの「電池」のような存在へと貶められていると考えられることになるのです。

冒頭でも述べたように、生物学上の概念としてのマトリックスは、

ミトコンドリア内部において好気呼吸(酸素呼吸)によるエネルギー代謝を行い、人間などの生物が生命活動を営むために必要なエネルギーを供給している基質構造のことを意味することになりますが、

コンピュータによって管理され、機械都市のためのエネルギー生産を担う存在と化した人体のあり方は、

ちょうど、こうした人体におけるエネルギー生産工場としてミトコンドリアの内部基質構造のことを意味する生物学上のマトリックスの概念と一致する構造をもった存在として捉えることができると考えられることになるのです。

・・・

以上のように、

映画『マトリックス』において、コンピュータによって創り上げられた仮想現実のことを意味する「マトリックス」の概念は、

縦と横の数字の並びによって形成される数の配列構造のことを意味する行列としての数学や物理学におけるマトリックスの概念と、

ミトコンドリア内部において好気呼吸(酸素呼吸)によるエネルギー代謝を行い、生命活動を営むためのエネルギーを供給している基質構造のことを意味する生物学上のマトリックスの概念という二つの意味から説明することができると考えられることになります。

つまり、

映画『マトリックス』の世界観においては、

多くの人々が現実の世界だと思い込んでいるこの世界は、コンピュータによって創り上げられた仮想現実に過ぎない偽りの世界であり、

世界の構造が、縦と横の数字の羅列によって形成される行列としてのマトリックスによって創り上げられているということと、

そうしたコンピュータによって創り上げられた仮想現実の内にその精神を囚われている人間の肉体は、機械都市への電力を供給するための発熱源として利用されているという意味において、

人間自身の構造が、ミトコンドリアの内部でエネルギー生産を行う基質構造としての生物学上のマトリックス構造と同じ役割を担う存在として位置づけられるという

二重の意味において、マトリックスという概念が用いられていると考えられることになるのです。

・・・

初回記事:マトリックスとは何か?①ラテン語の原義におけるmatrixの意味と由来と英語のmatrixとの発音の違い

前回記事:数学と物理学におけるマトリックスの概念、数の配列構造としての行列とマトリックス力学、マトリックスとは何か?③

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