生物学や医学における「先天性」としてのア・プリオリという概念の意味、ア・プリオリとは何か?②

前回書いたように、ア・プリオリア・ポステリオリという言葉は、もともとのラテン語における意味においては、

ア・プリオリが「より先にあるものによって」、ア・ポステリオリが「より後にあるものによって」といった意味を表す言葉であり、

こうした二つの対をなす言葉は、基本的には、時間・空間・序列における先後関係を表す言葉であったと考えられることになります。

そして、こうしたア・プリオリという言葉は、その言葉が用いられる文脈や学問分野の違いにおいて、様々なニュアンスの違いをもった意味へと解釈されることになるのですが、

それでは、生物学医学、あるいは、心理学文学哲学といったそれぞれの学問分野において、ア・プリオリという概念は、一般的にどのような意味を表す概念として解釈されると考えられることになるのでしょうか?

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生物学と医学における「先天性」としてのア・プリオリの概念

まず、

現実の世界における生物体の物理的構造や、肉体の状態が問題となる生物学医学の分野においては、

ア・プリオリという概念は、基本的に、「先天的」や「後天的」といった現実の世界における時間的な先後関係を表す概念として用いられていると考えられることになります。

例えば、医学の分野においては、

ある種の障害や生まれつきの疾患などが、患者自身の人生において、最初から患ってしまっているものであるとみなされるのに対して、

ウイルスや細菌の感染などによって引き起こされる疾患は、基本的には、人間が自分の人生を歩み出してから後になって患うことになる後天的な疾患として位置づけられることになります。

それと同様に、生物学の分野においても、

遺伝子の働きによって生まれつき定められている生物の形態や性質である遺伝形質は、その生物にとって最初から与えられている先天的形質であるとみなされるのに対して、

その生物が現実の世界の内に誕生した後に、環境からの影響や、自らの行動を通じた学習によって新たに得た形質である獲得形質は、その生物にとっての後天的形質であるとみなされることになります。

このように、

こうした生物学や医学といった学問分野において、ア・プリオリア・ポステリオリという二つの概念のそれぞれは、

前者のア・プリオリが、先天性の疾患遺伝形質などの人間や生物における先天的な性質や状態のあり方に対応する概念であるのに対して、

後者のア・ポステリオリは、後天性の疾患獲得形質などの人間や生物における後天的な性質や状態のあり方に対応する概念として捉えることができると考えられることになるのです。

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以上のように、生物学医学といった学問分野においては、一般的に、

生物における遺伝形質などの先天的な形質や、生まれつき生じてしまっている先天的な障害や疾患のあり方のことを指して、ア・プリオリという概念が用いられていると考えられることになります。

そして、それと同様に、

次回取り上げることになる心理学文学といったといった学問分野においても、ア・プリオリという概念は、基本的には、人間の心の状態についての時間的な前後関係を表す概念として用いられていると考えられることになるのですが、

こちらの場合は、ア・プリオリア・ポステリオリという二つの対をなす言葉においてそれぞれの概念がもつ意味は、

今回取り上げた生物学や医学といった学問分野における「先天的」と「後天的」といった概念とは少し意味合いが異なり、

生得的」と「経験的」という二つの概念の対という観点から解釈されていくことになると考えられることになるのです。

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次回記事:心理学における「生得性」としてのア・プリオリと「経験性」としてのア・ポステリオリの概念、ア・プリオリとは何か?③

前回記事:ア・プリオリとア・ポステリオリのラテン語における意味の違い、ア・プリオリとは何か?①

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