イデアとは何か?③プラトンの『饗宴』と『パイドン』におけるイデアの定義、すべての美しいものは美のイデアによって美しい

前回書いたように、プラトンの哲学におけるイデアの概念は、哲学史の流れにおいては、ピタゴラス学派ソクラテスの哲学におけるイデアの定義がプラトンの思想の内に受け継がれて行くことによって形作られていった概念であると考えられることになります。

そして、こうしたプラトンの哲学におけるイデアの概念が持つ具体的な意味のあり方については、プラトン自身の著作である『饗宴』や『パイドン』といった様々な対話篇のなかの記述において見いだすことができると考えられるのですが、

プラトンの『饗宴』と『パイドン』においては、すべての存在の根源にある普遍的な観念としてのイデアの定義は、以下のような形で語られていくことになります。

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プラトンの『饗宴』における永遠不変の存在としてのイデアの概念

イデア論の思想が詳しく述べられているプラトンの著作としては、『饗宴』、『国家』、『パイドン』、『パイドロス』、そして『パルメニデス』と『ティマイオス』といった様々な対話篇の名が挙げられることになります。

そして、その中でも、

例えば、プラトンの中期対話篇である『饗宴』においては、美のイデアが例として取り上げられたうえで、イデアとは以下のようなものであると語られています。

その美(すなわち美のイデア)は、それ自体がそれ自体においてそれ自身だけで一なる姿として常に存在しているのである。

それに対して、他の一切の美しいものたちは、その彼方にある美にあずかっているのだが、両者の間には次のような関係が見られる。

つまり、それらの他の数々の美しい物たちは、生成消滅の過程にあるのに対して、かの美の方は、より大に、またはより小になったりすることもなく、さらに、いかなる変化を受けることもないのです。

(プラトン『饗宴』、211B)

つまり、ここで述べられているイデアの概念とは、

それ自体が他の何ものにも拠らずにそれ自身として存在する独立した単一の存在であり、過去・現在・未来といった時間的な区分を超えて永続的に存在し続ける永遠不変の存在であると捉えることができるということです。

そして、

上記の『饗宴』の記述においても、一切の美しいものたちは、彼方にある美、すなわち、美のイデアにあずかることによって美しいものとなると書かれているように、

イデアの概念と、そうした概念が適用される現実の事物との間には、イデアが一つの普遍的な基準となり、それに基づくことによって様々な事物の具体的な性質が形成されていくという関係があると考えられることになるのですが、

こうしたイデアと事物の間の関係のあり方については、例えば、『饗宴』と同じくプラトンの中期対話篇に分類される『パイドン』において、より明確な形で語られていくことになります。

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すべての美しいものたちは、美のイデアによってのみ美しい

プラトンの中期対話篇である『パイドン』においては、『饗宴』の場合と同じように、美のイデアが例として取り上げられたうえで、

普遍的な観念としてのイデアと、そうしたイデアの性質を有する具体的な事物の間には、以下のような関係が成り立つと語られています。

美そのもの(すなわち美のイデア)以外に何か他のものが美しいとすれば、かの美そのものを分有するから美しいのであって、それ以外の他の原因によってではない。…

つまり、すべての美しいものたちは、美(のイデア)によって美しいのである。

(プラトン『パイドン』、100C~E)

つまり、

美しい山々や、美しい鳥や動物たち、あるいは美しい絵画といったすべての美しいものたちは、

美のイデアを原型として、そうしたイデアの普遍的な性質の一部を分け持っているがゆえに美しいと認識されるということであり、

現実の世界におけるあらゆる事物は、そうした普遍的な観念としてのイデアの性質を分有することによって、イデアの似姿として存在していると考えられることになるのです。

・・・

以上のように、

プラトンの中期対話篇である『饗宴』と『パイドン』においては、美のイデアについての議論が例として取り上げられていくなかで、

すべての存在の根源にある真なる実在としての普遍的な観念のあり方を意味するイデアの概念についての定義がより詳しい形で述べられていくことになります。

そして、

すべての美しいものたちは、美のイデアによってのみ美しい」という『パイドン』の記述において端的に示されているように、

 こうした対話篇の記述を通じて、イデアはそれ自体として存在する単一永遠不変なる存在であり、あらゆる事物はイデアを原型として、そうした普遍的な観念としてのイデアの性質を分有することによって存在しているという

イデアという概念についての具体的な定義が明らかにされていくことになるのです。

・・・

次回記事:

前回記事:イデアとは何か?②ピタゴラス学派とソクラテスにおけるイデアの定義

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