パルメニデスとエンペドクレスにおけるスパイロス概念の捉え方の違い

ソクラテス以前の古代ギリシア哲学である
パルメニデスエンペドクレスの哲学思想においては、

たびたびスパイロスsphairos)という言葉が登場し、
両者の哲学思想において重要な位置を占める概念となるのですが、

こうしたパルメニデスやエンペドクレスにおけるスパイロスの概念は、
両者に共通する一定の意味を含む形で用いられているのと同時に、
双方において、その概念の捉え方には違いが見られることにもなります。

スポンサーリンク

スパイロスとは何か?パルメニデスとエンペドクレスにおける記述

まず、

古代ギリシア哲学において、スパイロスsphairosという言葉自体が指し示す意味はどのようなものなのか?ということについてですが、

スパイロスという概念は、パルメニデスエンペドクレスの著作の中の記述においては、それぞれ以下のように語られています。

それ(存在そのものとしてのト・エオン)は、完結しており、
どの方向から見てもスパイロスsphairos)に似ている。…

なぜならば、それは、いかなる方向から見ても自らと等しくあり、
またひとしく縛いましめられているがゆえに。

パルメニデス・断片8)

宇宙全体は)すべての方向から見て自分自身と等しくあり、
完全で限りのないスパイロスsphairos)としてまわりの孤独を楽しむ。

エンペドクレス・断片17)

上記の引用文における「均しく縛められている」という記述は、
あらゆる方向から均等な力で縛られているといった意味になりますが、

ここでは、スパイロスがあらゆる方向から均一な規定を受けているという
スパイロスの均一な規定性を意味する表現として解釈することができます。

また、「いかなる方向から見ても自らと等しくある」、「すべての方向から見て自分自身と等しくある」といった表現は、

スパイロスがあらゆる方向から見て全く同じ形をしていて、一切偏りがないという
スパイロスの完全性自己同一性を示していると考えられることになります。

そして、

こうした意味におけるスパイロスとは、ボールや地球儀のような
ただのありふれた丸い形をした玉のことを意味するわけではなく、

すべての面で均一でバランスが完全に整っている
理想的な球体を意味する概念であると考えられることになります。

つまり、

古代ギリシア哲学におけるスパイロスsphairos)とは、
完全なる球体真球のことを指す概念ということになるということです。

スポンサーリンク

完全で均一なる存在の比喩としてのスパイロスと
宇宙創成の基点となる宇宙の一形態としてのスパイロス

そして、

こうした完全なる球体としてのスパイロスの概念は、
パルメニデスの哲学思想においては、

真理の探究の対象であるあるもの」(to eonト・エオンすなわち、
存在そのものについての探究において登場する概念ということになります。

パルメニデスにおいては、

真に実在するもの、存在そのものとしての「あるもの」(ト・エオン)は、
それが偽ではなく真であり、非存在ではなく存在そのものである以上、

それは、必然的に、

不生不滅不変不動不分不断にして、
全体が均一自己同一的完全性を有するものであることが
論証されていくことになります。

そして、

こうしたト・エオンの本性規定の論証における
不変にして不動なる完全なる存在比喩として
完全なる真球としてのスパイロスの概念が用いられていくことになるのです。

これに対して、エンペドクレスにおいては、

現実における宇宙の一つの形態として
実際に丸形状を持った完全なる球体の存在が考えられていくことになります。

エンペドクレスの宇宙論においては、

四元素と「愛」と「争い」と呼ばれる二つの力の原理に基づいて
宇宙全体が一なるスパイロスへの収束拡散を周期的に繰り返す宇宙観が描かれていくことになるのですが、

こうした宇宙の周期的な変化の流れにおいて、
新たな宇宙創成の基点となる存在としてスパイロスが捉えられていくことになるのです。

・・・

以上のように、

古代ギリシア哲学の文脈におけるスパイロスの概念は、
単なる丸い球というだけではなく、すべての面において均一でバランスが整った
完全なる球体真球のことを指す概念と考えられることになります。

そして、

パルメニデスにおいては、

真理の探究の対象である「あるもの」(to eonト・エオン存在そのもの
の探求において、

その不変にして不動なる完全なる存在という本性規定の比喩として
スパイロス概念が用いられているのに対して、

エンペドクレスにおいては、

宇宙の周期的な変動において、全宇宙がそこへと集約し、新たな宇宙創成の基点となる現実の宇宙の一形態を示す概念として完全なる球体としてのスパイロスの概念が用いられているというところに

両者のスパイロスの概念捉え方の差異があると考えられることになるのです。

・・・

この記事の関連記事①:
あるものト・エオン)」とは何か?九つの本性規定による説明

この記事の関連記事②:宇宙の終着点であり新たな宇宙創成の開始点でもあるスパイロス(真球)、エンペドクレスの宇宙観②

パルメニデス」のカテゴリーへ
エンペドクレス」のカテゴリーへ

スポンサーリンク
サブコンテンツ

このページの先頭へ