魂の輪廻転生と宇宙全体の永劫回帰の内に円環を結ぶ宇宙、エンペドクレスの宇宙観④

前回書いたように、
エンペドクレスの哲学思想においては、

宇宙全体は、一なるスパイロス真球)から始まり、「争い」がもたらす渦動運動による分離と拡散を経て、「愛」の力によって再び一なるスパイロスへと収束していくという
永遠の循環の内にあると捉えられることになるのですが、

こうしたエンペドクレスの宇宙論は、さらに、
宇宙全体の永劫回帰魂の輪廻転生の思想へもつながっていくことになります。

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宇宙における永遠の循環と魂における輪廻転生の対応関係

エンペドクレスの著作としては、宇宙形成の歴史という自然学的テーマを扱った
自然について』のほかに、それと対をなす形でまとめられた詩である
カタルモイ浄め)』が挙げられることになるのですが、

その『カタルモイ』において、エンペドクレスは、
人間を含むあらゆる生命の源となる魂の輪廻転生の歴史について語っています。

その中で、

人間の魂は、かつてはダイモーンdaimon精霊)として
神々にも等しい神性を有する完全なる存在であったとされるですが、

その魂は太古の昔に「争いの力によって互いに不和となり、
互いに傷つけ、殺し合い、偽りの言葉を語るようになったので、

その罪のために現生をさまよい、
輪廻転生によって苦しみに満ちた生を繰り返し送らなければならない
罰を与えられた存在であるとされることになります。

つまり、

エンペドクレスにおいては、

人間の魂は、殺生偽証という二つの原罪によって
輪廻転生を繰り返すという永遠の罰を与えられた存在として捉えられることになるのです。

一方、

宇宙全体における永遠の循環においても、
同じ「争いの力が宇宙全体に分離と拡散をもたらす渦動運動を与える力として登場することになりますが、

宇宙において、こうした互いを引き離す斥力としての「争いの力が強まり、
宇宙全体の渦動運動が激しさを増していくのにしたがって、

人間の魂においても、輪廻転生の荒波の強さが増していくことになり、
人間を含めたあらゆる生物が魂の転生において、苦難に満ちた厳しい生と死を繰り返し経験することになっていくと考えられることになります。

つまり、

宇宙全体において「争いの力による分離と拡散が進んでいくのに対応して、
人間の魂においても、輪廻転生の苛烈さが増していくというように、

エンペドクレスにおいては、人間の魂と宇宙全体の秩序、すなわち、
ミクロコスモス小宇宙とマクロコスモス大宇宙
互いに深く結びつき、対応し合った関係として捉えられていくことになるのです。

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一なるスパイロスへの永遠の回帰、そして円環を結ぶ宇宙

そののち、

宇宙において、引力である「の力が強まり、
宇宙が再び一なるスパイロスへと糾合していくようになると、

それに対応して、
魂における輪廻転生の荒波も徐々に静まっていくことになります。

そして、

宇宙において、万物が一なるスパイロスへと帰一するとき、
人間の魂も永遠の輪廻転生のくびきから解放され、

すべての存在が一体となった欠けることなき完全なる存在である神のごときスパイロスの内ですべての魂はその神性を回復することになるのです。

つまり、

一つのスパイロス(真球)から始まり、「争い」の力による拡散を経て、
「愛」の力によって再び一なるスパイロスへと還っていくという
宇宙の歴史一つの終焉を迎えると同時に、

人間の魂においても、
輪廻転生の歴史終止符が打たれることになるということです。

しかし、

宇宙の歴史において、万物の一なるスパイロスへの回帰は
宇宙形成の終着点であると同時に、新たな宇宙創成の開始点でもあるとされるのと同様に、

魂における一なるスパイロスへの帰一神性の回復
新たな「争い」の侵入がもたらす不和による輪廻転生への転落へと通じる
出発点でもあるとも捉えられることになります。

このように、

宇宙全体が、収束拡散の間を常に循環し続ける
一なるスパイロスへの永劫回帰において捉えられるのと同様に、

人間の魂も、一なるスパイロスにおける神性の回復と、輪廻転生への転落の間を
永遠に循環し続ける存在として捉えられることになるのです。

・・・

そして、

こうした宇宙全体の一なるスパイロスへの永劫回帰
その循環の内での万物の生成のあり方は、

エンペドクレス自身の言葉においては、
以下のように語られることになります。

それらのものは生成しつつあるのであって、永続する生を持ってはいない
しかし、それらのものが永遠に止むことなく交代し続ける限りにおいては、
それらは円環を成しつつ、常に不動なるものとして在るのである。

(エンペドクレス・断片17)

つまり、

宇宙に存在する個々の種族たちは、スパイロスへの収束と拡散という宇宙の変動の中において、常に生まれ、過ぎ去り、滅びていく儚い存在なのですが、

そうした宇宙全体の変動のリズム自体は一定であり、
周期的な変動の秩序としての宇宙全体のシステム自体は不変にして不動であるということです。

以上のように、

エンペドクレスの宇宙論においては、

宇宙全体が輪廻転生するかのように、
一なるスパイロスへの収束拡散の営みを永遠に続けていく
永劫回帰する存在として捉えられることになり、

宇宙はこうした混合と分離収束と拡散という周期的な運動を
円環を描くように、ぐるぐると永続的に繰り返していくと考えられることになるのです。

・・・

このシリーズの前回記事:エンペドクレスにおける宇宙の渦動運動とアインシュタインの振動宇宙論、エンペドクレスの宇宙観③

一連のシリーズの初回記事:エンペドクレスの哲学の概要

エンペドクレス」のカテゴリーへ

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