表意文字と表音文字に含まれる七つの文字体系の分類の総まとめ

前回は、文字体系の中でも属する文字の種類が最も多く、
その分類自体も最も細かく分かれている
音素文字の分類についてまとめましたが、

今回はさらに、今までの全12回にわたる文字シリーズの
総まとめとして、

表意文字表音文字という文字系統の最も大きな分類から
表音文字の下位分類である音素文字のそのまた下位分類にあたる
アブジャドやアブギダといった文字体系の最も細かい分類に至るまで、

世界に存在するすべての文字体系の分類を網羅する形で
その全体を大きくまとめ上げてみたいと思います。

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文字体系の階層化と文字の種類の二つの大きな系統

世界に存在するあらゆる文字が属するそれぞれの文字体系を
二つの最上位の分類と、その下の四つの分類
そしてそのうちの一つの分類についてはさらに三つの下位分類へと
階層化したうえで、

個々の文字体系の定義と相互の関係性を示し、
それぞれの分類に属する代表的な文字についても列挙する形で
すべてまとめて図示すると、以下のようになります。

表意文字と表音文字に属するあらゆる文字体系の相互関係とそれぞれの分類に属する代表的な文字

上図で示したように、

世界に存在するあらゆる文字の種類は大きく分けると

漢字や象形文字といった広義における表意文字
アルファベットに代表される表音文字
二つの大きな系統に区分することができ、

広義における表意文字ideogramイデオグラム)が
一つの文字が一つの概念を表す文字であるのに対して、

表音文字phonogramフォノグラム)は、
一つ一つの文字が意味をもたず音声のみを表す文字

と定義されることになります。

そして、

こうした広義における表意文字と表音文字という文字系統には、
それぞれの系統について二つずつ
合計で四つの下位分類にあたる文字分類が属することになります。

広義における表意文字と表音文字に属する四つの文字分類

まず、

広義における表意文字の系統に属する文字分類としては、
狭義における表意文字と表語文字の二つの文字分類が挙げられることになります。

狭義における表意文字とは、
個々の文字が一つのイメージを表す文字であり、

アラビア数字ピクトグラム絵文字)といった
特定の言語の枠組みを超えて、文字の形が直接具体的なイメージをもたらす
文字や記号が属することになります。

これに対して、

表語文字logogramロゴグラム)とは、
個々の文字が特定の言語における一つの単語や形態素(言葉において意味を成す最小単位のまとまり)を表す文字であり、

漢字や古代エジプト文明のヒエログリフ神聖文字)、
メソポタミア文明の楔形文字や、インダス文明のインダス文字
などの文字が属することになります。

表語文字では、個々の文字の形特定の言語における一つの言葉と
密接に結びついていて、

それらの文字がもともは、何らかの具体的な事物の形をかたどることによって
作られてきた文字であるとはいえ、ピクトグラム絵文字)などとは異なり、
その抽象化の度合いが大きく進んでいるので、

文字の形自体から直接何を意味しているのか
その意味内容を理解することは極めて困難となります。

例えば、

漢字や、象形文字とも呼ばれるヒエログリフですら、
中国語や日本語、古代エジプト語を習得していない人には、
その文字の形だけからその文字列が示す意味内容を理解することは
ほとんど不可能になるということです。

また、

表音文字の系統に属する文字分類としては、
音節文字と音素文字(広義におけるアルファベット)の
二つの文字分類が挙げられます。

音節文字syllabaryシラバリー)とは、
個々の文字が音節、すなわち子音と母音のセットに対応する文字であり、

平仮名片仮名、ネイティブ・アメリカンのチェロキー文字や、
古代ギリシアのミケーネ文明の線文字Bなどの文字が属することになります。

これに対して、

音素文字広義におけるアルファベット)とは、
個々の文字が音素、すなわち一つ一つのの子音または母音のそれぞれに
対応する文字であり、

この音素文字という文字分類は、

互いに微妙に異なる文字表記のシステムである三つの下位分類へと
さらに細分化していくことになります。

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三つの文字表記システムへの音素文字の細分化

音素文字広義におけるアルファベット)に属する文字体系には、
狭義におけるアルファベットとアブジャドとアブギダという
三つの文字表記システムが挙げられることになります。

まず、

狭義におけるアルファベットalphabet)とは、
子音を表す文字母音を表す文字両方を持つ文字表記システムであり、

ラテン文字ローマ字)や、ギリシア文字、ロシアのキリル文字や、
トルコ系遊牧民族の突厥文字やウイグル族のウイグル文字
などの文字が属することになります。

これに対して、

アブジャドabjad)とは、
個々の文字が子音のみを表す文字体系であり、
母音を抜いた子音文字だけで記述が行われる
文字表記システムとなりますが、

こうしたアブジャドには、アラビア文字ヘブライ文字
ギリシア文字の原型ともなったフェニキア文字や、
古代西アジアで隊商貿易を担ったアラム人のアラム文字
中央アジアの遊牧民族のソグド文字などの文字が属することになります。

そして、もう一つの文字表記システムである

アブギダabugida)とは、
子音文字と単独の母音文字とで構成され、
子音文字付加記号によって子音の後に続く母音を表すことができる
文字表記システムであり、

こうしたアブギダには、古代インドでサンスクリット語を記述した
梵字(ぼんじ、悉曇文字、シッダマートリカー文字)や、
インドのデーヴァナーガリー文字グランタ文字タミル文字
カンボジアのクメール文字や、チベット民族のチベット文字
などの文字が属することになります。

・・・

以上のように、

世界に存在するあらゆる文字体系は、まずは、

広義における表意文字表音文字という
二つの大きな系統に分けることができるのですが、

この二つの文字系統はさらに、

広義における表意文字の系統に含まれる
①狭義における表意文字②表語文字

もう一方の表音文字の系統に含まれる
③音節文字④音素文字(広義におけるアルファベット)、

さらに、その音素文字の下位分類である
⑤狭義におけるアルファベット⑥アブジャド⑦アブギダという

全部で七つの文字体系の分類へと
階層化しながら分かれていくことになります。

そして、

世界に存在するあらゆる文字は、以上のような
階層化された多様な文字体系の分類の内に位置づけられ、

これらの表意文字表音文字という大きな二系統の分類、そして、
そのもとに属する七つの文字体系と文字表記のシステムによって、
世界の文字の全体が構成されていると考えられることになるのです。

・・・

このシリーズの前回記事:図解で見るアルファベットとアブジャドとアブギダの音素文字の三分類のまとめ、音素文字の細分化⑥

このシリーズの初回記事:表意文字(イデオグラム)と表音文字(フォノグラム)の語源とは?イデアとフォニーの二つの側面

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