アルファベットの語源と広義と狭義におけるアルファベットの違いとは?音素文字の細分化①

前回前々回の二回にわたって

音節文字音素文字の違いについて考えてきましたが、

現存する文字体系における
圧倒的な多数派である音素文字は、

さらに、

狭義におけるアルファベットと、
アブギダアブジャドと呼ばれる文字体系の
三つの種類に細分化されることになります。

そこで、これから今回を含めた三回のシリーズにわたって、

こうした音素文字の細分化された分類における
それぞれの三つの文字体系の表記システムの違いについて
詳しく考えていきたいと思いますが、

その初回にあたる今回は、まず、

アルファベットの語源と、
広義と狭義におけるアルファベットの定義の違いについて
考えてみたいと思います。

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アルファベットの語源とは?

代表的なアルファベットalphabet)である
ギリシア文字は、

α(アルファ)、β(ベータ)、γ(ガンマ)、δ(デルタ)、ε(エプシロン)、ζ(ゼータ)、η(エータ)、θ(テータまたはシータ)、ι(イオタ)、κ(カッパ)、λ(ラムダ)、μ(ミュー)、ν(ニュー)、ξ(クシー)、ο(オミクロン)、π(パイ)、ρ(ロー)、σ(シグマ)、τ(タウ)、υ(ユプシロン)、φ(ファイ)、χ(キー)、ψ(プシー)、ω(オメガ)
という全24文字によって構成されますが、

その最初の二文字である
αアルファalpha)とβベータbeta)を続けて読んで、

alpha“+”beta“=”alphabeta“→”alphabet

としたのがアルファベットalphabet)という言葉の語源
ということになります。

ちなみに、

次回以降詳しく考える音素文字の残りの二つの体系である
アブジャドabjad)とアブギダabugida)についても
その言葉の由来はアルファベットの場合と同様となっていて、

アブジャド(abjad)は、この文字体系に属する代表的な文字である
アラビア文字伝統的な文字順序を表す最初の四つの文字が、

アブギダ(abugida)も、その文字体系に属する文字である
エチオピア文字(ゲエズ文字)の最初の四文字が語源となっています。

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広義におけるアルファベットと狭義におけるアルファベットの違いとは?

そして、次に、

アルファベットという概念の定義について考えてみると
それは以下のようになります。

前々回の記事で書いたように、

音素文字phonemic script)とは、
一つの文字が言語における音声の最小単位である
音素phonemeフォニム)を表す文字のことを指しますが、

広義におけるアルファベットは、
こうした音素文字の概念と一致する文字体系ということになります。

つまり、

広義におけるアルファベットalphabet)とは、

一文字一文字が一つ一つの子音や母音に対応する文字
のことを指す概念ということです。

しかし、

狭義におけるアルファベットの定義では、
もう少し定義が示す概念の範囲が限定されることになり、

それは、特定の言語体系に含まれるすべての子音と母音
その文字体系のいずれかの文字によって表される文字
のことを指す概念となります。

つまり、

狭義におけるアルファベットとは、

個々の文字が一つ一つの子音と母音を表す文字であり、
子音を表す文字と、母音を表す文字両方を持つ文字
ということです。

そして、

こうした狭義におけるアルファベットには、

ヨーロッパとアメリカ大陸の大部分で使用されている
ラテン文字ローマ字)やギリシア文字

ロシア語の表記に使われるキリル文字や、
中央アジアの遊牧民族の突厥文字ウイグル文字

などが該当することになります。

・・・

ところで、

狭義におけるアルファベットが
特定の言語に含まれるすべての子音と母音を表す文字であると
わざわざ定義されているということは、

逆に言うと、

世界には、音素文字でありながら、
子音と母音の両方を表すわけではない文字も存在する
ということを意味することにもなります。

例えば、

世界史の分野などにおいては、

世界に広く普及した最初のアルファベットは、
ギリシア文字の元ともなったフェニキア文字とされることが多いのですが、

このフェニキア文字は、
現代の言語学における分類においては、

厳密には、狭義におけるアルファベットではなく、
アブジャドと呼ばれる別の音素文字の体系に分類されることになるのです。

・・・

このシリーズの前回記事:平仮名(音節文字)とローマ字(音素文字)の効率性から見た優劣の比較

このシリーズの次回記事:世界最古のアルファベットとフェニキア文字からギリシア文字、ローマ字までの発展の歴史、音素文字の細分化②

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