ジューンブライド(6月の花嫁)の由来とは?嫉妬と復讐の女神ユーノーの二面性

6月は英語で言うと
June” (ジューン)ですが、

この”June“という言葉の語源は、もともとは、

ローマ神話に登場する
女神ユーノーJuno)にあります。

そして、

いわゆる「6月の花嫁」(June brideジューンブライド
という言葉も元々は
この女神ユーノーに由来するのですが、

ユーノーは、具体的にどのような地位と力を持った女神であり、
どのような性格の女神だったのでしょうか?

また、

なぜユーノーの月である6月
結婚する女性にとって最も縁起が良く、
祝福された結婚と、幸せな結婚生活が約束される月
とされるようになったのでしょうか?

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すべての女性の守護者としての女神ユーノー

ローマ神話において、
ユーノーJuno)は、

主神ユピテルJupiter、英語読みではジュピターの妻であり、
結婚と出産を司り、女性の結婚生活を守護する女神として
位置づけられています。

ちなみに、

ローマ神話における神々の姿は、
ギリシア神話の世界観をそのまま引き継いでいく形で
描かれているので、

ローマ神話の主神ユピテルJupiter)は、
ギリシア神話の主神ゼウスZeus)と同一視され、

ユピテルの妻ユーノーJuno)は、
ゼウスの妻ヘラHera)と同一視されるというように、

ローマ神話に出てくる神々の多くは、
ギリシア神話の内で同様の権能を司る神々と
同一視されることになります。

他にも、例えば、

ギリシア神話の愛と美の女神アフロディテAphrodite)は、
ローマ神話の中ではウェヌスVenus、英語読みではヴィーナス)となったり、

ギリシア神話の知恵の女神アテナAthena)は
ローマ神話のミネルヴァMinerva)に、

ギリシア神話の冥界の王ハデスHades)は
ローマ神話ではプルートーPluto)となったりするのですが、

いずれにせよ、

ギリシア神話ではヘラHera)、
ローマ神話ではユーノーJuno)と呼ばれる女神は、

ギリシア神話においてもローマ神話においても
主神の妻の座に位置する神であり、

自分自身も最高位に位置する女神
言わば、神々の女王ということになるのです。

そして、

6月June)は、

そのような最高位の女神である
ユーノー(またはヘラの月にあたるので、

ギリシアとローマの主神の妻である
神々の女王が司る月にめでたく結婚式を挙げることができる女性は、
女神ユーノーによって祝福され、
その大いなる加護を受けることができるだろう

ということから、

6月の花嫁」(June brideジューンブライド)は、
祝福された幸せな結婚生活を送ることができる
と考えられるようになったというわけです。

・・・

しかし、

女神ユーノーは、以上のような

主神の妻として結婚と出産を司る
高貴慈愛に満ちた神という表の顔とは別に、

嫉妬と復讐の女神という裏の顔も併せ持った
二面性のある神でもあるのです。

パリスによる三美神の審判とトロイア戦争

ユーノー(ギリシア神話ではヘラ)の
嫉妬深い性格と、執拗な復讐心については、
ギリシア・ローマ神話の随所に見ることができますが、

そのなかでも特に有名な話は、
パリスによる三美神の審判とそれを発端としたトロイア戦争のいきさつ
ということになるでしょう。

ギリシア神話の中の一幕で、

三美神として名高い
ヘラアテナアフロディテ(先述の通り、ローマ神話においてはそれぞれ
ユーノーミネルヴァヴィーナス)は、

三人の中で誰が最も美しいのか?
ということで言い争いとなり、

その審判を、当代一の美男子と言われた
トロイアの王プリアモスの息子パリスにさせよう
という話になります。

三人の女神は、
トロイアの王子パリスに自分が最も美しいことを認めさせようと、

それぞれ、自らの権能を用いて、

ヘラユーノー)は「世界を統べる王の権力」を、
アテナミネルヴァ)は「あらゆる戦いへの勝利」を、そして、
アフロディテヴィーナス)は「この世で最も美しい女性との生活」を与える

ということを約束するのですが、

王子パリスは、結局このなかで、
アフロディテヴィーナス)を最も美しい女神として選ぶことにします。

そして、その対価として

女神アフロディテによって導かれて出会った
この世で最も美しい女性というのが

すでにギリシアスパルタ王メネラオスの妻となっていた
ヘレネという女性だったので、

結果として、トロイアの王子パリス
ギリシアの王の妻ヘレネを略奪するという
国家間の花嫁略奪事件に発展してしまい、

これがきっかけとなって、
トロイア軍ギリシア軍との間の十年にもわたる全面戦争である
トロイア戦争が勃発してしまうことになるのです。

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嫉妬と復讐の女神ユーノーの執拗な追跡

そうしたなか、

最も美しい女神に選んでもらえなかった
女神ユーノーヘラ)は、

自分でパリスを美の審判者として選んでおきながら、
その判定が自らの意に沿わなかったことから、

パリスが人間の子の分際で、
神々の女王である自分に恥をかかせたことに怒り狂い、

パリスの国であるトロイアに対して、
強い復讐心を抱くようになります。

そして、

ユーノーによる度重なるトロイアへの嫌がらせ
戦争におけるギリシア側への肩入れの甲斐もあり、

トロイア戦争は徐々にギリシア軍側が優勢となり、
最終的に、ギリシアの将オデュッセウスによる
トロイの木馬の奸計により、

トロイアは滅亡してしまうことになるのですが、

復讐の対象であったはずのトロイアが滅び去っても、
ユーノーの心の内で煮えたぎる復讐への思い
いまだ鎮まることがなく、

今度は、その復讐の矛先は、

トロイアの英雄であり、
先のパリスの審判で天界一の美女の座を勝ち取った
アフロディテの息子ともされる
アエネアスへと向けられることになります。

ユーノーは、
祖国を失って逃げのびるアエネアスの船隊を暴風で襲って
その大半を沈没させてしまったり、

やっとたどり着いたイタリアの地でも
周辺の部族をそそのかしてアエネアスに敵対させて
新たな戦争の火種をつくったりと、

トロイアの生き残りであるアエネアスに
執拗につきまとい、

アエネアスが行く先々で、彼を困難に遭わせ、
多くの苦しみを与えようと画策し続けます。

そして、

こうした女神ユーノー

アフロディテへの嫉妬
トロイアへの復讐心は、

結局、両者の落とし子である
アエネアスが死に至るまで
ひとときも尽きることがなく続いていくことになるのです。

・・・

以上のように、

6月の花嫁」(ジューンブライド)という
言葉の由来ともなっている女神ユーノーは、

ローマ神話の主神ユピテルの妻であり、
神々の女王の座に位置する

最も高貴で、権威ある女神であり、
結婚と出産を祝福し、すべての女性を守護する
慈愛に満ちた神であると同時に、

一度でも自分の権威がないがしろにされ、
女神としてのプライドが傷つけられたと感じれば、
そのことを深く根に持って復讐心を抱き、

その恨みを晴らすためには、直接的な咎がない人々にまで
執拗につきまとって災厄をもたらし続ける
嫉妬深い復讐の女神でもあるという

表と裏の二面性を持った女神である
と考えられるのです。

・・・

関連記事:『オデュッセイア』から『アエネイス』へ続くギリシアとローマの物語、古代ローマ建国史①

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