イオニア学派とイタリア学派の地理的関係と学説上の分類

古代ギリシアにおける
ソクラテス以前の哲学の流れは、

大きく分けて、

イオニア学派イタリア学派という
二つの思想系統に分類することができます。

この二つの学派は、
具体的に、どのような地理的関係にあり、
どのような学説上の分類に位置づけられるのでしょうか?

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イオニア学派とイタリア学派の地理的関係

イオニア学派というのは、
紀元前6世紀から紀元前5世紀にかけて、

ミレトスなどの
イオニア地方小アジア(現在のトルコ)の南西部、エーゲ海沿岸の地域)
の都市を中心に活動が営まれた古代ギリシア哲学の一派です。

一方、

イタリア学派とは、

イオニア学派が形成されてから半世紀ほど経った後の
紀元前6世紀後半から紀元前4世紀前半にかけて、

クロトンエレアなどの
イタリア半島の都市を中心に活動が営まれた
古代ギリシア哲学の一派のことを指します。

イオニア学派とイタリア学派の地理的関係を示す地図

イオニア学派に属する代表的な哲学者には、

タレスアナクシマンドロスアナクシメネス、そして、
ヘラクレイトスアナクサゴラスエンペドクレスなどがいますが、

はじめの3人の哲学者、タレス、アナクシマンドロス、アナクシメネスは、
共にミレトスの出身であり、

ヘラクレイトスはエペソスの出身、
アナクサゴラスはクラゾメナイの出身であるなど、

上記の地図と照らし合わせればわかる通り、、

イオニア学派に属する哲学者たちの多くが
イオニア地方の出身となっています。

また、

このなかで、エンペドクレスだけは、
イタリアのシチリア島のアクラガス出身なので、

イオニア地方の出身者ではないわけですが、

彼は、万物の始原アルケー)は、「万物の四根」(tessara panton rhizomataテッサラ・パントーン・リゾーマタ)と呼ばれる

火、空気、水、土の四元素であると考えたことなどで有名な
自然哲学の探究を行った哲学者なので、

次章で述べる学説上の分類という観点から、

通常、エンペドクレスは、
イタリア学派ではなく、イオニア学派に分類されることになります。

そして、

イタリア学派に属する代表的な哲学者には、

ピタゴラスや、
パルメニデスエレアのゼノンメリッソス
などが挙げられますが、

このなかで、パルメニデスエレアのゼノンは、
イタリア半島南部の都市エレアの出身なので、
イタリア半島の出自ということになります。

それに対して、

ピタゴラスは、小アジア(現在のトルコ)沿岸のサモス島出身なので、
イタリア半島の出自ではないのですが、

イタリア半島南端のクロトンに移住してから
哲学者としての主な活動を開始したので、

哲学活動の拠点自体はイタリア半島にあったということになります。

また、メリッソスも、出身自体はサモス島で、
イタリア半島の出自ではないのですが、

彼は、パルメニデスの弟子であり、
その哲学体系の整備と発展に尽力した哲学者なので、

師であるパルメニデスと同じ
イタリア学派に属する哲学者として分類されることになります。

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イオニア学派とイタリア学派の学説上の分類

そして、

古代ギリシア哲学史における
大枠としての学説分類においては、

イオニア学派に属する哲学者たちは、

自然の総体を成り立たせている
万物の始原archeアルケー元となるもの根源的原理
を解き明かそうとする

自然哲学の探究を行っていた哲学者たちであると
捉えることができます。

一方、

イタリア学派に属する哲学者たちは、

自然そのものよりも、
知性論理自体の探究をより重視する

論理哲学数理哲学などとも呼ばれる探究を行っていた
哲学者たちであると捉えることができます。

つまり、

イオニア学派の哲学者たちが、
現実の世界における自然的事物の総体
探究の対象としていたのに対して、

イタリア学派の哲学者たちは、
そうした現実の世界における自然的事物の背後にあり、

すべての存在の基盤となっている
数などの論理形式や、存在そのものの概念へと
探究の対象を向け変えていくことによって、

目に見える自然の事物の範疇を超えた
論理概念観念の世界へと

哲学探究の範囲を新たな方向へと広げていった
ということです。

・・・

以上のように、

ソクラテス以前の哲学は、
全体的な流れとしては、

タレスにはじまり、アナクシマンドロスやアナクシメネス、
そして、ヘラクレイトスエンペドクレスへとつながっていく
イオニア学派自然哲学の思考に対して、

ピタゴラスから、パルメニデス
そして、その弟子のエレアのゼノンメリッソスへとつながっていく
イタリア学派論理哲学の思考が対置されることによって、

それぞれの哲学思想が進展していったと考えられるのです。

・・・

関連記事①:「ミレトス学派とイオニア学派の違い、地理的分類と学説上の分類
関連記事②:「イタリア学派とエレア学派の関係、ピタゴラスの西遷とパルメニデス
関連記事③:「ソクラテス以前の哲学の四つの学派の学説分類と地理的関係のまとめ

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