ミクロコスモス(小宇宙)とマクロコスモス(大宇宙)とは何か?その意味と由来とは?

哲学や社会学の文脈では、

人間のことを宇宙の構造になぞらえて
ミクロコスモス((独)Mikrokosmos、(英)microcosm小宇宙

という概念で表現することがあります。

そして、その場合、

通常の意味での宇宙、すなわち、宇宙全体のことは、
マクロコスモス((独)Makrokosmos、(英)macrocosm大宇宙

と呼ばれることになりますが、

このミクロコスモス小宇宙)とマクロコスモス大宇宙)という
二つの概念は、

それぞれ、より具体的にはどのような意味であり、
どのような哲学思想にその由来を持つ概念なのでしょうか?

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人間と宇宙という二つのコスモス(秩序)

そもそも、

宇宙のことを意味する単語は、
英語では”cosmos“、ドイツ語では”Kosmos“となりますが、

これらの単語の語源となっている古代ギリシア語
kosmos“(コスモス)”という単語は、もともとは、
秩序調和といった状態を示す言葉で、

同じく古代ギリシア語に由来する
chaos“(カオス混沌
という概念と対をなす言葉ということになります。

そして、

宇宙全体が、
無秩序でバラバラな存在の寄せ集めではなく、
何らかの秩序を持った統一体として捉えられるとき、

そうした秩序ある宇宙と同様に、

肉体や精神において、
一定の秩序を持った統一体として存在している人間自身も、

一つの小さなコスモスkosmos秩序)、すなわち、

ミクロコスモスMikrokosmos小宇宙

として捉えられることになるのです。

つまり、

人間宇宙という
二つのコスモス秩序)を類比的に捉えるとき、

世界全体、宇宙全体を包括する大きな秩序の方が、
マクロコスモス(大宇宙)として捉えられ、

それに対して、

個々の人間という小さな秩序
ミクロコスモス(小宇宙)として捉えられるということです。

そして、これは、東洋思想の

梵我一如宇宙全体を司る原理であるブラフマンと、人間の自我を司る原理であるアートマンが根源的に同一であるとする思想インドのウパニシャッド哲学の根本思想)

とも少し似通った考え方ということになります。

マクロコスモス(大宇宙)とミクロコスモス(小宇宙)という
二つのコスモス秩序)は、

マクロ巨視的)とミクロ微視的)という
二つの異なる視点から捉えられた

根源的には同一の一貫した秩序構造として
捉えることができるのです。

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ピタゴラスの数学的調和からデモクリトスの原子論へ

それでは、以上のような

根源的には同一の秩序構造が二つの異なる視点から捉えられたものである
マクロコスモス(大宇宙)とミクロコスモス(小宇宙)という二つの概念は、

哲学史において、それぞれどのような哲学思想の中から生まれてきた概念なのでしょうか?

人間宇宙という二つの秩序体の間の循環や相互関係に基づいて
世界を捉える考え方は、古くは、

最初の哲学者たちの内の一人である
ミレトス学派のアナクシメネスにおける

空気と気息の循環による生命論的宇宙観
などにも見いだすことができますが、

コスモスkosmos秩序体)という概念を
宇宙全体を指す言葉としてはじめて使ったのは、

紀元前6世紀後半の古代ギリシアの哲学者である
ピタゴラスであるとされています。

ピタゴラスは、

天体の運行などに見られるように、宇宙全体が、
数学的な秩序と調和に基づいて成り立っていると考え、

そのような秩序と調和に満ちた宇宙構造を
コスモスkosmos)という概念において捉えようとしたのです。

そして、

人間を指す言葉として

ミクロコスモスMikrokosmos小宇宙
という表現をはじめて用いたのは、

紀元前5世紀後半から4世紀前半の古代ギリシアの哲学者である
デモクリトスであると考えられます。

デモクリトスは、その主要な哲学思想である
原子論において、

人間の魂をも含めたすべての存在が原子から構成されるという
唯物論的世界観を展開することになりますが、

その原子論において、デモクリトスは、

宇宙全体の秩序が、
宇宙を構成する原子の一定の法則に基づく集合と離散によって成り立っているのと
全く同様に、

人間における秩序も、
その身体と魂を構成する原子の法則的な集合と離散によって成り立っている
と考えます。

そして、そのような意味において、

人間の身体と精神の秩序構造も、
宇宙全体の秩序構造も、根源的には同一の構造であり、

人間の構造を、宇宙全体の構造との類比である
ミクロコスモスMikrokosmos小宇宙)という概念において
捉えることができると考えたのです。

・・・

以上のように、

ピタゴラスにおいて、宇宙全体
一つの数学的な調和と秩序に基づいて成り立っているという
コスモス、ないし、マクロコスモスという概念が提示され、

それが、さらに、

デモクリトスにおいて、人間自身
ミクロコスモスという一つのコスモス(秩序体)
であることが明確に提示されたことによって、

マクロコスモス大宇宙)とミクロコスモス小宇宙)という
根源的に同一の構造を持った、二つの秩序のあり方を示す概念が
成立することになったのです。

・・・

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