アナクシマンドロスの宇宙観と生命体のアナロジー

前回考えたように、
アナクシマンドロスの哲学に基づくと、

万物の始原である
ト・アペイロン(無限定のものは、

不死にして、不滅である、
宇宙に内在する生ける神であり、

それ自体が、
一つの生ける宇宙であると捉えることができます。

そして、

こうしたト・アぺイロンに基づく宇宙観は、

以下のような、

生命体とのアナロジーanalogy類比、比べ合わせること)
として捉えることができるでしょう。

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宇宙の生成から収束までの一呼吸

アナクシマンドロスは、
宇宙の生成も、
人間の日常的な営みも、

そのすべてをひっくるめた
根源的原理であるト・アペイロンを、

生命力の根源でもある
生ける神であり、生ける宇宙としても捉えていたと考えられますが、

このアナクシマンドロスの思考
推し進めていくと、

宇宙全体一つの生命体となって、
呼吸をするかのように、

ト・アペイロンから
様々な具体的事物が生成し、

多様性をもった世界へと成長して
膨れ上がり

いずれは、そのすべてが、

元の一つのものト・アペイロンへ
収束していく

といったイメージの宇宙観へとつながっていきます。

そして、

こうした思考は、さらに、

アナクシマンドロスの弟子であるアナクシメネス

空気と気息の循環による生命論的宇宙観

へとつながっていったと考えられます。

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生物の恒常性とタ・エナンティア

また、

アナクシマンドロスの哲学に基づく宇宙観
生命体とのアナロジー(類比)について、さらに言及すると、

アナクシマンドロスの哲学において、
現実の世界を成り立たせている原理である、

タ・エナンティア(相反するもの)は、

相反する属性のうち、片方が強くなり過ぎて
全体のバランスが崩れると、

それをきっかけとして、

反対の属性をもつものの勢力が
交代するように強まっていき、

それによって、再び、均衡が保たれる、
という仕組みで成り立っていますが、

これは、

例えば、

食事を食べて血糖値が上がると、

それをきっかけとして、

血糖を抑制する働きをもった
インスリンが多く分泌されて血糖値が下がり

再び、体内における均衡が保たれるという、

ホルモンの負のフィードバック機能とも言われる
血糖調節メカニズムのような、

生物の体内における、

恒常性生物の生理状態などの内部環境が一定の状態を保ち続けようとする傾向)

の仕組みとまったく同じ原理で成り立っています。

つまり、

現実の世界の
秩序を支えている根本原理である、

タ・エナンティア相反するものの循環と動的な均衡

とは、

生物の恒常性のシステムそのものの姿でもあるということです。

・・・

以上のように、

アナクシマンドロスの哲学に基づくと、

一つの生命体としての宇宙が
誕生して成長し、終焉を迎えるまでの宇宙の歴史が、

ト・アペイロン無限定のもの)という
生ける神一呼吸として描かれる

壮大な生命論のイメージによって捉えられ、

さらに、

現実の世界の根本原理である、
タ・エナンティア相反するものの循環と動的な均衡
というシステムも、

生命体の体内における
恒常性のシステムと同一の原理であるという、

生命体とのアナロジー類比

によって捉えることができると考えられます。

・・・

アナクシマンドロスの哲学の概要

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